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文学フリマ東京38に出店しました

文学フリマ東京お疲れ様でした! ブースに来てくださった方々、本当にありがとうございました。 日々の宣伝ツイートへのいいねなど、とても励みになりました。通販はできるだけ早く開設するようにするので、少しお待ちください。

これまでずっと一般参加者でしたが、今回初めての出店で、準備中や当日に思ったこととか、これからどうしようかとか、今考えていることをだらだら書いてみます。


出店の経緯

簡単に言うと「憧れ」です。Twitterで物書きを始めて、文学フリマというもの自体を知ってからずっと出てみたいと思ってました。実際に、本屋では売られていない、個人で作られた本を手にしたときには、何とも言えない感動がありました。その人の世界が詰まった本に、そして売っているブースやその人たち自身に、私も近づきたいと思いました。
それが丁度1年前の文学フリマ東京でした。1年後の文フリに出店するのを目標にして、今回の文フリが出店募集を始めてから、すぐに応募しました。しかし、実は応募したその時は、あまり乗り気ではなかったりします……。


お前に何が書けるんだよ?

その後大阪と京都の文フリにも行ってみたのですが、出店をかっこいいと思うのと同時に、「私が本なんて作って売れるのか?」という、「憧れ」に「不安」が迫ってくるようになっていました。
大学院生の頃と比べて、社会人になってからは半分惰性で書いていました。あの頃より、「書きたい!」と思う気持ちが薄い。そんな私が何か書いたところで、需要があるのかわからない。他人にも、自分にも。
それでも出店したのは、「まぁそのうち大丈夫になるだろう」という間違った推測と、「締切がないといつまでも動かない」という性格を踏まえた判断でした。それと、やっぱりあのとき抱いた「憧れ」が強かったんです。これからは仕事や他のプライベートのことで、あまり時間がとれなくなるかもしれない。「やりたいと思ったことはどんどんやる」と言い聞かせて、応募しました。サークル名と紹介文は、そのとき適当につけて、それから最後まで一度も変えませんでした。


ひび割れた手のひらの中

文フリに応募したのが、冬に差し掛かっているときでした。コロナが流行って、手洗い消毒の徹底が喚起されるようになった数年前。私も罹ったらどうしようという不安から、今までこんなことなかったのに、手を必要以上に洗ったり、アルコールで消毒するようになりました。
今でもその癖が、潔癖症が抜けずに、特に冬場寒くなる頃には手が赤切れまみれになっていました。ちょっと手の皮膚を伸ばしただけで、パチッとちぎれて、赤い血が溢れてくる。そんな手のひらの中、握ったスマホで、同じく細かい傷が入った話を綴っている。
あまりサークル名らしくないですが、個人的にはこれが正解だったと思っています。


何を、いくらで売るか?

最初は、大学院生までの作品集と直近1年の作品集、2冊つくれればいいかなと思っていました。結局それに短編小説集を付け足した、計3冊を売っていました。「Twitterやnoteのまとめだけじゃなくて、文フリのために何か書き下ろしたいな」とは思っていましたが、まさかそれが丸々1冊になるとは……。

価格について。A6、200ページ超えを800円で売ってました。小説集は166ページで700円。来てくださった方にも「安くないですか?」と言われましたが……そうです、超赤字です。少し値が張る印刷所にお願いしたのと、早割を使わない、ギリギリの入稿だったからです泣。元をとるとしたら、多分2倍近い値段で売らないといけなかったです。
こちらは文字を書いてご飯食べている訳でもないし、「色んな人に知ってもらえたら嬉しい」という気持ちで挑んでいました。1000円は超えないようにしよう。これに1000円払うなら、商業作家や他の出店者の本を買った方がいいだろう……と、自分の作品の価値を考えての値段設定でした。


作品① 『私の小説』

『私の小説』A6 224P


闇の理系大学院2年間で書いた、エッセイと小説集。表紙は某大学某キャンパスで撮影したもの。大学院生です/大学院行ってました、って声をたくさんかけてもらえました! あの世界にいた人たちは、みんな友だちです。「研究室行きたくない〜って途中からずっと書いてます」という雑な説明を聞いて下さって本当にありがとうございます。サンプルの試し読みで買っていただけることも多くて、とにかく感謝です。

個人的に一番内容がきついと思う話を、わざと一番最初にもってきました。終わりであり、始まりでもある話。それを良いと思ってもらえたらなら、これ以上ありがたいことはないです。


作品② 『泳げ海月』

『泳げ海月』A6 252P


社会人1年目(少し2年目も)に書いた日記と小説。完全に表紙のビジュアル勝負でいきました。表紙褒めてくださる方が多くて嬉しかったです。サンプルも、3冊ある中で一番手に取ってもらえました。やっぱりビジュアルは大事ですね。クラゲは京都水族館で、スマホで撮りました。データはcanvaで作りました。
ほとんどnoteの再録で、もう少し色が出せたらよかったなと思っています。日記本の個性、か……。小説も、もう少し載せられたら良かったのですが。

あとがきにも書いたんですけど、タイトルの『泳げ海月』、「日々を漂うだけじゃ駄目だ、ちゃんと泳げ」って言葉が、何かやらなきゃ、進捗を生み出さなきゃ、成長しなきゃ、みたいな強迫観念に繋がっていたのかもしれないです。院生の頃から変わっていない。マイペースに、できるだけ泳ぐのが一番良いんですよねきっと。


作品③ 『生活』

『生活』A6 166P

正直に言うと、もう少し売りたかった! まぁノンフィクションの島にいたし、表紙も本当にギリギリに作って超シンプルですしね……。でもこのシンプルさが、結構好きだったりします。見本誌コーナーで読んでくださったのか、ピンポイントで購入してくださる方が何人かいて、それはめちゃめちゃ嬉しかったですね。
タイトルがいつまで経っても決められませんでした。どうしようと頭を抱えていたときに、パッと「生活って言葉入れたいな」と思いつきました。当時聴いていた曲に「生活」って歌詞が入ってたのもあるかもしれないです。
「生活」って言葉、いいですよね。誰もが常に持っていて、その一つ一つの形は全く異なる。生きる活動。彼の生き方を描くのは、良い思い出になりました。

半分くらい実話です。自分嫌いが加速して、自分のことが日記に書けなくなったときに、なぜか他人の日記として書いていたのがこの小説集の始まりです。売る時にちょっとした仕掛け(?)をしていました。最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。


個人サークルとコミュニティ

何かのサークルに所属している訳でもないし、フォロワーは多くはないし、リアルで繋がりのある人には絶対に出店してるなんて言えないし。基本的に終始ぼっちでした。わざわざ私のブースまで足を運んでくださったFFのみなさん、本当にありがとうございました。
開始30分、全く売れず。両隣のサークルさんに知り合いが現れ、立ち話の空間ができている中で、私は何か間違えてしまったんじゃないかと、ちょっと泣きそうになっていました。繋がりが少ない私が、一人で、東京で、一体何やってるんだ……。
そんなときに初めてのお客さんが来てくださって、たどたどしい説明をした末に買ってくださったときには、もうとんでもなく嬉しくて。その後は立ち寄ってくれる方が増えていって、装丁とか写真のこととか、本とは直接関係の無い話もたくさんできました。本も、自分が想定していたよりもたくさん売れました!!

今回は「色んな人に知ってもらう、たくさんお話する」を目標にしていました。元々自分のことを知らない人と、自分のこと、他愛のないことを話す。この経験ができて、本当に良かったと思っています。
逆に、もし次出店するとしても、何か(大きめの)コミュニティやサークルには属さないなと思いました。正直、閉鎖的な内輪ノリがあまり好きではありません。もっと広く、自分のことも知ってほしいし、他人のことも知りたい。仲間内で盛り上がるより、個人的には文学フリマはそういう場として使いたい。そう思ったら、文フリ開場時点では後悔していた一人ぼっちサークルも、悪くはないなと今では思っています。


個性の消失

今回は特に、「大学院」というワードでブース来てくださる方が多かったです。「大学院」が、個性の一つになるんだなと実感しました。「社会人一年目」も、日記を説明する上でやりやすかったです。
さて、今はしがない社会人二年目です。もう大学院のことは書けません。社会人一年目の新鮮さも失いました。恋もしていない。今回売り出していた個性が消えました。
日記は、最近書けていないけれど、またそのうち書く気が起きるとは思います。「文章が読みやすい」と褒めてくださる方もいました。何も無い訳ではない。でも私は私に何とラベリングすればいいのか? 終わったあとに残った、達成感と喪失感。
もちろん、人にウケる、売れるようなものにする、という前提は無くても良いのです。書きたいものを書けばいいじゃない。けれども、そこに私だけの価値を、オリジナリティを付けたいと思ってしまいます。ただ書きたい気持ちが湧いてくるのを待っていたら、書く頻度はまたかなり落ちそうな気がしています。

一人で、暗い話ばかり

過去作の編集作業や新しく小説を書く中で、あまり自分の根っこがこの数年で変わっていないんだなと気づきました。ちょっと暗くて、心配性で、後ろ向きな思考ばかり。単独行動の方が得意。頑張らない自分が嫌いで、立ち止まることが怖くて、そうして強迫観念がどんどん強くなっていく。何かしなきゃ。動かなきゃ。成長しなきゃ。大学院生の頃と比べたらかなりマシになった方だと思いますが、それでも抜けない、一生付き合わないといけない性格たち。
そんな「私」との生活は、まだしばらく続きそうです。これを個性と呼んでいいのかわかりませんが、そんなフィルターを通して見た世界を、残していきたいような気がしています。文学フリマに出店したことで、既に失ったと気づいたものと、実は持っていると知ったこと。そして新たに得られたこと。今の日々が「つまらない生活」かどうか、「つまらない生活」にするかどうか、書いてから決めなければと思いました。これでも、こんな私でも、物書きなのです。


これから先のこと

物書きとは直接関係ないのですが、近々作詞作曲を本格的にやってみたいと思っています。音楽が好きです。最近社会人バンドを始めました。言葉だけでなくて、音楽で何が表現できるのか。一からの挑戦ですが、頑張りたいと思います。

結局物書きとしては、別に大きくは変わらないのだと思います。プロの作家になりたい訳ではない。何かの文芸賞には応募しない。時々Twitterとnoteを更新して、他の人の作品を読んで、マイペースにやっていく。しばらく出店の予定はありませんが、また気が向いたときに本を作るかもしれません。何かお声がけいただけたら話に乗っかります(私からも何ができたらいいのだけれどと思ったり思わなかったり……)。

文学フリマに出たことで、色々なことに気がつけましたし、自分を一度振り返る良いきっかけになりました。最初は不安でしかなかったですが、終わってみれば出店できて本当に良かったです。またTwitterやnote上で、そしてどこかのイベントか何かで、お会いできたら嬉しいです。
長くなりましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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