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管楽器の素材に貴金属を使用するという不思議

某フルート専門メーカーが、金を素材とするシリーズの受注を休止すると発表し、一部のマニアが騒いでいるようです。

管楽器、それもフルートに限ってその素材に貴金属である金を使うことが、いつのころからか流行りだしました。
その動きに伴い、今ではプロはおろか一部のアマチュアレベルでも金製のフルートを持つことが当たり前のような風潮が出来上がってます。

某メーカーが、受注を休止するのに至ったのは他でもない素材の金の価格が高騰してきたからです。
金はご存知のように相場制の取り引きになっており、日々その価格は変動してます。

一昨年までは、1グラム当たり4,500~5,000円ほどで推移してましたが、昨年半ばから急激に高騰を始め、最近ではグラム8,000円を超える動きになってます。

フルートの素材に使う場合、14Kが主流でその配合比率は60%ほどです。
フルートは、全体で450gほどの重量があります。
管体部分だけでは、200~250gでしょう。

仮に管体部分だけを14Kで製造した場合、単純計算で150gの金が必要になります。
相場価格にすると、以前は70万円ほどの材料費であったものが、今では150万円の原材料費ということになります。
(実際にはもっとグラム数が必要になります。後述しますが、金は他の素材に比べて倍近くの比重があるからです。したがって、材料費も倍になります)

そんな状況ですから、販売価格を据え置きで設定できないというメーカーの立場から、受注を休止するに至ったのでしょう。
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画像は、某メーカーの金製フルート
あらゆる部分に彫刻も施してあり、楽器というよりも床の間にでも飾っておく装飾品という感じですね。
私には、悪趣味としか感じません。

値段は知る由もありませんが、キーメカニズムを含め全体を18Kで作った場合には、その金素材だけで600gは必要でしょう。(金は他の素材、銀などの倍の比重があります)
相場価格に反映すると、およそ原材料費だけで500万円近くです。

馬鹿らしいですね。
貴金属というものは、楽器を造るためにあるのではなく、しかるべき装飾品に使用して欲しいと思う今日この頃でした。

管楽器の音色は、その管体の素材には左右されないという物理的な理屈があります。 管内の空気柱が振動しているのであって、管体がその響きに関与している比率はほとんどないに等しいものです。 したがって、管体の素材は何を使用してもその音色には一切関係ないということです。 にも関わらず、メーカーが金のフルートを造り続け、かつ販売を強化してきたのは、単に商売として効率がいいからに他なりません。 一本数十万円の銀のフルートを売るよりも、400~500万円の金のフルートを売ったほうがはるかに商売としての効率はいいからです。 また、フルーティストの中にも金の素材に対する信者が多数います。 プロの中にも、金はいい音がすると発言する奏者がいて、金製のフルートを求めるアマチュアが後を絶ちません。 情けない現象だと言わざるを得ません。 管楽器は、その素材によって音色が変わるものではないという物理の法則をしかと認識し、メーカーや真贋のないプロの意見など聞くことなく、適正な価格の楽器を求めるようにしたいものです。


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