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#114_上場子会社における少数株主保護について

去年関与した案件に、上場子会社の完全子会社化というものがあります。これは、上場会社に親会社(ある会社の過半数の株式を保有している会社)がある場合において、その親会社が、他の少数株主すべてから株式の譲渡を受け、完全に子会社化してしまう(その上場子会社については、当然上場廃止とする)というものです。

ざっくり図示すると以下のとおりです。

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さて、なぜこのようなことをするかというと、背景には、「上場子会社における親会社と他の少数株主との間には構造的に利益相反の関係があるので、いっそ完全に子会社化して解消すべきではないか」という問題意識があります。

要は、「事実上、親会社がその会社をコントロールするところ、どうせ親会社は、自分たちのグループのことしか考えないでしょう? だったら、グループの得になるなら、その会社の不利益になること(≒その会社の株価を下げること)も、やりかねないですよね?」という疑いが、常に他の少数株主にはあるということです。

だったらいっそ、ということで、親会社がTOB(公開買付け)をして、他の株式を買い集め、それでも残ったら現金対価のスクイーズアウトをして、100%子会社化してしまう、という選択をすることがあります。

親会社からしても、本音としては、その会社を使って思い切った打ち手をとりたくても、短期的にみれば他の株主の不利益になるならやりづらいし、そもそも株主総会の特別決議(3分の2以上)が得られないかもしれません。だから、親会社側にも完全子会社化の動機があります(というか、世の大半は、結局は親会社主導でしょう。)。

さて、ここからが疑問なのですが、では、なぜそもそも上場子会社が認められるのでしょう。換言すれば、なぜ証券取引所は親会社を有する会社の上場を認めるのでしょうか。判断のフレームとしては、上述のような構造的な利益相反の問題等を上回るだけの社会的な有用性が認められるか、ということでしょうけれども、うがった見方をすれば、「結局、市場に公開するといいながら支配権だけは確保しつつカネを集めて、株価を高めて最後にEXITしたいだけでしょう?」ということになり、こういう見方も一概には否定できないわけです。

他方、持株割合が分散している上場企業の方が、パフォーマンスがいいのかもわかりません。もしかしたら、ある程度持株割合が集中している上場企業の方が、相対的にパフォーマンスがいいかもしれません。もしそうならば、上場子会社はあながち悪いものではないことになります。

個人的には、publicな存在として広く公衆から資金を調達しつつ、裏ではある特定の当事者がコントロールしているという状態は解消すべきであると、ある意味naiveに考えていますが、この点を判断するには、もっと客観的かつ実証的なデータが必要であると思います。

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