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理論派?行動派?それともハイブリッド型?

物事を進めていくときに人それぞれのやり方があります。どちらが良いということを書くつもりはありません。どちらかというと両方併せ持っていた方が良いと思うくらいですから。しかし両方を使い分けながら進んでいくためにはどちらからでも開始して、それぞれの利点欠点や成功失敗事例を多く重ねておく経験が必要になってくると思います。

FAA Aviation Instructor Handbook Chaper 3には次のような説明があります。目的を持って・経験を通して・多面的で・活動的にという要素を組み合わせて学ぶこと(教官視点では教えること)が効果的と書かれています。何もこれはパイロット訓練だけに適用されるものではなく、全てのジャンルの学習に共通するものでしょう。

パイロット教官として言えることは、パイロット教育訓練は二つの手法を活用して指導していきます。理論的に仕組みをしっかり理解させて行動実践をする方法もあれば、行動実践させてそこで発生する問題を実体験させる方法もあります。理解し難い領域ほど行動実践させて「びっくり」させる方が記憶にも残ります。学習の過程の中では、各自の過去の経験に基づいて積み重ねていくのが普通ですが、特にパイロット訓練に入る前の日常生活では感ずることのできない領域がたくさんありますので、学習者は理解に苦しむのです。時には過去の経験から真逆のことをしてしまうこともあります。

パイロット訓練のいくつか例をあげてみます

スピンの例

FAA Airplane Flying Handbook Chapter 4にはスピンについて記載があります。

操縦席に乗っている目の前の景色は地面に向かって真っ逆さまにクルクル回転しながら落ちていくイメージです。失敗すれば死に直結すると本能的に感じるので最初は恐怖です。なので通常の反応はこれ以上落ちないように操縦桿を引っ張ってしまう(これまでのフライト訓練では引っ張ると機種が上がると学習しているから)のと、回転方向と反対側に操縦桿を回してしまう(これまでのフライト訓練で操縦桿を回した方向へ機体が傾くことを学習しているから)、あとは本能的に体が反応してしまうこともあるでしょう。

それは全て正しい方法の逆をやってしまっていること!という怖い事実。さらに悪化させる方法。死なないようにしっかりとした学習の目的意識が芽生えます(笑)なぜ一般的なことが悪化させることになるのかをテキスト・スライド・動画・シミュレーターを使いながら理論でしっかり説明します。頭に入れた状態で自分の手でシミュレータで実践する。悪化の状態と適切な回復操作の二つを実践する。その後実際の実機訓練でやってみるの良いのです。ちなみにFAA Private Pilot訓練ではかなり昔に実機訓練の項目から削除されていますので、通常の訓練項目には入っていません。FAA Certified Flight Instructorの訓練課程では当然入っています。訓練生が間違ってスピンに入れるのは普通のことなので(笑)

目的を持って・経験を通して・多面的で・活動的にという要素を組み合わせて教えることが効果的だということが明確に理解できるはずです。

このような恐怖体験(笑)をあえて実施することもあれば、初期段階の大切なことは成功体験を実施することです。

イントロフライトの例**

Introductory Flight TrainingまたはDiscovery Flightともいいます。「今できる操縦体験という選択肢」でも伝えましたが、イントロフライト(操縦体験)を成功体験に変える効果的な方法をお伝えします。楽しいだけではないパイロット訓練は結果的に脱落してしまう人も多く出てくることは「目標達成できる人とできない人の違い」でも伝えた通りです。最初の成功体験が困難を乗り越える原動力になることでしょう。

アメリカには実機での操縦体験や、シミュレーターと実機を組み合わせたハイブリッド型操縦体験プログラムが多く実施されています。いくつかの座学やシミュレーター訓練を組み合わせて、最終日には実機で別の空港まで飛んでいくというミッションを体験させるものです。効果的な操縦体験を生み出すためにです。

目的を持って・経験を通して・多面的で・活動的にという要素を組み合わせるのです。

読むテキストは最低必要な分量にする。フライトシミュレーターで動くビジュアルと計器を見る。しかも自分のコントロールでそれらが動く。どうすればどう動くのかを知る。計器の表示される意味が理解できる。

最初に読むテキストの内容の理解と、それらが実践できた後に読む内容の理解度には大きな違いが出てきます。読むのが苦痛でなくなり楽しくなります。家庭用のフライトシミュレーターの飛ばし方がより専門的になり更に面白味が増します。ゲームのフライトシミュレーターからパイロット訓練へ移行するなんてこともあります。そのような方のインタビュー動画も参考までにご覧になっていただくとリアルなお話が聞けます。

なぜフライトシミュレーター?て聞かれるのでパート1」でも書きましたが、家庭用のフライトシミュレーターで訓練する方法もアメリカの専門家から紹介されているのです。

FSOではアメリカに習っていくつかのイントロフライトプログラムを提供しています。

・いきなりフライトしちゃったコース

・たった一日でタッチアンゴーまでできちゃったコース

・たった三日で一人で他の空港まで行けちゃったコース

・タッチアンドゴーが試験合格レベルになっちゃったコース

・他の空港までのフライトが試験合格レベルになっちゃったコース

名称はお堅い名前だったのを勝手に変えちゃいました(笑)

目的を持って・経験を通して・多面的で・活動的にという要素を組み合わせて教えることが効果的だということが明確に理解できるはずです。




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