見出し画像

#151_預金小切手(「預手(よて)」)は今でも使い道があるか

「預手(よて)」という言葉を知っているヒトはなかなか通だと思います。普通に暮らしていて、あまり聞くことはありませんし、まして使うことなど皆無でしょう。

しかし、業界によっては(少なくとも以前は)けっこう便利に使われていた決済手段でした。

「預手(よて)」とは「預金小切手」の略であり、法的にいえば、銀行が自己を支払人として振り出した自己宛小切手です(小切手法第6条第3項)。要するに、たとえばA銀行B支店が、「この小切手を持参した人に、その金額を私(A銀行B支店)自身が支払いますよ」と約束して作成する小切手です。このように、銀行が支払いを約束しているので、預手を受け取った人は、現金を受け取ったときのように安心することができます。

少しfinanceの専門的な言い方をするならば、「ファイナリティー(finality)のある決済」=「それによって期待どおりの金額が確実に手に入るような決済」としての古典的な手法だったわけですね。

これが典型的に使われていた取引の場面は、不動産の決済でした。ご存知のとおり不動産の価格は普通に何千万単位なので、現金で支払うとなるとけっこう大変ですし、そもそもあぶなくて仕方ありません。

そこで、あらかじめ買主が預手を準備しておけば、決済の時、売主にそれを渡せば足ります。売主も、それを自分の取引銀行に持参すれば現金化できます。

ただ、ここまでインターネットバンキングなどの決済手段が発達した現在、預手の利便性は、相対的に相当下がっていると思います。どうしたって紙としての小切手の管理とそのリスクがありますし、銀行に持ち込んでも普通は3営業日程度はかかります(細かいことをいうと、普通はその預手を「銀行渡り」としておいて、手形交換所を経由して現金化するので。)。

なので、最近の不動産の決済は、売主が、所有権移転登記に必要な書類等を決済場所に持参して、買主がそれを確認した後、買主がインターネットバンキングなどで振込手続を行い、その場で売主の指定口座への着金確認をしたら、売主から買主がその書類等をもらう、という流れが多いのではないかと思います。

こうしてみると、預手って今やアナログで風流な決済手段に思えてならなかったのですが、関財のパンフに、思いもつかない別の使い道を発見しました。

http://kantou.mof.go.jp/content/000188159.pdf

オレオレ詐欺対策、ですね。現金をそのまま渡すよりも、預手にして、その受取人についてほんとうに渡したい人にしておけば、第三者が勝手に現金化することは難しくなります。しかし、オレオレ詐欺にあった被害者が、預手を思いつくかは要検討ですが…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?