使命

使命

僕はかくれんぼの鬼になる。
長い長い、かくれんぼ。
僕の必死の「もういいかい?」に対して、
機械的な「まあだだよ」が聞こえる。
何度問いかけても「もういいよ」は聞こえてこない。
ただただ平坦なトーンの「まあだだよ」が
同じタイミングで帰ってくるのだ。

僕は人間に対してかくれんぼをしているのだろうか?
それとも、誰とかくれんぼをしているのだろう?
僕が踏みしめているのは地上なのか?
それとも空間にほんの少ししか無い安定した場所なのか?
どこが上なのか、下なのか?
何もかも理解出来ない時がある。
ただ記憶の中には、血の通っていない変人ばかりが
周りにいたような気がする。
僕はまだ目をふさいでいる。

「もういいかい?」「まあだだよ」
「もういいかい?」「まあだだよ」

おもしろくもなんともない。
遊びのようであり、ただの苦痛。
鬼になった僕が悪いのだ。
誰も鬼になろうとしなかった理由がわかった。
「もういいよ」が聞こえないと何もできないこのルール。
時間だけがただ、何も意味をなさずに過ぎていく。

僕はもう一回問いかける。

「もういいかい?」

今度は少し間が開く。
沈黙の中、僕は期待に胸を膨らませる。
僕が目を開いたらどういう景色が広がっているのだろう。
瞼の奥の暗闇は暗いようで明るくて、明るいようで暗くて。
色とりどりの花は咲いているのだろうか?
僕の靴底の感覚は薄れていて、
地面が草原だったかコンクリートだったかも定かではない。
そうだ、今日はあの人に会いに行こう。
会いに行って、ステキな笑顔をみるのだ。
世界が幸福になるような、そんな笑顔をみるのだ。

すべてが期待と希望に充ちあふれ始めた時に、

「まあだだよ」

僕はまだ、暗闇を見続けなければならない。