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誤ちを犯すための思考

「過つは人の性」という常識に反して、我々は日常において殆どの場合、少なくとも意識に上るレベルでは「過ちを犯さない」。頭の中では慣れ親しんだ「行為の誤りとその訂正」、「フィードバック制御」といった概念に相当するプロセスは、実際には殆ど生じていない。初めから「正しい」方法を選んでいる。

これはもちろん、我々の行動が客観的に見て<適切である>ことを意味しない。上記の「正しい」とは、「誤りが発生しようもない」という意味であり、ある種の「システムの内部モデル」に基づく「フィードフォワード制御」によって結果を逆算して織り込んでいるということである。

これはすなわち、「結果を逆算して織り込むことができるような行動」しかしていない、ということでもある。それによって我々は、安定的な行為と結果の連鎖の繰り返しを日々継続することができるのである。

思考と呼ぶに値する思考は、この「結果の織り込み」による「安定」に抗い、その外に出るものである。思考によって我々は初めて、「誤るに値する誤り」を獲得することができる。それによって「システムの内部モデル」を非連続的に更新し、新たな形式のフィードフォワード制御を手に入れることができるのである。

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