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せっせと通った千駄ヶ谷

JR総武線の千駄ヶ谷駅の前に、東京体育館がある。メインアリーナでは様々なスポーツイベントや大会、ときにはサーカスなどが行われる。さらに別館には、サブアリーナやプール、トレーニングジム、陸上トラックや多目的コートなどがあり、スポーツをする人たちの聖地みたいな場所だ。

そんな東京体育館の一角にある会議室で、独立してから8年ちょっとの間、たくさんのイベントを開催してきた。スポーツの団体でなくても、一般団体として登録することで利用ができるのだ。

覚えているだけでも、フロー・シンポジウム、平田オリザさんのワークショップ、コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップ、グラフィックファシリテーション講座、ワールドカフェ、AI&OST、マインドフルネスジャーニー、ストーリーテリング・ワークショップ、表現アートダイアログなど(カタカナが多いな 笑)。何度も繰り返し開催したものもある。開催頻度と活動期間から考えると、おそらく東京体育館だけで50回以上は何かしらを実施してきただろう。


朝は9:00に入り口があくので、いつも10分くらい前に行って、プールやジムに行く人たちと同じ列に並ぶ。だいたいがスポーツウェアに身を包んでいる人たち、子どもたちで、その中に模造紙の箱を抱え、海外旅行に行くようなスーツケースを持った普通の恰好をした私たちが並んでいる光景は、なかなか不思議というか、場違いな印象だったろう。


特に印象的だったのは、平田オリザさんのワークショップを開催したときだ。会場を予約していた開催予定日の1週間前に来ていただけることが決まって、あわてて参加者の募集を始めた。一晩で満席になり、びっくりしたことをよく覚えている。

そのときの様子はこちらに詳しくレポートしている。

私は何度も平田オリザさんのワークショップを受けているのだが、毎回感動する。無駄のないトークと洗練されたワークで、参加者が楽しく遊んでいるうちに、深い気づきを得てしまうという、魔法のようなことが起こる。そういう密度の濃い、ワークショップの鑑のような場だった。

3日間のコミュニティ・オーガナイジング・ワークショップのときは、左手首を骨折していたので、不便を感じながらあれこれ準備をし、無事に終わってほっとした。

このときに学んだストーリーの語り方には、大きくインスパイアをされた。


しごと総合研究所の山田夏子さんに講師をお願いしていたグラフィックファシリテーションWSでは、いつも大量のプロッキーを用意し、

同じく大量に使う模造紙やそのほかのもろもろの備品の準備など、ロジスティクスが試された。

グラファシWSの後はだいたいいつも、近くの「猪八戒」という中華屋さんで、よく飲み、よく話した。店内の床が油で少しつるつるしていて、何度も転びそうになったし、実際に転んだことも何度かある。


それ以外にも、数々のワークショップやイベントを実施した、思い出深いというよりも、もはや自分の原点のような場所だ。そんな自分のホームグラウンドのような東京体育館だが、実は一番古い思い出は中学2年生の時にさかのぼる。

中学校のとき、私はバレーボール部に所属していた。同じクラスの子たちがみんなバレー部に入るというので、深く考えずマネして入ったのだが、未経験なりに、毎日休まず真面目にがんばっていた。

当時はバレーボール人気がすごい時期だった。特に男子バレーは、熊田康則選手、川合俊一選手、井上謙選手などスター選手の人気が全盛の頃だった。

その全盛期に、友達と東京体育館に実業団の試合を観に行った。千駄ヶ谷駅の改札を出ると見えるメインアリーナの前はだだっ広いタイル敷きの広場のような空間になっていて、メインアリーナの入口には、入場を待つ列ができていた。

友達と二人でその列に向かって歩いていると、右手から異様なほど背の高い人が2人、ジャージ姿で歩いてきた。190cm以上ある人を間近で見たのはそのときが初めてだったので、しばらく脳が混乱していた。

少し落ち着いて顔を見ると、当時私が好きで好きでしょうがなかった、井上譲選手と、あとは誰だかわからない選手が、歩いてメインアリーナに向かっているところだった。

背の高さだけでなく、いつもテレビで見ている憧れの人が目の前にいることにも驚いて、眺めるだけで何もできず「ほえ~っ」と見とれている間に、井上選手たちは通り過ぎて行った。

他にも気づいた人たちが、2人を取り巻くようにして見ていたが、「キャーッ」と人が群れてしまうような騒ぎにはならなかったと記憶している。

もちろん、その後の体育館での試合も、大興奮だった。何よりあのサーブやスパイクの音の大きさと、ボールの速さ。遠くの観客席から見ていても、すぐそばにいるような迫力で聞こえてくる。さらに、どうしてあんな速くて強い球を受けられるんだ、とバレーをやっているからこそ余計に驚愕した。それくらい中学生のバレーとは、何から何まで違っていた。


その時以来ずっと、ゆるめのバレーボールファンとして、ジャニーズアイドルと抱き合わせでフジテレビで放送されている試合も、なんだかなーと思いながらも大体見ている。女子の試合も男子の試合も、両方とも見ていておもしろい。日本人の中にも、石川選手はじめ世界レベルの選手が増えてきて、本当にいつも見ごたえがあるなあと思っている。


さて、そんな東京体育館は2年前から改修工事に入り、改修が終わっても、東京オリンピックが終わるまでは利用ができない状態になっている。だから、少なくともあと1年とちょっとは、せっせと通う日々は戻ってこない。

加えて、アフターコロナ、ウィズコロナの時代には、リアルな講座やワークショップがどうなっていくかはわからない。もう二度とそういう場を主催することはなくなるかもしれない。

それでも、今しばらく自分が懸命に場づくりをしてきた思い出を味わいながら、新しくなった東京体育館をまた利用できる日を楽しみに待とうと思っている。

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