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チャイナタウンとわたし

最近また対面ヨガクラスを受けにマンハッタンまでよく通っている。

コロナ前まではほぼ毎日橋を越えてマンハッタンまで行っていたのだが、オンラインヨガというものが登場してからすっかりスクリーン越しのクラスに慣れ親しんでしまい、遠く離れた土地の先生のクラスしか受けなくなって3年以上が過ぎた。諸々の事情が重なって、ようやく重い腰(ただの比喩ではなく・・・)を上げて行ってみたら新しい先生たちとも出会って対面がすっかり楽しくなった。

クラスを一つ受けるだけでも自宅からの移動時間を入れて最低3時間半〜4時間はかかってしまうので、あっという間に1日の主な時間が終わってしまう。わたしはあまり1日にいろいろ詰め込められないタイプ。できるだけ休みの日の朝イチのクラスを受けるようにしているのだが、朝が弱いので死に物狂いで起きて行っている。なので特に良いクラスの後には心身ともにリラックスしてしまい、動けない。終わってすぐにベッドに行って寝れるのがオンラインヨガの良いところなのだが・・・

それもわたしは自転車移動なので、疲れていようが眠かろうが自転車を40分くらい漕がなければならない。ヨガスタジオを出た後、自然にコーヒーなんぞを飲んでヨガ日記をつらつらと書きたくなる。しかしニューヨークには静かでゆっくりできるようなカフェが意外に少ないのだ。

”Quiet cafe”とグーグルで検索するとたくさんのカフェがヒットするのだが、こぢんまりした素敵でおしゃれなカフェはどこも旅行者っぽい人や若い人たちでまあまあ混んでいる。それにわたしにはおしゃれなバイブが落ち着けない。どうしてもチェーン店など、安くて広くて長居しても目立たないところに行ってしまう。今回もいくつかおしゃれカフェを調べて行ってみたが、どうも入る気がしないのだった。

それで昔からよくチャイナタウンのべーカリーでランチやコーヒーを飲んでいた。マンハッタンのチャイナタウンをご存知の人は、チャーニーズ・ベーカリーのどこが「quiet」なの?と思われるかもしれないが(正論)、わたしにとってはじいちゃん、ばあちゃんに囲まれてお粥なんぞを啜っているととても心が落ち着くのである。コロナ以前はバワリーストリートにあるベーカリーによく通っていた。チャイニーズ・ベーカリーはパンや飲み物だけでなく、麺類、点心、お惣菜、ロースト肉、お団子のようなものも売っている。バワリーにある行きつけのベーカリーは食べ物の種類がとても多く、数あるベーカリーの中でもダントツ安かった。そのおかげで店はいつも満員で、お客はみんなギュウっと詰め合いながら炒めた麺やキャベツの炒め物や肋肉のローストなどを食べていた。チャイニーズ・ストアあるあるなのだが、ここは冬でも暖房があまり効いていない上、頻繁に人が出入りするためよくドアが大きく開けられたままになっていた。ニューヨークの冬は寒いし、冷たい風は容赦なくびゅうびゅう吹き込んでくる。しかし誰も特に気に留めている様子はなくドアは思いついた時に閉められた。入り口付近は寒さに強いおばあちゃんたちしか座れないが、人の熱気や湯気で店内はムンムンしていた。

あんなに繁盛していたこのベーカリーはパンデミックの後、閉店してしまった。街が再開してからしばらくして久しぶりに行った気もするので一体いつしまったのだろう。改装かと思ったけれど張り紙も何もなくまだずっとシャッターが下りている。一軒ベーカリーがなくなっただけでいろいろ困るものである。

ちなみにチャイニーズ・ベーカリーの普通のホットコーヒーは意外に美味しい。「レギュラー」はミルクと砂糖が入っているが、ブラックかミルクのみにするとすっきりとした香ばしい豆の味がスッと味わえる。値段も安い。私はスタバなどよりもこっちの方が好きである。

徒然なるままに思い出してみると、たまに寄っていたグランド・ストリートのベトナム・サンドイッチ(バンミー)のお店もいつの間にかなくなっていた。ここはまだバンミーがもっと有名になる前からたくさんの種類のバンミーを売っていて、テーブルも広くて居心地が良く、まだ子供が生まれる前からよく行っていたのだ。昔はいつも本を読んだり書き物をしていたが、今は携帯電話でSNSを見るだけ・・・世の中つまんなくなってるな。いや、私か(笑)これ以外にもエビワンタン麺の美味しいレストランも閉まってしまった。ここはパンデミックで街が閉鎖する直前まで通っていたところでいつも大混雑の人気店。おひとり様来店の私はいつも入り口の真ん前の、L字型になった変な形のテーブルの端っこで、人が出入りするたびに寒風を顔に浴びながらハフハフと麺を啜っていた。

最近のチャイナタウンは世代交代で新しいお店が並び(値段も高くなっている)、ジェントリフィケーションの波も今まで以上に押し寄せている。観光客でいっぱいだが、何とか立ち止まっておじいちゃん、おばあちゃんとその家族のホームであり続けてほしい。


:追記:
徒然なるままに思い出してみると、学生の頃はよくクロスビー・ストリートのHousing Works Bookstoreに行っていた(ここはチャイナタウンではないが同じダウンタウン)。1990年、当時NYにAIDSのエピデミックが吹き荒れていた時に設立されたらしく、AIDSとホームレスの撲滅・被害者救援のために何と今も運営しているそうだ。スタッフがみんなボランティアで、天井が高くて吹き抜けのスペースには寄付されたセカンドハンドの本、服、クラフトなどが並んでいる。奥にあるカフェエリアといろんなところに点在する小さいテーブルと椅子でゆっくりとした時間を過ごすことができるのだ。収益はもちろん団体の支援活動に使われる。もう何年も行っていないので今回調べてみたら、この団体は運営継続できているだけでなく、多くのスリフトショップ(服などのセカンドハンドのお店)と運営し、何と最近Housing Works Cannabis Coという大人のためのカナビス・ストアをオープンしたという。それもアスタープレイス駅近くのブロードウェイに!すごすぎる!偶然だけど私は1992年の暮れに旅行でNYを訪れている。AIDSエピデミックの真っ只中で、その時の街の殺伐とした光景はしっかり記憶に残っている。

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