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#208_兄弟姉妹の扶養義務

親が、(特に未成年の)子の生活の面倒を見るのは当然であると感じる人も多いと思いますが、兄弟姉妹の間はどうでしょうか。この点は、私たちにとって、今後とても重要な(かつ深刻な)問題になるように感じます。

まず、このような、その人の生活の面倒を見る義務を法律的には「扶養義務」といいますが、親子に加え、兄弟姉妹にそのような義務があるかというと、答えはYESです。

(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
(後略)

ただ、たとえば親と未成年の子との間の扶養義務と、兄弟姉妹の間の扶養義務は、さすがに内容が違うと考えられています。判例・通説的にいうと、前者は「生活保持義務」であり、「最後に残された一片の肉まで分け与えるべき義務」、後者は「生活扶助義務」であり、「己れの腹を満たして後に余れるものを分かつべき義務」であると。

要は、親と未成年の子であれば、親は、未成年の子について、自分の生活水準と同程度の生活が送れるようにしなければなりませんが、兄弟姉妹であればそこまでは求められず、自分に余力があるときに、その余力の範囲で援助すればよい、ということですね。

ただ、それはもちろん、自分とその家族の生活を維持するのが精一杯ということもあるでしょうが、頑張っているヒトほど多少の余力は残しているでしょう。それに、「余力」という概念もあいまいで、たとえば自分の生活水準を少しでも下げれば、余力が生まれるようにも思います。

そして、この問題がクリティカルに顕在化するのは、自分の兄弟姉妹が、生活保護を申請する場面ではないでしょうか。

そもそも生活保護は、あくまでも、家族による扶養義務が果たされた後で実施されるのが建前です。

(保護の補足性)
第四条 
(前略)
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
(後略)

そして、兄弟姉妹を含む扶養義務者がきちんと扶養義務を履行しているかをチェックするために、生活保護申請がなされると、原則として、役所から扶養義務者に通知が行きます。

(申請による保護の開始及び変更)
第二十四条
(前略)
8 保護の実施機関は、知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行していないと認められる場合において、保護の開始の決定をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該扶養義務者に対して書面をもつて厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
(後略)

ただ、生活保護の実務に詳しくないので、この通知が実際のところどこまで機能しているかはわかりませんが、想像するに、道義的な問題は別にして、みんながみんな、兄弟姉妹の扶養に応じているわけではないと推測します(たとえば、「子供が多くて出費がかさむので…」とか、「妻(夫)の両親の面倒も見ないと…」などと説明された場合に、役所がそのウラをどこまで取りにくるのか?と考えると、そこまで強いことは言えないような気がします。)。

こうしてみると、そもそも民法が兄弟姉妹に扶養義務を認めていることの意味にさかのぼって考えてみる必要があると感じます。

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