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#21 【blog クリップ】 トマトを育ててみてわかった、16の教え。

”♬ you like (say)トメイトウ、I like (say) トマート ♬”
古い映画「シャル・ウィー・ダンス?」の中の曲 ("Let's Call the Whole Thing Off")。今でも発音が違う時、アメリカ人が口にするフレーズ(like の代わりにsayを使います)。
発音はともかく、アメリカ人はトマトが大好き。

種子のカタログをご覧になれば一目瞭然ですが、100種類以上もの品種が並んでいます。専門のカタログ(Tomato Growers Supply. com など)もあるくらい。

試しに、この種子のカタログで、エアルームトマト(何世代にもわたって種子を採取し、受け継がれてきた固定種)、そしてビーフ・ステーキ系、赤、を選択しただけで、3ページ。これはほんの一部です(!)。
ビーフ・ステーキ系ってその名の通り、肉厚でジューシーなんですよ。

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形、質感はもちろんのこと、味も、糖度、酸味、風味など、品種による個性は、千差万別。
用途によって、違うタイプが使われることがあります。

ブランディワインやビーフステーキといった大きい品種は、厚めにスライスしてサンドイッチに。
サン・マルザーノのようなプラム形のローマ系は、パスタソースに。たくさん作って瓶詰めに。
など、など。

今回は、マーガレット・ローチさんのウェブサイト 'A Way To Garden' から、「私がトマトを育てて学んだ、16のアドバイス」についてのブログをご紹介します。

日本人がトマトの品種を選ぶ時、育てる時のアドバイスと比較してみる面白いと思います。目の付け所が違ったりします。
日本の農家の方のアドバイスは、とても細かく、どうやって植えるとか、どこを芽かきする、など、丁寧ですね。

アメリカ人もそれなりに指示はありますが、もっとザックリして、お国柄、「成功への早道」っぽくなりますね(笑)。
一番大切なポイントは、どうやってトマトを楽しむか、ですから。

(下の記事は、育て方の手順ではなく、また、あくまでもアメリカ人向けのアドバイスですので、日本向けには、調整がいるかと思います)

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(夏のファーマーズマーケットは、トマトでいっぱい。食べ比べるのも楽しいです)

1.スタートは、自分でタネをまいて育てるか、地元で育てられた苗を買うこと。

大きなホームセンターで売られている苗は、もしかするとお住まいの地域の耐寒ゾーンより、暖かいゾーンで育てられたものかもしれません(耐寒ゾーンについては、こちら#3)。
暖かい地方の方が、越冬できる病原菌による病気(青枯れ病)が発生しやすい場合があります。


2.育てる地域によって、美味しくなる品種が違う。トマトの味は、60%遺伝子、40%が育つ環境。

トマトの味は、60%がその遺伝子の持つもので決まります。
もし、アメリカ北東部で品種改良されたトマトをその地域で育てたなら、100%そのトマトの個性を引き出せる可能性があるということになります。

逆に暑いフロリダ州に向く品種は、ニューハンプシャー州など北部では、本来の味は出てこないかもしれません。

化学肥料や農薬が使用されたトマトから採れた種子とオーガニックで育てられた種子にも違いがあります。

残り40%は生育環境。
風味を良くするために、以下のような生育環境を整えるよう努力しましょう。
・日がよくあたり、あまり雨の降らないところ
・水やりに頼らなくても、湿度を保てる、塩の害の少ない土
・高い気温と地温、昼と夜の気温差がある

3. F1改良種と固定種を両方植える

風味は、エアルーム(heirloom;昔から育ててられている伝統的な固定の品種)もしくは、固定種(種子をまくと同じものができる)の方が上かもしれませんが、病気に弱い場合もあります。
病気、ウイルスに耐性が強い、改良されたF1の品種を育てておくと、弱い品種が万が一うまく育たなくても、バックアップになり、安心です。

カタログの写真が綺麗だから、という理由ではなく、耐病性、地域にあっているか、収穫までの日数(特に北の地方では重要)などもよく調べて決めること。

4.固定種には、入手先によって品質が異なる

毎年採取される種子は、何世代にもわたって受け継がれているものなので、種子の販売ルートによって、かなり違いがみられます。
業者によっては、どの特徴をターゲットにするか、種子を選ぶ基準が違うこともあるのです。

5.翌年の固定種の種子の選別は、今年種子を蒔くところから始まっている。

やっと手に入れた固定種の種子。
親株と同じ株を来年も育てたるためには、ガーデナー、ファーマーの責任もあります。
その地域にうまく順応できる苗を選ぶこともポイント。

・種子をまくときは、大きな粒の種子をまくこと。
・発芽が遅いもの、弱いものは、すぐにはじいていくこと。
・成長段階において、その都度、強いものを選んでいくこと。

6.冒険してみるなら、F1改良種を「解体」して、自分だけの品種を見つける

F1改良種から採取した種子からできたトマトの苗は、親と同じものとは限りません(メンデルの法則です)。でも、それをあえてやってみる、というのも可能です。

改良種から採った種子を翌年、蒔いて、5、と同じ要領で選抜していく。
そうすると、自分がトマトを育てる環境に、一番適応する苗が残っていきます。そしてそれは、あなた自身オリジナルの品種というわけです。

7.土壌の中にいる病原菌からトマトを守るためにできること

最初の一歩は、土壌にいる病原菌に強い品種を選ぶこと。

8.地面をマルチシート(黒いビニール)で覆うことのメリット


ビニールは地温が上がりすぎる、という方には、ワラなどもおすすめだそうです。

・地温を上げてくれる
・雑草の繁殖を抑える
・雨はねで、土にいる病原菌が葉につくのを抑える(地面の近くの葉を取り除くのも役立つ)

9.青枯れ病、胴枯れ病を防ぐ


誰もが避けたいこの病気。この病原菌はフロリダでは冬越しでき、ある一定の生育条件が重なると病気が発生します。

植物の病原について政府と連結した、コーネル大学のホットライン、青枯れ病調査機関が作成、随時更新する、青枯れ病マップ、などをを利用して、常に情報を得るようにしましょう。

・ジャガイモを育てる人は、できるだけ信頼のおけるところから購入すること(種イモに病原菌がついている場合があります)。収穫後、イモを地中に残さないこと

・トマトの実は、すべて収穫して、地面に残さないようにする

・水やりの時、葉をできるだけ濡らさないように

・ご近所のことも考えて、株の処分などは、その胞子が飛んでいく前に手を打つこと

10.トマトの支柱を立てる時は、風通しを良くするように

支柱のタイプは、3本の支柱を立て、上で束ねるような、しぼむような形よりも、上に向かって広がっていくように、トマトケージ(トマト用に作られた、ワイヤーの支柱。朝顔用の支柱に似ている。上に行くほど輪が広くなっていく)や、フェンスを使うようにして、風通しをよくすることで、湿度が高い状態を防ぐことができます

11.実際のところ、摘心をしない場合は、支柱ではなく、ケージにする。

頂点が伸び続ける品種に支柱を立てる場合には、脇芽を摘み、樹勢を整える必要があります。

それができないなら、ケージにして周りをすっぽり囲んでしまいましょう。

12.  トマトは肥沃な土が好き、ですが、肥料のやりすぎには注意。

有機物質、堆肥が含まれた土を使うのがベストです。
マーガレットさんはひたすら、堆肥のみ。

堆肥でない場合、窒素が多い肥料は避けましょう。
そうしないと葉が茂り、育ち過ぎて、その後いろんな問題の元となります。

13.うまくトマトが実らなかった時は、温度か水分かも

どんなに一生懸命育ててもうまくトマトの実がならないこともあります。
もし、窒素肥料のやりすぎでない場合は、天候によって、受粉が妨げられた可能性があります。

・夜の気温が21℃以上か 10℃以下になった場合
・高温でなおかつ乾燥し過ぎた場合

14. 「一番優秀な品種」は、人によって違います

目的と理由で何を最優先するかによって、ベストと呼べる品種は様々です。
日本だと、サラダ用に、甘いもの、のバラエティが豊富なようですが、アメリカでは、用途によって、バラバラ。
マーガレットさんが知り合いに尋ねた下記の例をご覧ください。

・早く実がなって、背丈が低い(シカゴ市内に住んでいる)
・トマト・ソースを作るため
・サンドライド(日に干した)・トマトを作るため
・病気に強くて育てやすい
・スライスして生で食べる
・味が甘くてしっかりしている(’サン・ゴールド’ チェリートマトは誰もが大好き)
・エアルーム
・大きい実がなるもの


15.室内でトマトを完熟させるには

戸外で枝についたまま完熟させることは可能です。
でも、まだ色が完全に赤くなる前に早めに収穫する場合もあります。
寒い地方では、「気温が低くなる」、暑い地方では、「暑くなりすぎる」、
もしくは動物が食べる、などの止むを得ない理由も含まれます。

では、まだ熟していないトマトをどうやって室内で完熟にするか。
マーガレットさんは、エキスパートに尋ねて回りました。
ご本人は、「窓辺に置いておく派」だったそうですが、どうもそうではないらしい。

ほぼ全員が、「よほどのことがない限り、冷蔵庫では保管しない」。
18−21℃くらいの乾燥した場所を勧めています。
それにプラスして、

陽の当たらないところで、新聞紙で包むか、茶色の紙袋に入れておく
・前もって、熟している度合い(色で見分ける)によって並べておけば、時々熟し具合をチェックしたり、取り出したりするときに楽
・りんごの皮を少し入れておく(エチレンガス)
・(霜のおそれなど、天候が急変する場合)枝ごと切って逆さまにし、車庫や地下室にぶら下げる

16. 忘れないで; 少なくともトマトペースト用に1株植えてください

完熟状態なら袋に入れて、そのまま冷凍庫に入れることも可能です。
その完熟冷凍トマト(ペーストに向く品種)をそのままシチューやスープに入れればオッケーです。
もうこれで、缶入りのトマトペーストは買わなくても大丈夫。

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(ファーマーズマーケットで売られているエアルームトマト。 見た目はいびつだけど、味に特徴があって、お目当ての品種を予約するレストランのシェフも。エアルームトマトは、1パウンド=約450g、$5〜6します。)

まとめ

アメリカ人のトマト好きは、よく知られています。
もし、一つだけ野菜を植えるなら、「トマト」、と答える人が一番多いそうです。
サラダ、サルサ、サンドイッチ、トマトソース、ピザ、など料理の種類の多さからも言えるように、その種類も様々で、専門のカタログもあるくらい。

トマトは一年中出回っているとはいえ、自分で育てるとなると夏の屋外になります。
夏の料理に欠かせないトマト。自分の庭でスーパーに売っていない品種を育てるのも楽しみの一つ。

マーガレットさんが、自分の経験や人から聞いた話をまとめてアドバイスしてくれました。

エアルーム、固定種、F1改良種、など自分の目的にあったものを選ぶようにしましょう。
F1改良種には、病気に強いものがたくさんあるので、いくつか混ぜておくと良いでしょう。

育て方でのポイントは、まず、自分の育てる環境にあった品種を選ぶこと。
トマトの風味は、60%は、遺伝子です。
残り40%は、トマトが好きな生育環境を作る。高温、乾燥、光、風通し。

青枯れ病に対処するためにも地元で育った苗を買いましょう。
マルチや潅水時に葉に水をかけない、などの日頃の工夫も大切です。

熟す前に収穫する場合は、光の当たらない乾燥した場所で20℃前後の気温を保つと良いでしょう。

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(こちらのファーマーさんは、エアルームトマトの本を出すほどのエキスパートです。)


いかがですか、アメリカ人のトマト愛。

日本でも、トマトの種類が増えましたね。
特にチェリートマトは、イチゴのようにたくさんの品種が並んで甘さを競っているようです。

そして、日本に戻って驚いたのが、トマトの季節。
昔は、夏休みの食べ物でしたが、いまでは、真夏にはうまく育たないと聞いてびっくりしました。
これも温暖化のひとつなのでしょうか。

今、近所のガーデンセンターでは、トマトの苗がたくさん売られています。
植え付け時期が、ニューヨーク市よりも約1ヶ月早いようです。
今年は、どんなトマトにチャレンジしてみましょうか、楽しみですね。

今日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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(ある夏の日のテーブルです。チップスとトマトさえあれば雰囲気が出ます。あとはバーベキューとビールでしょうか。^-^)








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