夢を再び。ファシリテーションルーム3|ラジオの時間②
ーなんのはなしですかー
これはスタジアムに打ち上げたジェット風船、その夢の続きのお話。
前回のお話はこちら
ラジオの遠い日の思い出に想いを馳せまどろむ課長とは違い、灰原はパソコンのモニターをじっと見つめる。このルームの管理人としてどう記録していけばいいのだろうか。このファシリテーションルームは各部署で企画されたプロジェクトの見える化を目的に作られた。
それぞれの部門で縦割りで企画遂行される案件が、進捗や課題、目標等を貼りだすことで他の部門の人間から見た気づきやアドバイス、またそこから共同でやってみたら面白い等の横の繋がりが生まれて大きなプロジェクトになるに違いない、そんな閃きから設置された。記録するためのノートを購買システムで検索する。ノート、ノートと。そういえば、noteというSNSで企業アカウントが増えていると聞く。各プロジェクト員もnoteをしているものが多くプロジェクトもnoteの交流からというケースもあるようだ。
プロジェクトの様子も分かるかもしれないな、登録だけでもしてみるか、ふと灰原はそう思った。このアカウントが各プロジェクトへの窓口となるならば、このファシリテーションルームの意義もあるだろう。企業公式note、そこを目指すのも悪くない。"ファシリテーションルーム灰原 雄三”。登録を終えてほっとしたところにピッコンとメール新着マークが表示される。
送信者 ミルコ
要件 レポートの件
しまった。やはりあの高知のレポートを提出していないことを忘れていなかったのか。大きく一呼吸したあとメールを開いた。
お疲れ様です。
ミルコです。ラジオ作戦の第一回の結果が出ました。
今回は投稿ハガキ採用ならず残念でしたが色々と発見がありました。
次に向けて傾向と対策を作りましたのでお知らせします。
そこに記されたURLを開くと採用された記事をもとにどのような投稿が採用されているのかをまず客観的に見つめるところからスタートしていた。”ミルコ”の”みる”には観るという特性もあるのだな。勢いはそのままに冷静に分析されたレポートだ。ファシリテーションルームの広報記事としてさっそくnoteに投稿してみる。
それとルームの使用申請よろしくお願いします。
使用申請日 2024年9月30日
使用者 ミルコ、寿司ネキ
灰原は困惑した。これは、”ミルコ”君の入力間違いであろうか。寿司はどう考えても”すし”でネキ?ネギだろうか。なんと呼べばいいだろう。”寿司ネキ”君か。ラジオペンネームだったら好奇心から投稿されたはがきをうっかり読んでしまいそうだ。名前もネタとして一枚のはがきを余すことなく料理するのがパーソナリティの仕事としたら、これは腕の見せ所、いや寿司だけに握り所といったところか。しかし残念ながら上手く調理ができないので、ニックネームの由来はぜひ本人に聞いてみたいところではある。
そうこうしている間に、ラジオ作戦についての打ち合わせの日がやってきた。灰原のデスクからは入口のガラス扉が良く見える。”ミルコ”君の後ろにふんわりとした寿司柄のスカートが目に入る。コツ、コツ、と上品な足運びで長机から、”寿司ネキ”のネームプレートを手に取った。入力間違いではなさそうだ。もう一度ガラス扉の前に戻り、使用者ボードに貼りつけ部屋に戻ると、そのまま座らずボードに貼ったメモに目を通す。
「さすが”ミルコ”ちゃんね、投稿についてよくまとまっているわ。」
感心したようにレポートのメモを読んだあと、灰原がこっそり貼ったメモを、まるで指でワルツを指揮するかのように丁寧にマニキュアが施された長い指で軽くはじいてその唇から再び艶やかな声がこぼれ出た。
「わたしね、地元FMだと結構読まれるの。だから北国を代表するFM、AIR-G‘から攻めていこうと思います。大国を狙うならまず周りの小国から崩していくべし。」
「えええー、まじか!読まれるコツあったら伝授してください。FM AIR-G‘で読まれたらファシリテーションルームにすぐ報告だよ。一番のりしそうだね!ウキウキしちゃうよ。」
”ミルコ”君の興奮した声のあと、また艶っぽい声が心地よく響く。
「こつはねぇ.……、テーマに対してちょっとひねった視点を持つことかな。あと、レコメンドミュージックに対しての感想送るとテーマ関係なく読まれる。でも、放送局とか番組スタッフとかによって好みがあるかも。あくまでAIR-G‘の場合ね。全国区だと競争率も高そうよね。」
今、このルームにいるのは2人とマンションの管理人よりも存在感の薄い私のみ。そうでもあるのに、盛り上がっているのは、オンラインでプロジェクトメンバーが共有して次々にコメントがついているからだろう。
メンバーが知りたい、そしてラジオペンネームも。良ければこの新設されたファシリテーションルームにもニックネームを寄せてはもらえないだろうか。灰原は使用申請とともに議事を残すことを許された部分のみ記録に残した。このルームにもラジオ投稿ぐらいみんなの声が届くことを願いながら。
あくる日 ルルルルルー と内線がなった。
何かのプロジェクトの連絡か、3コール目に入る前に受話器を上げる。
「はい、ファシリテーションルーム、灰原です」
「灰原さん、ちょっと保健ルームに来てもらえるかしら。」
これはプロジェクトに関することではないな、いやプロジェクトにかかわることか、課長をはじめ従業員の過労が問題になっている。課長は、今週になって見ていない。ちゃんと休んでくれているといいのだが。
灰原は傾向と対策、ミーティングを重ねた上での今後のラジオ作戦に期待しつつ保健ルームへと向かった。
なんのはなしですか
夢を再び。ファシリテーションルーム もう少し綴ってみることにしました。ただそれには、配慮しなくてはいけないこと、課題も山積みです。すでに失礼のあった方がいらっしゃったらすみません。この物語に登場頂く方にはnote名ではなくニックネームでと思っています。いつか、noteの中で路地裏というコミュニティを作り皆でワクワクすることを想像してこんなことを語り合い行動したんだよ、という記録として外に紹介することがあれば提供したいと思っています。なので、自分たちの内輪の話を仲間うち以外に公開されるのはちょっと、というのであれば掲載したものでも削除いたしますのでお知らせください。
ここまでの説明ができておらず、出演いただいておりますコニシ課長、ミルコさん、寿司ネキさん、感謝いたしますとともにどうぞ遠慮なく申し出て下さいますようお願いいたします。
またこの物語はフルレット私一人創作物ではないと考えますので、本編の他、オムニバス的な視点の違う人物のお話の章があっても面白いと思っています。どの人物もあくまでファシリテーションルーム内のニックネームで綴っていただくという形式であれば、物語の中に包括したいと思いますのでお知らせください。もちろんそれぞれの思う向き合い方、進む道が一番ですのでそれも無理はお誘いいたしません。自走するルームです。走りたいと手を上げる方は大歓迎いたします。
長いあとがきになりました。まだ続きます。
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