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なぜフライトシミュレーター?と聞かれるので パート①

10年以上も前に「デスクトップフライトシミュレーターを活用してパイロット訓練効果を上げる」と日本国内で宣言したときには「どうせゲームレベルでしょ」苦笑されてました。当時玉那覇は米軍基地Flight Training Centerでチーフインストラクター兼FAA試験官をしていて当時のFAA検査官と真剣に「実機とシミュレーター訓練を統合させた訓練方法」についてディスカッションしていました。なぜならすでにFAAではFITS(FAA-Industry Flight Standards)方式にてその訓練方法が開発されていたからです。FAAの新方針となった訓練手法を通常の訓練と試験にどのように採用していべきかという点で、現場でのディスカッションのみならずメールでの情報交換や定期的な会議場でのディスカッション、そして実証実験なのでその効果を改めて確信したのです。

①学習したことを効果的に習得するため

コクピットが狭いのにはそれなりの理由があるのです。座っている位置から全ての操作ができるように設計されています。通常時はもちろん、計器やスイッチの位置が見えにくい夜間時や緊急時には「考える前に視線や体が動く」ようにトレーニングする必要があるのです。そのためには学習したことを効果的に習得する必要があるのです。人が学習して成果を出すためには「体験を通した学習」というのが効果が高いことはいろいろな文献資料から明確です。なので昔から「紙レーター」なるもの、つまり操縦席ポスターを使用して「体で覚えていた」ということです。

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引用元:https://reeed.jp/blog_individual/5steps/

通常操作や緊急操作を覚える

各飛行機に装備されている装置やスイッチ類の操作方法はチェックリストに従って操作します。ロジカルな観点から順番が設定されています。それらを順番通り覚えていく基本操作を体に染み込ませるのが一つの目的です。

昔の飛行機はアナログ計器がたくさんあり、必要な情報はそこへ目を持っていく必要がありました。今の飛行機はデジタル化が進み、必要な情報はボタンやスイッチを使って引き出す必要が出てきました。昔に比べて安全運航に必要なたくさんの情報が出てきましたが、それを目の前に表示させるためには何層にも重なっている各ページの内容を把握することと、そこにたどり着けるための操作を理解する必要があるのです。

安全運航を実現するための最新のテクノロジーが搭載されている飛行機でも事故が減らないことが理由で、前述のFAAのFITSが開発されたのです。事前にシミュレーターで操作方法をマスターしておくことが国の方針で示されたのです。

課目をマスターする

離陸〜上昇〜旋回〜水平飛行〜降下〜着陸という一連の通常飛行から、離着陸を繰り返すタッチアンドゴー、失速・急旋回・低速飛行・計器飛行などの機体操作をマスターするための基本課目、別の空港へ飛んでいく航法や夜間飛行など様々な課目があります。計器飛行証明取得のためには外が見えない状態でそれぞれの課目に加えて、定められた設定方式で離陸から着陸までマスターする必要があります。

それらの手順が解説されているものがFAA Handbookで、実地試験にはそれらの課目実施において評価基準や許容される誤差範囲が記載されているのがAirman Certification Standardsです。

課目実施において「なぜこの課目が必要なのか?」「手順は?」「試験官のみるポイントは?」ということをしっかり理解した上で、シミュレーターで何度でもマスターするまで練習してください。

効率性の検証

タッチアンドゴーと呼ばれる離着陸を繰り返すTraffic Patternの事例を検証してみました。1.5時間の飛行時間で実機訓練では実質1.2時間の訓練時間で離着陸回数が7回程度に対して、シミュレーター訓練では1.5時間まるまる訓練でき離着陸回数も15回となっており高い効率性があるのがわかります。

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近くの訓練空域に飛んで課目練習をするLocal Flightの事例を検証してみました。1.5時間の飛行時間で実機訓練では実質1.0時間の訓練時間に対して、シミュレーター訓練では1.5時間まるまる訓練できます。

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上級資格となる計器飛行証明の訓練を検証してみました。レーダーに誘導されるパターンや設定された方式で自分でフライトするパターンなどあります。レーダー誘導のIFR Patternの事例を検証してみました。1.5時間の飛行時間で実機訓練では実質1.0時間の訓練時間に対して、シミュレーター訓練では1.5時間まるまる訓練できます。

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まとめ

効果的にというのは、投資するお金と時間に対して、得られる知識と技術はどのくらいあるか?という視点で考えてみました。飛行機は乗れば乗るほどお金がかかる。天候や周りの状況で計画していた時間では終わらないことも当然出てきます。前述の検証は一回のフライトだけです。これが数十回と継続される訓練となると差が大きくなるのは明確でしょう。

航空評論家の小林宏之氏とフライトシミュレーター教育の専門家のブルースウイリアムス氏からもフライトシミュレーター訓練の高い効率性をお話ししていただきました。

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