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京都市京セラ美術館『マリー・ローランサンとモード』

 6/3、京セラ美術館のマリーローランサン展へ行ってきました。

 展示作品はローランサンが中心ですが、展覧会の構成としてはガブリエル・シャネルも並行して紹介されており、レザネ・フォールの女性クリエイター二人の歩みをたどるものになっていました。

 まず全体的な感想としては、ローランサンに興味があるなら見に行ったほうがいい! です。というのも、展覧会で撮った写真を見返してみると全然生で見たときと印象が違うんですよね。ローランサンの、ぼやけていて繊細なニュアンスがピクセルを媒介すると全部失われてしまうみたいです。あの曖昧さは生で見ないと伝わらない……


《ヴァランティーヌ・テシエの肖像》 1933年
《帽子の乙女》 1923年

 どの作品もかわいかったんですが、このふたつがお気に入り。どちらも生で見るとローランサン特有の霞のようなタッチが見事で目を奪われました。

 やっぱり女性画家が描く女性っていいんですよね。私はマリーアントワネットのお抱え画家だったルブランが好きなんですけど、女性にしか描けない機微があると思う。あと非常にゆりゆりしい作品もあってめちゃくちゃ笑顔になりました。

 後期の明るい色彩の作品はたしかにローランサンらしくはないな~という印象でしたが、私は好きでした。完全に好みの問題だと思います。

 余談ですが、私はローランサンといえばアポリネールのイメージだったんですがアポリネールの話は一切出てこなくて(レザネフォール中心だったからというのが大きな理由だとは思いますが)潔いな~と思いました。出てきた男性はマン・レイ、ポール・ポワレ、ピカソが主ですが、恋愛関係にあったのはポワレの妹のニコル・グルー。図らずも異性愛規範に否を突きつけるような人間関係が展開されていて、それも含めてレザネフォールという時代を象徴しているようで面白かったです。


 シャネルとローランサンの関係を示すエピソードとして「シャネルがローランサンに肖像画を依頼したけれど、出来上がった肖像画の受け取りをシャネルは拒否した」「書き直しを求めたシャネルにローランサンは譲歩しなかった」というものが紹介されていてなんだか笑いました。ふたりともプライドが高くて時代の寵児らしい貫禄があっていいですね。ちなみにローランサンは「シャネルはいい子だけど田舎娘よ」と言ったとか。こわ~~。


 シャネルの作品のほうは映像作品が主でしたが、それでもじゅうぶん目が楽しかったです。なんと言ってもマン・レイの写真がたくさんあったから……。贅沢でした。《鏡を持つニュッシュ・エリュアール》はたしかスキャパレッリのお洋服を着た女性のポートレートでしたが、すごく素敵で印象に残りました。

 それとホルスト・パウル・ホルストのお写真もありました! ルートヴィヒ美術館展で初めて名前を知った写真家ですが気に入っていたので嬉しかったです。

 神戸ファッション美術館からの展示作品もたくさんあってまたファッション美術館行きたくなりました。


 バレエ・リュスやアール・デコ博など、時代の様相と絡めてふたりの仕事が紹介されていくのでとても面白かったです。レザネフォールが作り上げたふたりだったとも言えるし、ふたりがレザネフォールを作り上げたとも言えるだろうし……。ともかく、ローランサンとシャネルがいかにして1920年代パリを生きたか、つぶさに見ることができて楽しかったです。



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