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ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編より「Tripped」インタビュー公開(10月5日まで限定公開)

ハードコア・テクノを軸にアシッド~テラーコア~インダストリアル・ハードコア~シュランツを自由自在に掛け合わせた唯一無二のスタイルで絶対的な存在感を放つベルギーのTrippedが10月5日に開催されるHARDCORE ASSOCISTIONに来日することが決定しました。

今回はTrippedの来日を記念して、2021年にパブリブから出版した『ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編』に収録しているTrippedのインタビュー全文を期間限定で公開します。こちらのインタビューではTrippedの音楽的ルーツや楽曲制作方法、盟友[KRTM]との出会いとMadBack Records設立についてなど、貴重な話を聞かせてくれています。Trippedの音楽をさらに深く理解する手助けとなる内容となっているので、未読の方はこの機会に是非御覧ください。

以前、こちらのnoteにて公開したTrippedのインタビューも合わせて是非チェックを。

HARDCORE ASSOCISTION feat. Tripped
at Circus Tokyo
https://circus-tokyo.jp/

OPEN 14:00 CLOSE 21:00
ADV: ¥3,500 +1D
DOOR: ¥4,000 +1D

TICKET
https://miyukiomura.stores.jp/

【Main Floor】
Tripped
Hammer Bros(Live)
Coakira(Live)
Miyuki Omura
Bishamon
Crossbreed 4 Headz
Dark Archivists
Duplex Insurrection
Shimon_Harbig

【Second Floor】
181
Balalaika
ELVON
N4Gi
Reverse16
Sho–nan
Veronica

Tripped本人がデザインした来日記念TシャツがMxCx online storeにて予約受付中。9月16日までの受付となります。

Tripped
https://madbackrecords.bandcamp.com/
ベルギーの偉大なハードコア・テクノ/RAVEミュージックの伝統を受け継いだ深みのあるテラーコア〜アシッドコア〜インダストリアル・ハードコア/テクノをクリエイトするFrancis Jaques によるソロプロジェクト。

2007年にB2K Records からデビュー作『The Fear Syndrome EP』をリリースして活動を開始。Pattern JとMoleculezとのスプリットやStrike Recordsからのシングルで頭角を現す。 2010年代からはRebel Sucm、Industrial Strength Records 、Hong Kong Violenceからのシングル/EPリリースやDelta 9、Noisekickといったテラーコア界の重鎮とのコラボレーションでエクストリーム・ダンスミュージックの可能性を拡大させた。同時期にAngerfist「Fuck The Promqueen」「Deathmask」のリミックスを手掛け、アルバム『Creed Of Chaos』にコラボレーションで参加。DJ Promoと共にHardshock FestivalのMix CDを担当するなど、アンダーグラウンド・シーンだけではなく、オーバーグラウンドからも支持される存在となった。

アナログ機材を巧みに取り入れた独自の歪みとクリアかつ重いキックが特徴的なTrippedのトラックはRebekahやCardpusherといったハードコア・シーン以外のプロデューサー/DJ達からも熱烈にサポートされている。 現在は自身が運営するMadBack Recordsを拠点として独創性を重視した芸術性のある作品を発表している。

Q:ご出身はどちらですか ? どういった環境で育たれ、音楽に出会いましたか?

出身はベルギーの北西部にあるコルテマルクという小さな町。その町のさらに郊外に住んでいたから、大都市のような所からは大分離れた片田舎だったね。不思議なことに、そんな小さな町だったにも関わらず、少数ではあったけれど、オルタナティブな(電子)音楽をこよなく愛する人達のコミュニティがあったんだ。Subversa、X&Trick、Igneon Systemとか、皆そこで育ったんだ。

ベルギーには、「ユース・カフェ」と呼ばれる文化があって、それは小さなローカル・イベントをやったり、安全でリラックスした環境でただビールを飲んだり音楽を聴けるというようなスペースなんだ。小さかったけれど、レゲエ、ドラムンベース、テクノ、アシッド、ハードコア・テクノのシーンがあって、イベントをやっている人が沢山いたから、コルテマルクに住んでいた時は、そういう場所で色んな人との出会いがあった。

Q:あなたがハードコア・テクノと出会ったのはいつ頃ですか?

周りの人に影響を受けて、15歳の時にDJを始めた。その前、僕はスケボーや自転車に乗っていることが多かったけど、音楽やミキシングにハマった時はもう、本当に引き込まれちゃったね。当時はドラムンベースのDJをやっていた。12歳(1999年)頃からハードコアを主にThunderdomeのCDで聴いていたんだけど、その時は若すぎてよく理解出来なかったから、最初にハードコアを聴いていた期間は割と短かったと思う。ヒップホップ、ロック/メタルとか、様々なエレクトロニック・ミュージックという具合に、色んなスタイルを聴いていた。それは今でもやっていることで、聴く音楽は年々さらに多様になってきているね。

数年、ローカルイベントでDJをやった後、友人を通してアンダーグラウンド・ハードコアを知ることになったんだ。フランスにとても近いところに住んでいたから、最初に聴いたのはMicropoint系の音で、Deathchantのようなレーベルの音源。特にEpileptik。少しずつ、ドラムンベースのセットとも BPM的に合いそうなハードコアのレコードを地元のレコード屋で買うようになった。その内、段々とハードコアの世界にハマって行って、とにかく色んなスタイル、BPM、サブジャンルがあって、気が付いたら自分でも制作してみたいと思うぐらい中毒になっていたんだ。それ以来、その道まっしぐらだね。

Q:Trippedとして活動をスタートさせた時、ベルギーのハードコア・シーンはどういった状況でしたか ?活動当初、どういったクルーや DJ 達と共演していましたか?Trippedの活動をスタートさせた時、あなたはどういったビジョンや目標を持っていましたか?

当時のシーンはとても盛り上がっていて、毎週末のように、複数のパーティーが開催されていたんだ。ラインアップの構成は大体、ブリープ・テクノで始まって、そこからアシッドコア、ブレイクコア。その後にハードコアというような流れ。正直、あの時代に戻りたいよ ! あと、知って欲しいのは、80年代後半から90年代前半まで、ベルギーはイベントが延々と続くような伝説的なクラブやパーティーのメッカだったんだ。正に現代の音楽の原型となったような、新しい電子音楽ムーブメントの最先端を行っていたんだ(例えば、R&S Records)。

悲しいことに時間が経つにつれて、面白いイベントはほとんど無くなってしまったね。特にここ10年位。直接的な原因としては、多くの会場がつぶれるか、政府に閉鎖された事や、イベントの前後に警察が現れるようになって、お客さんが怖がるようになった事。あとは、最近エレクトロニック・ミュージックが多様化していることによって、それぞれのクルー自体が小くなったのも影響しているのかもしれない。それで、元々オーガナイズされたイベントやクラブに行っていた人の多くは、フリーパーティーに移って行ったんだよね。

僕自身がハードコア・シーンに関わるようになったのは、2004-5年頃で、地 元のpro-tekというクルーの一員になったんだ。Hyperaestasia、Hardcore Manifestとか、後々Coretemarkというようなイベントをやっていた。その後、別の地域に移住してからは、1999年から伝説的なアンダーグラウンド・イベントをやっていたNoisy Bastardsの活動に参加するようになった。最初は、あまり目標というものはなくて、とにかく楽しむことだけを考えていた(今でもそれが主なモチベーションとなっている)。気が付いたら、2007年に初のアナログ盤のリリースをして、同じ年にさらに二枚出すことになったんだ。それからブッキングがどんどん入るようになって、よりシリアスな感じになって行って、趣味が仕事に変わってしまったという具合なんだ。

Q:最初に買った機材は何でしたか?楽曲制作方法はどの様にして学んでいきましたか?

2017年までは主に制作はデジタルでやっていた。駆け出しの時は寝室をスタジオとして、ノートパソコンで作業してたんだけど、始めからちゃんとしたFire-wireのサウンドカードを用意したね。ハードウェア的なものは、それ一つあれば良い音質が作れる。あとは、いくつかMIDIコントローラーを使ったり、Kaoss Pad 3を買った位。当時は今みたいにチュートリアルの動画が沢山あった訳じゃないから、大体DAWで実験したり、いじったりして自分で覚えたんだ。今でも、自分の耳を使って音楽を解剖してみるということが一番色々と学べると思う。

Q: あなたの音楽はインダストリアル・ハードコアにカテゴライズされますが、それについてどう思われますか ? あなたにとってインダストリアル・ハードコアの定義とは?

僕の音楽の一部は、確かにインダストリアル・ハードコアだと思うけど、特定のスタイルに分類されたり、レッテルを貼られるのは好きじゃないんだよね。自分の音を作るということが一番大事だけど、同時に色んなことを試してみるということも重要だと思う。それが成長に繋るし、音楽に興味を持ち続けさせてくれる。

今まで制作してきたのはアシッド、テクノ各種、ダーク・エレクトロ、インダストリアル、初期のハードコア、ブレイク系、テラーコア等々。これはほんの一部だけどね。僕にとって、インダストリアル・ハードコアは、主にスローで荒削り、ダークでディストーションが効いた音なんだけど、最近だとお決まりのスネアが入ったような、速いハードコアがそう呼ばれることが多いから、解釈や時代によって定義というのは変わってくるものなんだと思う。それに、個人的な捉え方もあると思う。自分にとっての定義というのは、他人にとっては違うこともあるしね。

繰り返しになるけど、僕は何でもレッテルを貼るということが嫌いなんだ。なぜかというと、個人的には、良い音楽とは、ジャンルの境界線をまたいで、同時に色んなスタイルに触れるようなものだから。

Q:[KRTM]との出会いとあなた達のレーベル MadBack Records が生まれるまでの経緯を教えてください。当初のレーベルのコンセプトは ?

Casimir ([KRTM]) と初めて会ったのは、2008年にDominator行きのバスを待っている時だった。僕のことに気付いて、話しかけてきたんだ。その頃は既には色んなところで出演していたからね。確かその時にデモCDを渡されて、後で聴いてみたら、とても興味を惹かれたんだ。彼の制作技術にはとてもポテンシャルを感じたし、その時既に、後の[KRTM]を象徴するようなディープなキックの音が入っていて、なんだか自分のトラックにも似ているように感じたんだ。それ以来、連絡を取り合うようになって、音楽以外でも懇意にしている。彼が言うには、駆け出しの時は僕の音楽にインスピレーションを受けて、ハードコアを作るようになったらしいんだ。それはとても光栄だけど、次第に彼はどんどん自分の道を歩むようになって、常に自分の音を形作る為に新しいインスピレーションを追い求めている。

正直なところ、最近Casimirは他を追随させない 独創性があって、本当に尊敬しているよ。彼の新鮮なテクノの作り方や、俯瞰的なビジョン、アートや制作を通して、インスピレーションを与え続けてくれる存在だ。

Madback Recordsはその前に運営していたレーベルBadback Recordsから派生したんだ。Casimirは自分の新たなスタイルを見出す為に、数年休暇を取った後、ようやく復帰することになった時に、彼の音楽をリリース出来る場所がなかなか見つからなかったんだ。彼にとって、音楽だけじゃなくて、アートでも自分をフルに表現するということが本当に重要だったんだ。ハードコアのレーベルの多くが、全体的な雰囲気とか、アートワーク的には合わないと感じていたみたい。その時、僕はちょうど自身のレーベルを刷新しようと考えていたから、彼も参加しないかと誘って、表現の場を与えてみたんだ。運が悪かったのと、法律的な縛りもあって、元々契約していた流通会社と関係を解消するにあたって、レーベル名をMadback Recordsに変えなければならなかった。Casimirが経営に加わって、それから色んな新しいスタイルの音楽を制作したり、ロゴも変えることになったから、今振り返るとレーベル名を変更したのは必然的だったのかもしれないね。

Madbackのコンセプトは、当時も今でも、クリエイティブなアンダーグラウンド・ミュージックをそのまま伝えること。BPMやスタイルはあまり気にしていないけれど、他のレーベルと同じような音になるのは嫌だから、既存の枠組みに囚われない音作りが出来るアーティストが好きだね。レーベルとしては、インダストリアル、ドゥームコア、アシッド、テクノや初期のハードコア/テラーコアを主に取り扱っている。特色は、深くて有機的(アナログ)な音。

Q: 現在あなたが楽曲制作で使用しているメインの機材は何ですか?楽曲制作はどういった順番で進めていますか ?

最初から一貫してFL Studioを使っている。VSTプラグインもかなり使っているね。あと、何年も前に揃えたKRK Rokit 8モニターが二台。最近はアナログ機材もかなり取り入れているんだけど、現在一番頻繁に使っているのを幾つか挙げるとSoundcraft Signature 12ミキサー、Roland TR-09ドラムマシン、Roland TB-03、Behringer Neutron、Moog Dfam & Mother 32、ArturiaBeat Step Pro、Roland Alpha Juno 2、Behringer MS-1 (Roland Sh-01のクローン機)。あとは、Korg Volca BassとKorg Volca FMもしょっちゅう使っている。操作が楽しいし、生録音モードで簡単に良いシーケンスを録れるんだ。大体それを色んなディストーション・ペダル(RATやBoss等)とリバーブを通す。それで、即興で録音して編集、再サンプリングして、DAWを使ってデジタルでアレンジをするんだ。

いつもは機材を使って、即興でセッションをしたのを長めに録音して、それを後々、色んなトラックに使っていく為に保存しておいて、アイデアが浮かんだらそこからループを選んでから、それに合うようなキックドラムを作って、そこから制作して行くという感じだ。時によってはキックドラムから制作することもあるけど、作ろうとしている音楽のスタイルによるね。ハードコアに関しては、大体キックドラムから入るんだけど、テクノはパーカッションとかシンセの音で最初に雰囲気を作るところから始めるんだ。

あ、それと僕の「秘密兵器」はSubpacだね。発売された時に真っ先に手に入れて以来、周りのアーティストにも勧めまくって、それで使いだしたという人が結構いるんだ(The DJ Producer、Akira等々)。今や無くてはならないアイテムだね。ベースを「体感」させてくれる。要は、聴こえないサブウーファー。ここ 5年程使っているんだけど、比較的小さい音量でも、キックドラムのインパクトとか、耳が聴こえない周波数まで本当に身体で感じることが出来るんだ。ガツンとね ! 昔はスタジオの中を走り回るように、音の反射を避ける為に、部屋の隅々まで色んなところに立ってみたり、音質を確かめる為に色んな部屋や違うスピーカーで音を出したりしていたよ。もうそんな煩わしいことはしなくて良くなった。

Q:「Fuckin' Uptempo」について。この曲はどれ位シリアスなものなのでしょうか?あなたはアップテンポについてどう感じていますか?一時期、ハードコア・フェスティバルのインダストリアル・エリアにアップテンポが混じったと聞きましたが、それは結果的に双方のジャンルに良い反応を起こせたのでしょうか?

まあ、僕が知る限り、アップテンポはあまりインダストリアル系の人達の間では人気が無いと思うんだけれど、そのフェスでは確かアップテンポとテラーコアが混じっていたんじゃないかな。どちらにしても、個人的にはあまり好みじゃないし、無論、ステージは分けるべきだと思う。このジャンルは、新しい世代の人達の間で人気があるから、彼等にとって受け入れやすいんだと思う。あとはアップテンポを制作する新人のプロデューサーが多いね。最近出ているアップテンポ作品の制作のクオリティが低いのは、それが理由かもしれない。

個人的な意見としては、とても単純で創造性が感じられない。そういう曲を作っている人の多くは、スピード出世を狙ってのことだと思うんだけど、それがこの時代の悲しい現実だよね。そういうのって、ハードコア・シーンだけじゃなくて、あらゆる所にある気がする。もちろん、SNSが大きな要因になっている。重要なのは、音楽と自分自身の成長なんだ。だから、僕はもう物理的なリリースしかしたくない。十分過ぎるほど長い間、デジタルの時代を追ってきたけど、数年前からはアナログ盤が出ないなら、リリースはしないと決めたんだ。昔のやりかたに戻ったということ。

そうだ。僕の曲、「Fuckin Uptempo」のことだけど、別にアップテンポをディスりたかった訳じゃないんだ。それでも、解釈の余地は十分残すのが、僕のスタイルなんだけど。アップテンポ重視のラインナップで、最後のシメにこの曲をかけたりすると、愉快な気持ちになっちゃうね(笑)。そもそもこの曲が出来たのは、同じボーカルを使用したDJ R-Shockのトラックが好きで、それに手を加えたいと思ってやったんだけど、リリースしたタイミングが絶妙だったよ。

Q: あなたは今までに数十枚のレコード /EPをリリースしています。その中で、特別なお気に入りの曲はありますか

かなり難しい質問だね。僕にとって音楽を作るという事は、感情や不満、その時その時の創造意欲と繋がっているものなんだ。作品を完成させた直後は、嬉しくて誇らしいことが多いけど、年月が過ぎると、完成したばかりの時と同じぐらい好きな作品と、色あせてしまう作品に分かれる。もう何回も聴きすぎて、飽きてしまうということもあるのかもしれないけど。だから、最もお気に入りの作品を選ぶとなると、割と最近の作品ばかり挙げてしまうことになると思う。なぜなら最近の作品であるほど、現在の自分の趣向や、音楽的な発達に近いから。

それでも、「U.S.A.Holls」や「Serial Wanker」 のようなトラックは、よくTrippedの代表作だと言われることがあるし、現在に至るまで、僕も気に入っている。最近の作品では、「Stronk」「ILike Them Heavy On The Meat Flaps (Facking Cants)」「Cuming」「Dance with Me」「TrouserSnakes」「Wheel Of Foreskin」「Drop Stuff」のようなトラックがお気に入り。今のところは。


ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編にはOphidian、Eye-D(The Outside Agency)、DJIPE、[KRTM]、Somniac Oneなどのインタビューも収録。MxCx online storeでは特典付きにて販売中です。
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