クリティカル・パスの解釈 01

■二種類の進化
 フラーは人間には二種類の進化の傾向があると考えていた。第一種の進化とは、「シントロピー的で協同的な進化」。そして第二種の進化とは「エントロピー的で利己的な進化」である。文明の発展とは全てこの第一種の進化によるところが大きい。第一種の進化とは、人々を協力させ、統合させる方向に働く進化だ。
この地球上に散らばっているバラバラの情報を集め、それを秩序立てて役立たせていく方向の進化だ。
 一方で第二種の進化は人間のエゴに基づいている。なので個々が自分のエゴを助長して、それぞれをバラバラな個人へと分解してしまう方向に働く。あらゆる戦争はこの第2種の進化として生まれてくる。フラーは人類はこの第二種の進化から第一種の進化へと転換できる重大な瞬間「クリティカル・パス」に今にさしかかっていると、1980年前後に書いていた同名の本の中で宣言していた。(「クリティカル・パス」pp381)

■マインドとブレイン
フラーは人間に関してもう一つ興味深い整理をしている。それは人間のブレインとマインドは別のものであるという区別だ。ブレインとは単なる身体の一器官であり、記憶を保持しておくメモリーバンクのようなものとして捉えられている。一方で、マインドとは物事の間を取り結んでいる抽象的な原理を発見する能力をさしているようだ。これは仏教における心と頭の違いに非常に近い概念と考えられる。

フラーのマインドに関する記述を抜き出すと以下のようになる。

「この地上で人間のマインドほど効率よく作用できるものはない。人間のマインドは、多くの宇宙の法則、つまり一般的な科学的原理を発見して来た。」(pp84)
「数学は、人間のマインドの宇宙に対する能力で最も強力な構成要素となっている。」(pp84)
「数学的にのみ表現可能で、全体に相互調和的な法則の普遍性を発見する人間のマインドは、同時に知的にデザインされたシナリオ宇宙をも発見する。」(pp252)
「脳が処理することはすべて高い振動数の物事と関連している。マインドが、そしてマインドのみが、自己言及的に考えられるいずれか一つの原理の内にではなく、相互の間にのみ存在する関係の理解をあつかう。」(pp265)
「純粋な原理で、純粋な原理によるマインドにより機能するとともに、永続的原理のいくつかを純粋な原理によって理解し、客観的に使用できるマインドを備えた人類が宇宙に登場したのは、宇宙システムへの人類の登場と、永続的な原理のいくつか__すべてではない__にアクセスし利用する人類のマインドとによって引き起こされる知識の分裂にもかかわらず、宇宙に永遠に再生的な完全無欠性の原理が乱されずに存続できるかどうかを発見するために、神が果敢にも企てたことなのだということを。」(pp266)
「脳は、特殊な全体システムの特徴を記述し、特定するために情報を整理し、探求と再評価をつづけるマインドがシステムの完全無欠性の原理を求めて検討と再検討を行うときには、一回または複数回の記憶の再現が行えるよう、システムの概念としてそれらをメモリーバンクに蓄える。」(p267)
「マインドだけが原理を発見する能力えを持つ。」(p267)
「二十世紀の夜明けとともに、地球人の諸活動における物理的テクノロジーは、人類に対する警告もなく頭脳で感じる現実から機械装置でのみ理解される現実へと移っていった。その現実は化学的に訓練されたブレインによってのみ把握され、経験によって教育されたマインドでのみ理解、および対処ができるものである。」(pp269)



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