見出し画像

アジアン・グランジの名盤Youjeen『THE DOLL』

最近Apple Musicで10代前半の頃に聴いていた音源が配信されていないかをチェックしているのだが、遂にYoujeenのアルバムとシングルがサブスク解禁され大喜びしてる。
Youjeenは韓国出身のボーカリストで2001年に日本デビュー。テイチクのレーベルであるImperial Recordsから2枚のオリジナル・アルバムと5枚のシングルを発表。その作品全てがサブスクで聴けるようになったのだ。

実は去年、世間でヒットしていたAdo「うっせぇわ」を聴いた時、歌声がYoujeenにそっくりで驚いた。個人的にはめちゃくちゃ似てると思うのだけど、同じように思ってる人はどれだけいるのだろうか。。それもあって最近また聴き返していたのである。
Youjeenは日本語と英語を饒舌に使った激情型グランジ、パワーポップな名曲が多数あるが、その曲のクオリティに比べて知名度は低い気がする。

特に、2001年に発表されたアルバム『THE DOLL』はLUNA SEAのJがプロデュースし、Scream/Foo Fightersで活動したFranz Stahlが4曲作曲で参加しており、アメリカと日本と韓国それぞれの音楽的ルーツが時に歪に、時にポップに交わって生まれた超名盤である。自分はCDを購入してから今日まで定期的に聴いているが、まったく飽きがこず、未だに新鮮味を感じる。

まず、『THE DOLL』の何が良いのかというと、「小細工なしのストレートなメロディとシンプルな構成」、「独特なボーカル」、「めっちゃピュアな歌詞」の三つが挙げられる。

音作りと編曲は1997年に発売されたJの1stソロアルバム『PYROMANIA』をベースにしている印象を受けるが、歌詞に同調したヒリヒリとして疼くようなギターと、ボーカルを支える事に徹底したリズム隊が素晴らしく、Alice in Chainsの『Dirt』に近いものがある。
メロディに関しては、LUNA SEAの『STYLE』と『SHINE』の中間的というか、たぎるような熱々の情熱的なメロディに若干の気怠さや憂鬱さが紛れ込んだJの青年な部分と大人な部分が上手く重なったようなものと、ハードコア・パンクの疾走感を下地としたFranz Stahlによる90年代的USグランジなメロディとが上手く混ざっている。

そして、歌詞がとても興味深い。LUNA SEAにおいてJは初期だけではなく、中期から後期に掛けても男臭いパンク・アティチュードの中に中性的な部分があったと思う。ポジパンやニューウェーブ的というのが近いのかもしれないが、男性/女性という区切を感じさせない刹那的で情緒的な人間性が曲になって表れているのが彼の音楽の魅力だと思う。こういったJの中性的な部分が『THE DOLL』で全面に出ており、それをYoujeenが見事に汲み取って歌いあげている。
Youjeenが日本語を母国語としていないのもあって、若干舌足らずな発音になっているのが逆に良いアクセントになっていて、日本語に新たな音を足しており、英語に関しては英語教師をしていただけあって流石に上手く、英語になった時により感情の起伏が分かりやすく聴こえるのも面白い。英詩の部分が本音として構成されているように聴こえる曲などでは非常に良い演出となっている。


名曲揃いであるが、中島みゆきを連想させるような恨み節のようでもある「Someday」はアジアの拳の効いた歌心のメンタリティがグランジと融合して凄まじいエネルギーを放出し、アルバムの中でも異彩を放っている。そして、「Beautiful Days」は歌詞がとても現実味があって、非常に人間臭くて良い。あのJが女性の言葉で歌詞を書いているのも衝撃であったが、それがめちゃくちゃハマっているというか、彼の本質みたいなものがLUNA SEAやソロよりも出ているんじゃないかと感じる。曲が進むにつれて、心情が変化していく流れも自然でストレートで引き込まれるし、凄い高揚感が出てくる。

ここまで読んでくれている人が居るとするなら、是非「Beautiful Days」は最初から最後まで聴いてみて欲しい。そして、興味があれば『THE DOLL』はサブスク配信されているので検索してチェックしていただきたい。
2ndアルバムは 元THE MAD CAPSULE MARKET'SでAA=のサポートも務められている室姫深のプロデュースに変わっているが、こちらもオススメである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?