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イギリスの小学校の特徴、日本との違い

イギリスの小学校では、教科書がない、文房具を持っていかない、ノートも置きっぱなし、制服があるのが大多数、等々のよく知られていること以外で、気づいた違いについて書いて行きます。

日本でよく見る本や、コラム等いわれているほど、イギリスの教育のほうが、優れている、素晴らしい、というわけでもないですが、合理的です。

1.様々な文化を持つ人達が多くいるため、受容範囲が広い。
2.労働組合が強いために、切り分けはっきりされている。
3.失敗を恐れないので、科学的に研究、実証された手法を取り入れるのが早い。

というのを、やはり感じます。
バックグラウンドがあるから、これらができる、というのもありますが、コロンブスの卵かもしれません。

イギリスの国内では、教育に関して、それでもよく文句言われています。

日本でもお馴染みの…

先生が厳しすぎる/ゆるすぎる。
宿題が多すぎる/少なすぎる。
子供一人ひとりをよく見てない。

等々…から、

・月齢の高い子ばかりが役割をもらっている。機会均等を図れ。
・うちの子をもっと評価しろ。
・小学生は、体をもっと動かさないとだめなのに、体育が少ない。
・英数偏重の時間割で、もっと一般的なことの基礎を教えるべき。

色々と文句は尽きません…できているところ、良いところを、当然と捉えるのが、人情というもので、しかも、感じていることを声に出して言って良い文化ですので、いろいろ考えさせられます。

イギリスの学校の第三者機関による評価・公表

イギリス義務教育期間の学校、保育園、チャイルドマインダーを含む機関は、ほぼ毎年、OFSTEDという第三者機関に査定されます。つまり、各学校、機関の成績表となるわけです。

Grade 1: Outstanding
Grade 2: Good
Grade 3: Requires Improvement (RI)
Grade 4: Inadequate

Outstandingを取ると、次の年の検査項目が減る上に、新しい先生を雇うのも楽になります。というのも、この評価には、働いている先生たちの満足度(幸福度とも言えそうですが)が入るからです。

Requires Improvement, Inadequateとなると、よい先生が逃げ出す可能性もあります。というのも、先生へのプレッシャーと仕事が増えるからです。

公立の学校の先生も、どの学校に勤務するかは、行政で決められるのではなく、普通に面接を通して、学校単位で採用されるというプロセスを通ります。ので、何年立ったら、別の学校に移動させられる、という状況はなく、労働者としての権限も守られているので、学校長は、残業をいかに減らすか考えて、勤務している先生たちの満足度を上げる必要があります。

私立、公立関係なく評価されます(補習校は、別扱いですが、全日制の小学校は、OFSTEDに評価されています)。また、その評価は、国のサイトで公表されています。内容も詳細に載っています。

例えば、最近の事例としては、先生たちの残業をへらすために、日本で言う学芸会も簡素化できるようにもなったようです。(親としては、物足りないと思うこともあるでしょうが、コスチュームの準備は親がするので、面倒が減ったと考える人ももちろんいます。)

査定の公表による功罪はいろいろありますが、透明性がでて結果よりよくなっていると思います。査定内容は、状況に応じて変わっていきますし、公開されています。年に一回ほどですが、いつ査定が入るか、も、わかるのが数日前になるそうですし、ある意味、いつでも緊張感を持って、いつも良い状態に持っていこうとする必要があります。親の意見も聞かれますし、子供もインタビューされます。(子供のインタビューは、前もって成績や素行のいい子が選ばれていますし、査定者がピックアップすることもあるようです。)

これで、Outstandingを取ると、やはり、学校の人気が高くなるので、その学校の近所の家の家賃や、価値が上がりますし、私立も人が集まりやすくなります。

各学校の個性と工夫

さて、このOFSTEDが政府の機関から独立してできているわけですが、これができるのも、公立でも、各学校に様々な決定権が移行されていたからです。教育内容の大筋は、国でガイドラインが設定されていますが、それをどうハンドルするか、は学校や、教師に任されています。

ですので、各学校には個性がでてきます。OFSTEDの評価がGood以上であれば、大抵の小学生の親は、その学校のカラーを重視します。

フランス語を教えているところもあれば、スペイン語を教えているところもあり、また、教科をまたいだ教育がよくされています。身体を動かすことを重視している学校もあれば、低学年から学業優先の学校もあります。

小学校では、英数重視で、他の教科の学習が浅い、とよく言われますし、そう感じます。私の子供の学校では、午前中は、英数で埋められ、午後に、月曜は社会と道徳、火曜は体育、水曜は理科とコンピューター、木曜は体育、金曜は図画工作となり、英数で一日の6割を占めるという感じです。

小学校の全国統一テストも、中学受験時も、英数のみで、理科や社会のはありません。先生が評価するだけです。

ですので、小学校が全部のエリアを、日本ほど深くカバーしませんし、様々なものに深く触れる機会は、親に任されます。ですから、小学生の放課後は、塾ではなく、趣味を極める習い事で忙しい場合もあります。水泳、テニス、サッカーなどの運動系から、ボーイ・ガールスカウト、楽器、美術、劇、チェス、などのアート系がほとんどで、家族構成によっては、語学が入ります。

受験になったら、一時期習い事を減らし、休憩させる事はあるようですが、この時期になると、子どもたちは様々な習い事から、自分の『好き』を見つけているので、習い事で埋め尽くしていることはありません。そして、子供に、夜8時以降まで勉強させることは、良しとされていません。睡眠不足の悪影響のほうが大きいですし、集中して短時間でこなすことこそ、時間に限りのある試験を受けられる能力が高まるからです。

また、ある意味、暗記があまり必要ない理科や社会が無いことから、そこまでしないと入れないなら、能力が『まだ』ないということで、次のチャンスまで熟成していけばよいから、無理はさせないというのが、長い人生を上手に生きていくコツとも言えるでしょう。

(とはいえ、やはり、アジア、オリエンタル系は無理させる事も多々あるようです。)

他教科に割く時間が少なくて、中学校でどうなるのか、と思われますよね。でも、教科を渡る学習がされていることがほとんどのようです。

例えば、トピックと呼ばれる、社会のようなもので、エジプトを学ぶとなれば、英語の時間にエジプト時代の話を読ませたり、作文させるようにする。
プログラミングで、ものを移動させることを学ぶのは、算数で座標を学ぶ時期と同じにする。

どう考えるか、どの視点でみるか、多方面から、色々な人の意見が、評価されることなく出すことができ、受け入れられる状態にしようとしていますので、答えが一つではない疑問の提示、意見の出し合いも小学校中学年からあるところもあります。

算数の問題も、答えとなりうるものをすべて出さなくてもよいのです。一つでも出せたら、それが素晴らしいのです。複数だせたら、より素晴らしい、くらいですますところも多くあります。

先生が、授業をプランニングするための利用するリソースも、どこの会社を使うか、生徒数からくる財源でどうまかなえるか、寄付金や、PTAであつめたお金を何に使うか、等々すべて学校次第です。時間のかかる『行政のはんこ』はほぼいらないのです。

というわけで、校長先生の手腕が、先生の満足度、先生の満足度が子供の満足度、そしてひいては親の満足度になり、親が評判を広め、と、良い循環が生まれる場合がよくあります。もちろん、校長の手腕が悪くて、悪循環が生まれることもあり、均質化、は図れません。人材の確保が難しいところは、悪循環から抜け出せない場合がありえます。

とくに、前代未聞の学校閉鎖期。校長先生の手腕はかなり問われたように思えます。

通う学校によって、単元の習うタイミングも、宿題も、方針も違うのが、よいとするか、まずいとするか。転勤がある日本には、なじまないものかもしれません。しかも、定員が決まっていて、各学校毎に何クラス分受け入れか、も決まっていて、基本変わりませんので、空きが無ければ、よい評価の学校に入れません。遠いところまで、しかも評判の悪いところへ毎日送迎をしないとならないかもしれません。

個人の尊重とチームワーク

個人の尊重とチームワークが、相反するように感じられるのは、

「謙譲の美徳」を尊しとす。

武士道から来たのか何なのかわかりませんが、これのせいではないか、と思えます。
「個人」に「自分」は当てはめないからかもしれません。

他人を尊重し立てることばかりに目が行き、自分を忘れて、自分を蔑ろにしていくのです。子供は、親である自分の一部と考え、いうことを聞くべき、いい子でいるべき、人に迷惑をかけないでいるべき…とべきべき論で固めていく。浄土真宗の性悪説をあたかも信じているかのように、私は、悪い、自分の子も悪いできない…

できないできない、まだまだ、でいつまで立っても認められない…。正しく、日々終わりのないKAIZEN。

疲れませんか?一番諦めてはいけない自分を諦めたくなりませんか?

逆に、だめだと思うから、日々、少しづつでも成長するよう、改善に向けて頑張れますか?

頑張れる場合、大抵自分に自身、自尊心が、できている人が多いですよね。でも、子供の自尊心は、大好きな親が認めてくれることで、生まれ、強くなることが多いです。

イギリスで育った親御さんたちは、子供が、いかに素晴らしいかを自慢し、日本人は、いかに大変か、いかに駄目かを自慢する。というのは大げさですけど、そんなところがありませんか?

上には上がいますけど、それでも、子供は、大好きな親に、部下は、上司に、皆の前で素晴らしいと言ってもらえたら、嬉しいですよね。

その嬉しさが、一番のモチベーションだったりする事ありますよね。そのやってることが好きになるきっかけだったりもします。好きだからモチベーションをもてるというのもよくあります。

チームワークは、個人や個性を尊重することで生まれるもので、均一化からでは無く、お互いの得意とするところを伸ばし、不得意とするところは、相当なことがない限り指摘せず、助け合うことで生まれるものだ、という考えが、近代のイギリスにはあります。

相手を尊重、自分も尊重。
そして完璧ではなくても、その時点で最強のチームとなる。

そこに始めて、風通しの良い、良い循環のあるチームワークが生まれる、という考えがあるようです。

相手を受け入れ、自分を受け入れる。自分を受け入れてもらい、相手を受け入れてあげる。お互いの長所を活かせば、お互いの短所をカバーしあえる。

こういう『お互い様』が成り立つと、失敗を恐れない、挑戦する子供が育ち、様々なアイデアや意見を出せる環境になっていき、個々人を活かし合えるようになる、という考えは、ある一定層以上の、モダンなイギリスには根づいて来ています。

つまり、学校の先生個々人の個性も認めていく必要が、当然あります。この先生はこういうタイプ。この先生の得意な部分はここ、不得意な部分はあれ。これは、学校長も後押しして、しかも指導するところですが、当然、30人の子、そしてその親60人のすべての文句をきいてどうこうできるものではありません。

スタンダードが無いと、相性が物を言うことが多々出てくるので、クラスの構成も、先生の担当学年クラスもそこまで考える必要があり、さらに、不平等感の無いようにしていくという、深い配慮を入れていかねばなりません。

決まり、ルールで縛らない、となると、色々と出てきます。

良きところあれば、悪き所あり。

どちらの影響が、どれほど大きいか、を冷静な目で見て、悪き所に目を潰れるか、という所が大事となるのは、間違いありませんし、その悪き所にが環境、文化によっては、良い影響であることもあります。

先生の勤務時間

先生は、休みに学校に行かなければならない事はありませんし、残業をいかに減らすか、先生が満足する学校環境か、は、人間として、労働者として大事にされています。

先生が放課後のクラブ活動を無料で見ることはありません。親はクラブ活動費を払うし、時間外に家庭の事情で先生に連絡が行くこともありません。そこは、役所のソーシャルケアを担当する部門が担当しますし、学校との連携もされています。

家庭内暴力、その他家庭内の大きな問題の兆しが見えたら、学校は、役所に、役所で報告が来れば、学校に行きます。先生に直接行くことは、相当な理由がない限りありません。

しかしながら、イギリスは、イングランドの25年に渡る労働時間の調査結果が下記のように出ています。これは、国が先生たちの残業をへらす努力をしているという中で、どれだけ変化しているか、ということを含めてだしているのですが、



BBC News - Teachers 'have worked long hours for many years'

・primary school teachers work between 47 and 49 hours a week "without any substantial change to this figure"
小学校の先生たちは25年かんさして違いはなく、週47-49時間働いている
・the average hours of secondary school teachers "sits between 46 and 48 hours per week" and has remained "broadly stable"
中学校の先生たちは、変化なく週46-48時間
・a quarter of teachers work more than 59 hours a week
25%の先生は、週59時間以上
・10% work over 65 hours per week
10%は、週65時間
・40% of teachers report that they "usually'" work in the evening, 10% at the weekend and 7% at night
40%は、大抵夕方働く
・teachers in England work on average eight hours more a week than teachers in comparable industrialised countries.
同等の先進国の中(おそらくはヨーロッパを指すと思われます)で、平均週8時間長く働いている

2019年のレポートですが、公立の先生たちは39週働く(夏休み6週、冬休み2週、春休み2週、各学期の中休み合わせて3週)ことになっていますが、それを含めての給料です。先生への負荷、は大きいという結果です。

この比較に日本は入っていないことは間違いないでしょう。
同じ年度の日本の記事で、

日本の教員の勤務時間は世界一! 授業より事務仕事や課外活動で忙しいのは本末転倒では?
日本の教師は世界一忙しい。データを読むときは何に注意して、どこに注目するとよいか

であるように、日本は第一位、イングランドでは、第二位となり、やはり、授業の質に問題がでるのは、日本では致し方ないというような感じです。しかも、勤務日数は、どうなんでしょうか?日本で、昨年ロックダウンがあった時、夏休みを返上、冬休みも短縮、としわ寄せを受けたことは間違いないでしょう。先生たちは、それはそれは、心身ともに大変でしたでしょう…。

その点、イギリスの公立学校では労働組合のおかげで、先生たちがコロナの尻拭いをする必要はなく、皆痛み分けで解決しました。それは、そうです。国家、世界的の一大事。公立の先生に責任はありませんし、それをどうにかする義務もありません。国全体で考え、国が全体を率いて、対策していくべきです。

イギリスでは、学校閉鎖で学業の遅れをひどくとった子供たちに課外授業をあげています。学校によって違いますが、国から特別補助がでて、基本担任が課外授業をしています。無給では当然ありません。しかしながら、全体的に遅れをとったのは、どうすることもできないので、全体的から遅れをとっていない子は、ほっとかれますし、できる子には、より上級の問題を提供されることはなくなりました。

なんでもできるほど、時間はありませんし、一日の時間は24時間と平等にきまっているので、そこにマジックはないのです。やはり、公立、リソース分配が能力の低い人に行くものです。

「仕方がありません。」と、口で言えても、割り切れない感があることは、正直否めません。

ちなみに、イギリスの先生達は、学習プランを立てる時間が、授業中にも与えられます。Teaching Assistantという人が、Year2くらいから二クラスに一人つくので、そのアシスタントが、先生に変わって授業することもあります。また、トレーニングがあるときは、代理のSupply Teacherがやってきて担当することもあり、残業を減らす努力はされています。

また、KS2になると、英語、算数は、担当の先生が決められ、英語専門でおしえる、算数専門で教えるときまり、さらに、レベルごとにクラスわけできるので、効率よく教えることはできます。先生同士で、会議する必要もなく、自分のプランを自分で実行します。1学年3クラスの学校はどうしているのか、ヒアリングできていません。

また、何か気づいたら、其の2として、書いていこうと思います。

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