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はじまりの物語①



ここは地上のだれもが憧れる理想の世界





ビッグボスといわれる絶対上位の君主がいる


みんながビッグボスのようになりたいと
じぶん磨きに余念がない


より賢く
よりスマートに
『向上心』あるものが認められる、そんな世界


そんな理想郷の片隅にひっそりと立つ木があった
そよそよと風にその葉を揺らし
葉の間から差し込む光は優しく暖かい
木の幹は体を預けるのに丁度よく
そこに立ち寄ったものは戻ってこなくなる
そんなうわさまで立つ木であった

うわさになるのはそれだけではなかった


持つとずっしりと重さを感じる果実をつける
赤くてふくよかな弧を描くシルエットは
その重みを表すのにこれ以上ないように思われる

そっと触れると思いのほか冷たく硬い

その果実を食べると
なんでも『自己肯定感』を手に入れ
上昇志向を捨ててしまうという


みんなが同じ方向を向いているからこそ
秩序が保たれるというのになんてことだ

それに自分の威厳も保てるはずもない


激怒したビッグボスは腹心である蛇に命を下す


その木にやってくるもの達を見張るように


蛇は木を訪れるものどもを観察するようになった

あるときは食べてみるようにそそのかす

果実を食べるかどうかひとつで
ああでもない、こうでもない
なにかしら理由をこじつけて食べるもの
食べないもの、様々だ


ビッグボスのように迷いのない絶対君主に
仕えていた蛇はそのものどもが滑稽で
いとおしくさえ感じるようになった


しかし食べようとしたものはビッグボスに
報告をしなくてはいけない

報告したあとも観察をしなくてはいけない

報告をうけ捕らえられたものは
自分はなんて弱いのかと
自分を責め嫌悪するのである


あの果実に目を輝かせ
どんなに美味しいだろうと想像し
ときには詩を読み
曲を奏で歌い踊る
そんな美しいものどもがである


あるひ、ヘビは決意をした

このもの共と旅にでるのだ、と


行先はあそこがいい

そう、あの未開の地、

天上のものはそこを”路地裏”とよぶ


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これは『なんのはなしです果 』にまつわる物語


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画伯の称号を頂いて作家の称号もほしくなりました。はじめての物語執筆です。
題材は なんのはなしですか です。
最終回を迎えれるかもわかりません。
あの続きどうなりました?ときかれたら
なんのはなしですか と答えます。

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