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デザインサイエンス

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フラーの提唱したデザインサイエンスについて再検証する。
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“E”の問題

■■漠然とした不安「このままでは地球は長くは保たないのではないか–」。 この警告はすでに50年も前に発せられていた。1972年に出されたローマクラブの「成長の限界」という研究報告には、地球の許容量に比べて今の文明があまりに多くの課題を抱えていることが既に指摘されていた。それから半世紀近く経ったが、地球が抱える問題は一向に解決しそうにない。20世紀には私たちはまだ解決すべき問題が何かが見えていた。豊かになるためにどの政治経済システムを採択すべきか。核戦争による崩壊のシナリオを

地球の共鳴

クロアチア生まれの科学者ニコラ・テスラは、その研究の壮大さからマッドサイエンティスト扱いされることが多い。しかしいつの時代も大きすぎる発見は人々をにわかには信じがたい気持ちにさせるものだ。  ニコラ・テスラが考えていたのは、世界中に電力のエネルギーを行き渡らせる方法である。しかもそれは「無線」で行われるというものだ。物理的な電線を一切使わずに電力と情報を送信するシステムを彼は「世界システム」と名付けた。それは19世紀が終わろうとする1899年のことであった。アメリカのコロラド

三元論という補助線

 先日、韓国に居る僕の風水の師匠である金キドク先生に習った三元論は非常に興味深い。彼の三元論は陰と陽と中庸という三元論で世界は成り立っているという補助線を持っている。  宇宙の基本的な単位である「気」は、主に4つの性質を持つ。それは上がる、下がる、広がる、集まるという4つだ。この中で「広がる」という性質が「陽」で、「集まる」という性質が「陰」であるという。こうした原理を理解していると風景へのまなざしが変わってくる。  例えば国民や気候風土の気質にも当てはまる。日本人は元来陰の

5-10まなざしから生命表象学へ

「まなざしのデザイン」没原稿:第5章「心の進化」10    まなざしの高度を変えていけば、風景は様々なスケールへと変化し、実は無関係と思われていたものが総合的に関係しているということがわかる。風景というのは、自然と人間の両方の表れである。風景とは一部分だけ取り出すことはできず、自然も人も全てが関係付いているで具体的な世界の把握の方法である。  しかし近代文明以降の20世紀は、それを細分化して一つ一つに焦点を当てることを選択した。そのことでまなざしの解像度を上げて詳細に把握し、

5-9まなざしを引くと全てが関係している

「まなざしのデザイン」没原稿:第5章「心の進化」09    これまで繰り返し風景とは「場所」と「人間」との関係性で生まれるということに触れてきた。この両者の関係性をより理解するために、私たちのまなざしの高さを頭の上よりさらに高く上げていき、風景を縁取る枠をずっと遠くへ引いてみる。そうすると色々なものと複合的に関係している風景が見えてくるだろう。  まず「場所」というものを考えてみる。場所をみているまなざしを上空へずっと引いていくと、私たちが場所と呼んでいるものは全て「地球」の

新しい生分解性プラスチックの開発

Israeli Scientists Have Created A Biodegradable Plastic That Just Might Save The Planet Dominik Döhler - ZAVIT January 18, 2019iStock 「イスラエルの科学者たちが地球を救う可能性のある生分解性プラスチックを作りだした」  プラスチックの生産は過去最高を記録し続けており、それに伴う汚染は、人類がこれまで地球に及ぼしてきた中で最も破壊的な力の 1

原因不明の地球磁場の活発化

Earth’s magnetic field is acting up and geologists don’t know why Erratic motion of north magnetic pole forces experts to update model that aids global navigation. Alexandra Witze Natureより 09 JANUARY 2019 「地球の磁場が壊れた動きを見せているが、地質学者たちにはその理由がわ

神聖幾何学の系譜01:ピタゴラスの遺産

 神秘学というのは学問であるのか。英語ではオカルティズム、つまり俗にいう「オカルト」と言われるものだ。学問は一般的にオカルトを嫌うし相手にしない。だから日本語訳で神秘“学”とすると少々違和感があるかもしれない。しかし学問とオカルトの境界線というのは実はかなり曖昧なものである。神聖幾何学を考える上で、神秘学の系譜として並行して探っていかねばならないと考えている。  神秘学、つまりオカルティズムとは、本来は占星術、錬金術、魔術など綿々と受け継がれる秘された実践と知識の体系を指す。

拙作インスタレーション「地球の告白」について

■半世紀の地球  2018年の幕開け。ユーラシア大陸の最西端に位置するポルトガルのロカ岬に僕は佇んでいた。海へ沈んでいく夕日を見ながら、遠く離れた地へきた自分と地球のつながりを意識する。この2018年から2020年にかけて、この世界は大きな節目を迎えるだろう。そしてそんな中で自分が身を捧げるのは特定の国の特定の価値観ではないのだろう。そんなことを個人的に考えていたが、そこでの予感が思わぬ形で結実することになろうとは、その時は想像もしていなかった。  2018年から遡ること

クリティカル・パスの解釈 01

■二種類の進化  フラーは人間には二種類の進化の傾向があると考えていた。第一種の進化とは、「シントロピー的で協同的な進化」。そして第二種の進化とは「エントロピー的で利己的な進化」である。文明の発展とは全てこの第一種の進化によるところが大きい。第一種の進化とは、人々を協力させ、統合させる方向に働く進化だ。 この地球上に散らばっているバラバラの情報を集め、それを秩序立てて役立たせていく方向の進化だ。  一方で第二種の進化は人間のエゴに基づいている。なので個々が自分のエゴを助長して