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ええことはなんもない

父が病院から帰ってきた。「手術できひんって」

左目が全く見えなくなった父は、昨日病院で眼球に直接注射を打ってもらった。眼底出血で圧が高くなっているのを抑えるためらしい。それで効果が見えたら、ゆくゆくは手術をしなければならないということだった。しかし左目に効果は見られず、症状が進んでいるので手術はできないと言われたのだ。一人暮らしの父は両目が見えなくなったら大変なことになってしまう。

末期がんの治療で、食べることも起き上がることもできなくなっていた1~2か月前に比べれば(もういよいよあかんと言われて私は帰国したのだけど)、今はちゃんと食べれるようになって奇跡のように回復したと思う。でも片目も見えないし腎臓の具合もよくない。このままだと右目も見えなくなってしまうかもしれない。「もうええことはなんもないわ」

「でもまあ手術する方が体に負担かもしれへんし」「目薬や内服薬で症状を抑えていく方がいいかもしれへんしな」「近所に息子がいてがんばって世話してくれるし」

大阪の十三(じゅうそう)に住む86歳のお姉さんから10日にいっぺんくらい電話がかかってくる。一回り以上年上のお姉さんは膝こそ悪いが、身体はいたって元気でいつも弟を心配してあれこれ送ってくれたりする。実は父と十三のお姉さんはお母さんが違うのだけれど、赤ん坊だった父をまだ幼かったお姉さんが育ててくれたという。

「ねえちゃん、ありがとな」と電話に答える父。

いいことに目を向けて生きていくしかない。

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↑11歳の息子が描いた父が主人公のマンガ🤣

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