地下鉄サリン事件

単独犯によるテロ事件を防ぐために -孤立した人々に必要な社会支援とは-

社会から孤立した人々とは、できれば関わり合いを持ちたくない――。普通に暮らす人々にとって、これはごく自然な当たり前の感情だと思います。むしろ、無条件で積極的に関わりたいと思う人の方が少数派ではないでしょうか。

「社会から孤立した人々」と「単独犯によるテロ事件」。何がどう関連し、なぜ社会支援が必要なのか――。このnoteを読めば、その答えが分かります。


京都アニメーションへの放火事件、死者33名

昨日午前、数々のアニメ作品を生み出してきた京都アニメーション(本社:京都府)のスタジオが放火され、33名の死者を出しました。単独犯による死者数としては、個室ビデオ店への放火事件(2008年・大阪府)による死者数16名を超え、戦後最悪[※1]の放火事件の名を塗り替えました。

犯人像は今のところ明らかになっていませんが、単独犯だったことや京アニへ複数回に渡って脅迫をしていたことが既に報道されています。そのため私は、何らかの理由で社会から孤立した男が、自身の不満を抑えきれなくなって犯行に及んだ結果が京アニへの放火だったのではないかと想像しています。

過去の単独犯による代表的なテロ事件との類似性

・登戸児童連続殺傷事件 (2019年・神奈川県)…死者2名、負傷者18名
・相模原障害者施設殺傷事件 (2016年・神奈川県)…死者19名、負傷者26名
・秋葉原通り魔事件 (2008年・東京都)…死者7名、負傷者10名
・附属池田小事件 (2001年・大阪府)…死者8名、負傷者15名
この4件に留まらず、このようなテロに単独で及んだ犯人の多くは、何らかの理由で社会から孤立していたケースが多いです。

犯行動機の意外な共通点

では、なぜこのようなテロ事件は社会から孤立した人々によって引き起こされやすいのでしょうか。あくまで推測の域を出ませんが、その理由のひとつには「自らを孤立に追いやった社会への復讐」があると思います。社会への復讐が目的なため、「社会に属している人なら誰でも構わない」という考えているのではないでしょうか。

彼らとて、自分から望んで社会的に孤立したわけではない人がほとんどでしょう。
・就職氷河期に新卒で就職できず、そのまま引きこもりへ
・学生時代にイジメを受け、不登校から引きこもりへ
・リストラに遭い再就職先もなく、配偶者には離婚された
など、必ずしも本人にその責任を問うことが難しい理不尽な理由で社会からドロップアウトしてしまった人も、決して無視できる割合ではないと思います。

こうした人々は特に、ほぼ例外なく社会から孤立している自分に不満を抱いています。そして、その矛先は時に社会へ向かいます。部屋の外を見れば、自分と同世代と思しき人が、かたや家庭を持って幸せそうに暮らしている。かたや自分は社会から全く相手にされていない。その時に感じるであろうやるせなさは、容易に察して余りあるほどです。

そんな彼らが「もう自分の人生なんてどうなってもいいや」と思ってしまったら――。惨めな自分を生んだ社会に復讐しようと考えるのは、決して無理のある話ではありません。

犯行抑止の難しさ

では、どうすれば悲劇は防げるのでしょうか。犯行を徹底的に非難し、犯人を極刑に処すれば将来にわたっても事件を防ぐことができるのでしょうか。

私は、このような現状のやり方では将来の悲劇を防げないと考えています。
「無差別殺人をしてはいけないこと」くらい、犯人とて重々承知しているはずだからです。それでもなお無差別殺人に手を染めてしまうのは、「自分は2度と社会に復帰できない」という絶望感が背景にあると思います。

単独犯の場合、犯人によって予告が行われない限り、第三者が犯行を事前に予見することは100%不可能です。あらゆる種類の犯罪パターンに対応すべく完璧な防御態勢を常に構築し続けるのは非現実的[※2]なため、犯罪抑止には限界があります。一方、起きてしまった犯行の被害を最小限に食い止めることは、犯罪抑止と比較すれば簡単ではありますが、それではある程度の被害が生じることは避けられません

凶行を防ぐ解決策

究極的な解決策は、語弊があることを承知で言えば「テロに及ぶ可能性のある人々(=社会的に孤立した人々)を減らす」しかありません。具体的には、「社会的に孤立した人々を、社会に復帰させる」ことが必要です。
引きこもりなどが社会に復帰できれば、それだけ社会に復讐する必要のある人は減っていくでしょう。

しかし、現状では社会的に孤立した人の社会復帰には極めて高いハードルがあります。過去、自らを社会から孤立させた外的要因を上手くあしらうことのできなかった人たちにとって、そのハードルはちょっと頑張って乗り越えられるほどの高さではないでしょう。得てして、ひとたび引きこもると2度と自立できないようなケースが頻発するのです。

100万人[※3]を超える引きこもりが存在する日本。行政やNPOは社会的な支援に乗り出していますが、未だ十分とは言える状況ではありません。現状よりももっと積極的に、引きこもりの社会復帰を支援していく必要があります。
私たちにとっても、本音ではあまり関わりたくはない、社会から孤立してしまった人々。しかし、相次ぐ無差別殺傷事件の連鎖を断ち切るためには、私たちにも社会復帰を試みる人を温かく受け入れるなど、意識改革が必要かもしれません



ディスクレーマー:
このnoteは、悲惨な事件を少しでも減らすためにはどんな対策が必要か整理することを目的としています。犯人側にいかなる心情や境遇があろうとも、無関係の人々に危害を加えたことは決して正当化できず、数々のテロ事件の犯人を擁護する意図は全くありません。また、引きこもりなどの社会から孤立した人々が皆、単独で事件を起こすと決めつけているわけでもありません。

注釈:
[※1] 容疑者不詳の火災事件としては、44名が亡くなった新宿歌舞伎町の雑居ビル火災(2001年・東京都)などもあります
[※2] 通り魔に備えることを目的に、防弾チョッキを常に着用しつつ護身用の武器も大量に身に着けるようなことは、通常の社会生活を送りながらでは実現できません
[※3] 政府によれば、若年層の引きこもりが54万人、中年層が61万人とされています(2019年3月時点)

最後までご覧いただきありがとうございます。 みなさまからのサポートは、今後のコンテンツ内容の充実に役立てさせていただきます。