歴史とは何か
歴史とは何か
歴史とは今と過去の対話である。
E.H.カーの歴史とは何かの冒頭に登場する言葉である。
この一文は、スタジオジブリP 鈴木敏夫氏のジブリの哲学という本の中から見つけた。彼が青年時代に衝撃を受けた言葉として登場していて、私にとってもなんともひっかかる不思議な言葉だなと思い、ずっと頭の片隅に置いてきたものだ。
歴史とは、今までの時間の積み重ねの中で実際に起きた事象、事実の総集なのだと思ってきた。それは教育機関で習う、所謂歴史の授業のイメージからだと思う。
しかし、この文の【今と過去の対話】という言葉は、自己(今の私)と他者(過去の私もしくは誰か、何か)との対話という関係が結ばれて初めて歴史となるという。
なるほど、自己と他者との関係の作り方(物の見方)によって歴史は変わるし、国や地域によってその捉え方は様々になる。単なる事実や思い出とは全く違う点はそこにある。
私は自分にとって、歴史といえるものは何かと考えてみたが、これといって具体的に何かを記せるわけではなかった。私はまだそこまでの対話の限りをその相手(ある建築家とその作品)と尽くしたわけではなかった。
本やテレビや誰かの話で得た情報は、情報でしかなく、それを今の自分と対話する解像度まで持ち上げられて初めて自身の歴史となっていくのだろう。最近になってそのことに気づき、少し動揺した。
確実に過ぎて行く時間の中で、立ち止まり対話を試みる機会をきちんととることは、自分の中の歴史の厚みを増やしていくことに繋がる。
次年度がはじまる春に、歴史について考えてみることは案外大切なことなのかもしれない。
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