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シカゴの夜、マネーマネーの変な人に捕まった話

弟の大学卒業旅行という名目で旅費を出してあげて二人で行ったのだが、フロリダのディズニーワールドに行く途中でシカゴに寄った。滞在は一泊のみ。超駆け足シカゴ観光だ。

まぁ色々あって無事にシカゴオヘア国際空港に到着した。空港から宿泊するマリオットホテルまで、一時間ほどかかる。

道中、変な人がいっぱいいた</h2>

まず空港から電車の駅までの通路。延々とトランペットを吹き続ける人がいた。人通りもまばらな薄暗い通路で、これでもかというほどノリノリでトランペットを吹いている。もっと人が多いところを選べばいいのに、なんでここを選んだのか不明である。

どうして延々と吹き続けているとわかったのか?それはこの人が帰り道も同じところで同じように同じ曲を吹いていたからだ。

45分ほどプラスチックの椅子に座って電車に揺られ、乗換駅についた。これまた暗い地下通路を歩いていると、なぜかゴツゴツの黒人男性が並走してくる。えっえっ何こわい、と思ったら、その人が話しかけてきた。

「Are you Japanese?(君、日本人?)」

私はめちゃくちゃビビりながら答えた。隣を歩いている弟はものすごく他人の振りをしていた。なんて薄情な奴だ、誰がお前の旅費を出してると思ってる!しかも無駄だよ!

「オ、オゥ…イエス…」

すると彼はものすごく嬉しそうにイエエエエス!と叫んだ。この時点で私はドン引きしていた。

「Tokyo!!!!(東京)」

そう言ってハイタッチのジェスチャー。なんとなく勢いに乗せられてハイタッチした。思った以上に気を遣ったソフトなハイタッチだった。ちょっと楽しかった。

彼は笑顔で手を振り、去って行った。完全に謎だった。

乗り換えを間違えたりなんだかんだあったのだが、その後無事にホテルの最寄り駅に着いた。そして、ここで一番の問題児に遭遇する。言うなればシカゴエリアのボスである。

キャリーを引いており荷物が多いので、地下鉄の駅からエレベーターで地上に上がった。そして、エレベーターを出てグーグルマップを開こうと、Wi-Fiを繋げたりなんだりと立ち止まっていた。これがいけなかった。

詳しい英語はすっかりさっぱり忘れたので、ここからは日本語音声でお送りいたします。

「どこのホテル?」

「エッ」

突然、おばちゃんがホテルに行くことをピンポイントで見抜いて話しかけてきた。なんだこいつは…慣れてやがる…ヤバイ感じしかしない。

危険を察知したものの、夜のシカゴを闇雲に歩き回るわけにはいかない。隣の弟が早くWi-Fiを繋いでくれることを祈りつつ、私はイングリッシュワカリマセーンとばかりにバリバリの日本語で応答していた。

「いや、結構です。どっか行ってください(原文ママ)」

ここで咄嗟にノーセンキューが出ないあたり、英語でのコミュニケーション力を察してほしい。

おばちゃんは、私が手に持っていたホテルの地図を勝手に覗き込み、I know I know!とある方向を指差して言った。いや、I knowじゃねーよ、お前の言うことなんか知らねーよ。

ここで弟がグーグルマップでホテルの方向を探り当てた。弟はおばちゃんと完全に同じ方向を指差した。絶望した。

歩き始めたものの、おばちゃんは完全に「私について来てる!やったね!」とばかりにめちゃめちゃ話しかけてくる。お前について行ってるわけじゃないから!私はGoogleMapしか信じないから!

なるだけ無視していたものの、センター試験で鍛えたリスニング能力がこんなところで活躍し始めた。おばちゃん曰く、困っている子どもたちのために寄付を集めているらしい。寄付?ふざけんなよ、お前のポケットマネーになるものを寄付するつもりはない!

寄付という英単語がわからないフリをしていたら、最終的にマネー!マネー!マネー!と連呼された。正直怖い。めちゃくちゃ怖い。

「どうする?これ…」

弟が同じくビビりながら私に聞いてくる。本当にお前頼りないな!

「撃たれたら怖い」

全く質問に答えていない。こんな返事をした私も十分頼りない姉だった。

「1ドルだけ渡しとこ…」

弟は財布を取り出し、渋々おばちゃんに札を渡した。

おばちゃんはあれだけ熱心に話しかけていたにも関わらず、チッ、1ドルかよシケてんな、という顔をして、ある建物を指差してから去って行った。それは確かに宿泊するマリオットホテルだった。

「まぁ、道案内は確かだったね…」

おばちゃんが去って行った闇を見つめ、弟がつぶやいた。おばちゃんは暗闇の中へ次の獲物を探しに行った。

夜だったせいか、行きの方が変な人に会った。昼間はまともな人しかいなかった。これからシカゴに行く人は、くれぐれも夜は気をつけてほしい。

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