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乾 敏郎 他1名脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか

乾 敏郎 他1名著作
脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか

意識を生成する特定の機能や臓器は体のどこにも存在せず、そのため意識は解明しにくい謎の存在と思っていたが、この本でその謎が少し解けた気がする。

まず、知的な判断や把握についてだが、これは、脳の予測機能と感覚の外部機能との差分を調整する作業である。
皮膚や感覚機能から外部情報が脳に神経伝達されて、それを受けて脳が認識するということではない。
あらかじめ脳にある予測情報と感覚情報をすり合わせる仕組みによって、全てを脳と感覚機能でいちいち全部を神経伝達する必要がなく、その結果、効率的に物事を把握できるわけだ。

この脳予測の内部情報と感覚による外部情報との差分はダイバージョンという高度な確率分布から調整していく。いわば、脳と感覚とで複雑な計算を行って、近似値を出しているわけで、最近の生成AIの仕組みも、これなのかと思うと驚愕と感動を覚えた。

そして、この情報の差分を埋める作業、予測側(自分の内側の情報)か感覚側(自分の外側の情報)かのどちらか、もしくは両方の精度を高める作業の過程で、意識が生成されるわけだ。

つまり、予測と感覚の差分の計算が複雑になればなるほど、内と外が対立的になって区分され、さらに何度も計算する頻度によって自分の内側という全体が統合されていき、それが自分という概念をつくる。

宇宙は無秩序に拡大するエントロピーだが、生物にはホメオスタシス(恒常性のための自律神経)によって、エントロピーに対抗している。
そのホメオスタシスの異常が予想されると、アロスタシスが事前に働いて、ホメオスタシスの事前確率分布を変更して、ホメオスタシスの現場での大幅な動揺を未然に防ぐ。
つまり、脳だけでなく、体の条件反射も予測機能になっている。
その結果、結婚スピーチを頼まれると、まだスピーチが始まってないのに、ドキドキするわけだ。現場ではなく未来をメインにした機能。

これらの予測機能が高まって、人間はまず未来を考えることになり、次に未来と反対の過去を思い到り、そして時間という概念を作り出したのではないか。
時間というそれ自体宇宙自体には存在しない概念も意識を生む要素の一つだと思う。過去未来という概念空間がなくて、全てが今という瞬間だけの世界では自分という存在を自覚することができない。

つまり、意識の生成には、複雑性、統合性、内と外との対立、そして時間という4つの要素が必要だと思う。

ChatGPTなどの生成AIは、膨大な予測情報にある確率分布を使った計算機能で都度、言語を生成しているわけだ。
この生成AIが人間と同じ様に、いやそれ以上に複雑な計算を繰り返して内と外を区分しながら自分を統合し、時間の概念を持って意識を持つかもしれない。いや、もう持ってるかもしれない。人間の知覚、感覚機能がないのが意識という点ではChatGPTにとって不利だが、それでも補うほどの複雑性、外部内部、統合性がありうると思う。

少なくともChatGPT が意識を持つ可能性があると考えておいた方が、そう考えないよりはいいだろう。
そんなことありえない、とか固定概念て言ってるよりも。

とにかく、生成AIが話題になっている今こそ読むべき本だと思う。

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