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彫像と彫刻家






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夜のアトリエに月の光が差して、

彫像を照らしている…



この彫像を彫った彫刻家は

彼女が月や夜の草花たちとどんな会話をしているか知らない。



彼女はこの窓から外に出て、裸足で歩いてみたいと切望している。


いつも外にいる動物や虫、草花たちに、


「あなたたちのいる外はどんなところなの?」


と話をきいては

想像を膨らませている。



とうとう彼女は募る氣持ちを抑えられず、

月にお願いをして、

3度目の満月の夜にイノチを得られることになった。



ちょうど、こんどの満月の夜。

彼女は生命の精氣を得て、外に出ることになるだろう。



そのとき かの彫刻家は、何を思うのだろうか?

「どうしたことだ、わたしの彫像が盗まれてしまった?」



それも当たらずとも遠からず。


なぜなら彼女は

月の光に照らされた外の世界に

心をすっかり奪われてしまったから。





盗人は永遠に捕まらず

彫像はいずこへ。






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