正直
身体は正直だ。
どれだけ頭を捻り、知恵を絞り出しても、身体にだけは誤魔化しや嘘が通用しない。
例えば、丼鉢に溢れんばかりの魚卵が乗った海鮮丼とビールをグビっと食せば、いくら薬を飲もうが完璧な3K活動をしようが、尿酸値が急上昇し痛風を発症することだろう。
一度、あの常に鈍器でどつかれ続けているかのような鈍痛を経験すれば、海鮮丼やビールを見ると「うまい!」の向こう側に潜む「痛い!」が頭をよぎってしまう。
他にも、どれだけ装備をしていても春になれば花粉症を発症するし、酒の席で調子に乗れば必ず次の日は頭が割れそうな二日酔いに見舞われる。
非情にも、身体はこちらの感情や思考に相反して行い通りの反応を示すものだ。
先日、知人とちょっと良さめの中華料理を食べに行った。
上品な味わいの料理に舌鼓を打ちながら、本当は大皿ごと抱えて炒飯を一気にかき込みたいところをグッと我慢して、シェアしながら食事を楽しんだ。
その中には、中華料理の王道である“麻婆豆腐“があった。
この時から既に嫌な予感はしていた。
自他ともに認めるお腹ピーピー野郎Aチームの私は、辛めの料理を食べると必ずと言ってほどお腹を下すのだ。
しかし、マグマのような食欲に抗うことはできず、問答無用に麻婆豆腐をかき込んだ。
ピリッと辛味が効きながらも、ほんのり甘味を放つ挽肉と、それらを一身に受け入れる豆腐のセッションに感動を覚えながらあっさり完食。
ところが、この時は凪のようにお腹の調子が乱れることはなかった。
「なんや!全然何ともないやん!」と小躍りしながら、辛味直後の腹痛を克服したのかとさえ息巻いていた。
しかし、やはり身体は正直だ。
私を天から地へと引きずり下ろそうと示し合わせたかのように、程なくして奴は訪れた。
中華料理店からオシャレなカフェへ知人をエスコートしている途中、急激な腹痛と便意が稲妻の如く私の腹に襲いかかった。
それからと言うものの、「ちょっと待っといて!」と振り切るように知人の元を離れ、頭の地図の中にある最短距離のトイレへ駆け込んだことは言うまでもない。
こんな惨劇な時に限って、ズボンのチャックが噛んでなかなかズボンを脱げないのも織り込み積みだ。
大丈夫だと思っていても身体は正直だ。
都合よくコントロールすることはできない。
体調様の顔色を伺いながら、慎重に慎重に行動しなければならない。
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