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オンライン勉強会で意識したい、プログラム学習の原理

昨年秋から、手を動かして学ぶコミュニティ(勉強会)を継続しています。毎回30名前後の開発者が参加していて、合計100回以上の開催ができています。

オンラインでビデオ会議ツールを使って開催しているため、地理的な制約がなく、広く参加者を募ることができています。しかし、一方で、このやり方には、1つの問題点があります。

参加者が学べているのかどうかがわかりづらい

オフラインの勉強会であれば、参加者が手を動かして学んでいる様子が目に見えます。このため、しかし、オンラインで数十人の参加者が居る状況だと、目視で確認するというような方法が取りづらいです。

この勉強会は手を動かして学ぶことが基本です。一方で、参加のハードルも下げたいため、聞くだけの参加者(「ラジオ参加」と呼んでいます)も認めています。このため、回の内容によっては、ビデオ会議の参加者数に対して、実際に手を動かしている人は思った以上に少ないということも起こり得ます。

では、どのようにすればうまくいくのでしょうか。

学び手は「積極的反応の原理」を意識しよう

プログラム学習の5原理に、積極的反応の原理というものがあります。

これは、学び手自身が課題に対して興味を持ち、積極的に反応することが深い学びにつながるという原理です。

教え手に対して、手を動かしている自分の存在を認識してもらうために、積極的に反応をしていきましょう。ビデオ会議ツールであれば、自分のリアクションを投影するだけでも効果的です。

また、教え手は、参加者に対して積極的に質問を投げかけていきましょう。名前を呼んでから、質問をするのもよいかもしれません。

コールアンドレスポンスです。

教え手は「学習者検証の原理」を意識しよう

同じくプログラム学習の原理の一つに「学習者検証の原理」というものがあります。学習プログラムの良し悪しは、学び手が実際に学ぶことができたかで判断される、というものです。

当たり前のようにも聞こえるのですが、意外と忘れがちな原則です。

たとえば、教え手が、あらかじめ予定していた内容を時間通りにピッタリ終わらせることができたとします。しかし、実際には学び手がついていけていないのであれば、何の意味もありません。

予定していた半分しか進まなかったとしても、学び手がしっかりと理解できている勉強会のほうが、ずっと良い勉強会だと言えます。

学び手は「学びが成立しているかどうか」を伝え続けよう

学習者検証の原理にしたがって考えると、良い勉強会を成立させるためには、初心者こそが貢献できるということがわかります。

置いてきぼりを食らっているのであれば「私はついていけていない」と伝えましょう。そのほうが、教え手と学び手の両方にとって得です。少なくとも1人、内容についていけていない学び手が居るということがわかりますから。

多くの人数が居ると遠慮してしまいがちなのですが、ぜひ勇気を出して声を上げてみてください。教え手から見ても「学びが成立していない」状況から脱するための、助けになることでしょう。

学び手は「学んだこと」を自分の言葉で記録しよう

最後にもう一点、大切なことをお伝えします。それは、(特に態度・習慣についての)学習効果は「行動が変わったかどうか」で測定されるということです。

言い換えると、自分の行動を記録することで、自分が学べているかどうかをセルフチェックすることができます。

行動を記録すると言っても、必ずしも新しいことを始める必要はありません。すでに日報を書いているのであれば、それが利用できます。

このとき、一つ注意しなければいけないことがあります。それは「学んだこと」を自分の言葉で記録するということです。

行動分析学には、死人テストというものがあります。

死人テストでは「死人にできることは『行動』ではない」と定義します。「否定」(~しない)、「受身」(~される)、「状態」(ある、いる)で表現されることは行動ではありません。

「勉強会への出席」だけでは、行動の記録とは言えません。

「勉強会への出席」だけでは、他人から見ると「話を聞いている」「勉強会の場に居る」と同じです。それだけでは、単なる「受身」「状態」に過ぎません。

学んだことを自分の言葉で記録してはじめて、勉強会に出席したと言えるでしょう。それは、自分自身のためにも、教え手のためにも、コミュニティのためにもなります。

また、チームのマネージャーやメンターは、学び手が自分の言葉で説明できるようにするための手助けをしてあげましょう。具体的なアウトプットを要求し、理解しているかどうかを一緒に確認してあげると良いと思います。


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