見出し画像

Bandcamp Friday

インディペンデントのアーティスト/レーベルにとって必要不可欠である音楽販売サービスBandcampは、2020年3月からコロナによるパンデミックによって音楽活動が困難となったアーティスト/レーベルをサポートする為に「Bandcamp Friday」というキャンペーンを始動。

毎月第1金曜日に行われるBandcamp Fridayでは、Bandcamp側が通常受け取る販売手数料(デジタル販売は15%、フィジカル販売は10%)を免除し、支払い処理手数料を差し引いた売上の全てをアーティスト/レーベルに還元してくれる。

2020年のBandcamp Fridayでは4000万ドル以上が集まり、2021年以降もBandcamp Fridayは持続され、2022年は2月から5月まで行われることがアナウンスされている。

ギグやツアー、フェスティバルへの出演を主な収入源としていたインディペンデントなアーティスト達にとって、Bandcamp Fridayは大きなサポートになった。2020年3月以降、Bandcamp Fridayに合わせて数多くのアーティスト達が未発表曲やリマスター音源、そして新作を発表することになり、Bandcamp Friday当日に複数の作品が一気にそれぞれのBandcampで公開され、お祭りのような雰囲気が出来上がっていた。

Skreamは未発表のダブステップ・トラックを中心とした『Unreleased Classics』のリリースをスタートさせ、Goth-Tradは1999-2000年に製作していたイルビエントやアブストラクト・ヒップホップの曲を収めた『The Beginning』を、The Bugは2ndアルバム『Pressure』に未発表曲を付け足したものとインスト版『Pressure Versions』を発表。それまでストリーミング・サービスだけを使用していたリスナーもBandcampで作品を購入するようになり、結果的に以前よりも強固なコミュニティが各所で生み出されていたと思われる。

他にも、King Cannibalといった活動を休止していたアーティスト達が未発表曲を公開したり、新しいプロジェクトが始まったりと、クリエイティブな動きにも繋がった。

自分のレーベルであるMurder Channelは2012年からBandcampを使っている。デジタル販売だけではなく、CD/カセット/Tシャツ/書籍といったフィジカルグッズも販売しており、Bandcampでの売上が主なレーベルの収入源である。

これは日本のレーベルにしては珍しいケースかもしれないが、Murder Channelの作品を購入してくれているサポーターは海外の方が多く、売上の75%以上が海外である。海外アーティストを多くリリースしているのもあるが、日本人アーティストの作品に関しても、50%以上が海外で売れており、Tシャツに関しては90%程が海外からの注文となっている。
有難いことにデジタル販売と同等にフィジカル・グッズが売れてくれているのもあり、常にギリギリではあるがレーベル運営を続けられてきた。

だが、2020年以降は海外へのフィジカル・グッズの発送がパンデミックによる遅延の為、難しくなってしまった。国によってはまったく送れない状態になってしまったり、少し前まで航空便で送れた国が急に船便だけになったりと、不安定な状況が今も続いている。そんな訳で自分のレーベルも打撃を受けていたが、Bandcamp Fridayのお陰で本当に本当に助かった。正直、Bandcamp Fridayが無ければ危なかったかもしれない。

Murder Channelに関しては、ストリーミング・サービスで得られる売上は非常に少なく、現在2タイトルのみ各種ストリーミング・サービスにて配信中であるが、受け取った金額は9年間で驚く程少額であった。
ストリーミング・サービスで広がることは喜ばしいが、Murder Channelのような小規模レーベルにとって、ストリーミング・サービスはマイナスの要素が多い。故に、ダイレクトに販売出来るBandcampは重要な場所である。

Bandcamp Fridayが始まったお陰でBandcamp自体の認知度が上がり、音楽を購入するという習慣が以前よりも定着したように思える。Murder ChannelのBandcampも2019年と2020年では再生数や売上も変化しており、パンデミック中であったが、前よりも訪れてくれる人の数が増えていた。Bandcamp Fridayの相乗効果は凄まじいものであったと感じる。

Bandcampには興味深い機能があるのも魅力だ。
Bandcampではデジタル販売にPDFやMP4をオマケで封入することが出来るので、ライナーノーツやアート作品、映像などを音源と一緒に届けることが出来る。

サブスク機能もあり、定額で聴き放題+ダウンロード可能に加えて会員だけがアクセス出来る作品も用意されている。自分はKursaのBandcampのサブスクを利用していたが、非常に良いサービスであった。
それ以外にも、数年前からクラウドファンディングでレコードをプレスするというサービスをBandcampは開始している。

Bandcamp DailyではBandcamp上で話題になっているジャンルやレーベル、アーティストを特集しており、先日公開されたブレイクコア・リバイバルの記事など、様々な情報が入手出来る。

Bandcamp Fridayが無ければ活動を持続出来なかったアーティスト/レーベルは少なくなかったかもしれない。Bandcampには大変感謝しているが、サポートしてくれる方々があってこそだというのが一番重要だ。

きっと、皆それぞれ大変な状況であったにも関わらず、Bandcampを通してアーティスト/レーベルをサポートしてくれたリスナーがいてくれたお陰で、インディペンデントなアーティスト/レーベルは活動を続けることが出来た。

今年5月以降のBandcamp Fridayの予定は公開されていないので、今回で一旦ストップする可能性もある。最後に、ここ最近リリースされた素晴らしい作品をピックアップしておくので、もし興味があれば5月のBandcamp Fridayでサポートして頂ければ幸いだ。


















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?