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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 4/29号」

日銀政策据え置きで、円は157円台に
注目の日銀政策決定会合が26日終了した。足元の円安加速を受けて市場の一部では国債買い入れ減額などの対応措置を警戒する声も出ていたが、日銀は2%の物価安定目標の実現に向けて経済・物価支援の継続姿勢を改めて示した。日銀が金融政策の現状維持を決定したことを受けて円安が進行。植田総裁の定例会見にも目新しい内容はなかった上、この日発表された米経済指標を受けて円売りが一段と強また。

NY時間帯に入り、円は対ドルで一時157円79銭まで下落。財務省の神田財務官の過去の発言から介入が意識される水準も割り込んだ。日銀の政策据え置きで、円安を止めるための介入を待つ状態に逆戻りだしたことになる。しかし、単独介入は難しくなっている。協調した動きでない限り、いかなる介入も無駄だろう。結局NY市場では円は158.33円まで売られた。
一部の為替専門家の間では、日銀の政策発表後に円が安値更新へと動いたのは正当化されるものであり、為替介入をしたとしても成功する見込みがないという意見が目立った。

 政策発表後の記者会見で植田総裁も円安の重大性を大きくは扱わなかったことから、日本が円相場傍観の政策を続けていることに、ようやく市場が気づいたのだろう。

27日スクランブル「為替介入「催促」する日本株 海外勢、運用改善に期待」

27日の日経新聞のコラム「スクランブル」では「株式市場では介入を期待」という記事を載せている。海外投資家にとって弱い円はドル建て運用の悪化をもたらす。ドル建て日経平均の直近の高値は3月21日の270.36ドル、4月26日は243.11ドル。つまり10.08%の下落。一方円建て日経平均は翌日3月22日が高値で40,888円。4月26日は37,934円。下落率は7.22%になる。ドル建て運用の海外投資家にとって悩ましいところだ。
かつて、GW中は海外の為替市場も円は薄商いのため、相場の変動が大きくなっていた。昔は円高への警戒感が強かったが、今回は日本の祝日であることも相場の動きを誘発し、薄商いの中で円売りのボラティリティーが上昇するリスクがある。
 財務省は3月28日から4月25日までの介入実績を30日に公表する。ただ、日銀政策決定会合があった26日に介入したかどうかのデータ発表は来月31日まで待たなければならない。

米GDP下振れも米金利上昇
通常の決算ラリーはインデックス膠着感、個別株乱舞のイメージだが、今回は方向感なくインデックスも乱高下している印象だ。証拠はないが、1-3月相場で儲けたヘッジファンドが利益確定に動くとともに足並みがバラバラのため、との印象を受ける。25日発表の4月第3週投資主体別売買動向で、海外投資家の売り越し額は現物5925億円、先物との合計は1兆1347億円の売り越し(1兆円超えは3月最終週に次ぎ2回目)だった。買い向かったのは個人で現物株9086億円の買い越し。

第1四半期米GDP速報値は年率換算前期比+1.6%、市場予想の+2.4%を大きく下回った(前四半期+3.4%)。個人消費は+2.5%と底堅かったが、貿易、政府支出、在庫などが押し下げた。通例なら米金利低下に働く方向だが、インフレ指標が高止まり、イエレン財務長官が上方修正される可能性があるとコメント、週間新規失業保険申請件数が前週比5000件減の20.7万件と逼迫感を示したことなどから2年債利回りは5.0%台、10年債は4.70%台に上昇。利下げ開始期待は9月から12月と見る向きも出ている。ドル指数は全体としては0.21%安だが、円安基調は変わらず。投機筋の思惑が交錯している。

米株の決算発表では発表後メタが11%安、IBM8%安。時間外でインテルも8%安。4-6月期減収見通しのキャタピラーが6%安。1-3月期赤字が予想の3倍に膨らんだレンタカー大手ハーツは25&急落、上場来安値。1万台予定のEV車の売却を急いでいるが、修理費が高いうえ、テスラの値下げが圧迫している。
反面、時間外でアルファベット(グーグル)が市場予想上回る決算(クラウド+28%など)と初配当(0.20ドル)を発表、13%高。マイクロソフトもAI効果で市場予想を上回り4%高。SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)+1.96%を押し上げ、半導体関連の感度が高い日経平均先物の切り返しにつながったと見られる。

日本株で意外な材料は淀川製鋼所。アクティビストの圧力を受け、25年度までの中期計画で配当性向75%以上、年間配当200円以上を目指すと発表。従来は30%、50円以上。PBR1倍以上を目指すよう提案・圧力を受けている。また、アジア・コーポレートガバナンス協会が日本企業に政策保有株縮減、原則保有ゼロを提言した。日本市場への外圧は続いている。

当局の介入なく、フラフラッと円安
これまで155円手前で銭刻みの攻防を続けていたドル円が、特に大きな材料の無いまま、先週、日銀政策決定会合前に155円台に乗せてきた。
キッカケは、行使価格156円、1ヵ月物の円売りオプション、僅か3億ドル規模の円売り需要とか、日銀会合前の当局の介入はない(前回22年9月22日の介入は日銀会合開催中)との見方が広がっていたこと(25日からの会合前に155円を付けたかった)、前日24日の米国での690億ドルの米2年債入札、700億ドルの5年債入札、25日は440億ドルの7年債入札で米金利が上昇圧力を受けており、米10年債利回りは4.65%前後に上昇したこと、などと見られている。

大きなフシ目は160円攻防と見ているので、155円は通過点だが、今年度の円高反転シナリオが狂ってくる。24日今年度運用方針説明会を開催した日本生命のドル円見通しは120-150円、年度末想定135円。いつも極端な保守的想定であまり意味はないが、金融界、産業界の目線を示す。同日、決算発表を行ったファナックの為替前提もドル円135円、ユーロ150円。一般的にはドル円140円前提が多いと見られるが、株式市場がどの程度円安分を織り込みに行くか、悩ましいところ(一般的には今期8%増益を織り込んでいるとされる。前期推定15%増益に迫れれば企業業績が株高要因になる)。

国内経済ではインフレ警戒が強まると考えられる。ガソリン補助金は延長されているが、抜本的なガソリン税見直し論議が強まる公算がある。電力料金は補助が打ち切られ、引き上げられた再エネ賦課金への批判が一段と強まる可能性が高い。

3月のコンビニ既存店売上高は前年比+0.4%、それに対しスーパーは+9.3%。値引き販売を行わないコンビニ(7-11などが値引き販売に乗り出しているが)に対し、特売を行うスーパーに消費者が移っていると見られている。いわゆるインフレ防衛心理、賃上げ効果を吹き飛ばすので何処まで強まるか注目される。

解散総選挙や秋の総裁選を睨み、自民党内で「金融引き締めケシカラン」論が出ている。介入よりも日銀利上げの方が円安抑制に効くと見られるが、抑制圧力も高まろう。
生保業界を中心に、外債・外株投資の含み益は膨らんでいる。筆頭は外為特会。このままいけば含み益は50兆円を突破する見込み。有効活用論が高まろう。最も望ましいのは減税減資での活用だが、財務省は抵抗すると見られるので、岸田政権で議論ができるかどうか。
一般的に、為替相場が荒れだすと目まぐるしい展開が想定されるので、その面でも株式相場は難しくなると思われる。

購買担当者景況指数™(PMI ™)とは?

PMI統計からみて欧州回復
普段、あまり重視される月次統計ではないが、4月PMI(購買担当者景気指数)統計が発表された。ユーロ圏が強く(株高)、米国が弱い(金利抑制、ドル弱含み)結果で市場マインド改善に寄与。

ユーロ圏総合PMI4月速報は51.4,3月の50.3、市場予想50.7を大幅に上回った。約1年ぶりの高水準。牽引役はサービス部門PMIで52.9(3月51.5、市場予想51.8)、製造業は逆に45.6に低下(3月46.1,予想46.6)した。製造業の新規受注が弱いが、総合雇用指数は上昇した。ECBの6月利下げ観測は維持されたが、その後の連続利下げ期待はやや後退した。牽引役はドイツ。独総合PMIは50.5,前月47.7から急上昇、10か月ぶりに分岐点50を上回った。サービス部門が53.3で牽引。代表は22日に好決算を発表したソフトウェア大手SAPで、第1四半期のクラウド事業売上高は前年同期比24%増だった。従業員8000人のリストラ計画を発表しているが、AI人材の強化と受け止められている。独株DAX指数は+1.58%。

米総合PMIは50.9に低下(3月52.1)、サービス業50.9(同51.7)、製造業49.9(同51.9)ともに低下。25日に第1四半期GDP、26日にPCE(個人消費支出)統計を控えているため、大きなインパクトはないが、債券市場で金利抑制的に働いたと見られる。10年債は4.596%、2年債は4.925%。

米株市場のマインド改善には、市場予想上回る決算が相次いだことが大きいと見られる。飲料大手ペプシコ、宅配サービス大手UPS、決済システム・ビザ、自動車大手GMなど。注目のテスラは減収減益決算だったが、新型モデル発売前倒しを発表し、時間外取引で6%高。

円は対ユーロで16年ぶり安値の165.71円を突破、日銀政策決定会合の結果を受けて169.15円で週を終えた。
訪米した麻生氏と会談するトランプ氏が円ドルに言及、「米国にとって、製造業など大惨事」と発言。製造業復活を目指すトランプ氏がドル高円安の是正を求める可能性はある。
なお、インドPMIは62.2,14年ぶりの高水準。日本(auじぶん銀行発表)は49.9(3月48.2)、分岐点50を11ヵ月連続下回っているが安定している。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

一般社団法人FLSG
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