見出し画像

"Sea of Stars" というすごいインディーRPGの感想(ネタバレあり)

"Sea of Stars"前回に続き、こちらはネタバレありの感想です。
後半に”The Messenger”に関する部分もあるので、そちらも今後プレイする予定がある方はお気をつけください。

クリア後の感想

ゲーム内の大部分の要素については、前回の記事に書いた通り文句のつけようもない素晴らしいものでした。一方、クリアした後にゲーム全体を振り返ると…やっぱりRPGの重要な要素、ストーリーの部分が気になり、諸手を挙げて「素晴らしい!」とは言えないような、そんな感想だったかな。良作であることは間違いないんだけど…キャラクターに感情移入できるか、とかストーリーを重視する人にはちょっと薦めにくいかなぁ。

ストーリーとしては、序盤は世界を滅ぼす「棲まうもの」との闘いで話が進み、中盤以降は記録官レシュアンが登場して話のレイヤーが二階層ぐらい上がり「平行世界&タイムトラベルの世界」という壮大な展開になっていく。一度のプレイで話を理解するのは大変で、自分もノートにメモを取りながら進めていたにもかかわらず、たまに手を止めて振り返えって考えないと、お話に置いていかれそうになってしまった。

この要因として、ゲームのなかで進行するストーリーのスケール感に対して、登場人物、特に主人公パーティのセリフ量が足りていないと感じました。それもそのはずで、主人公パーティのメンバーは、プレイヤーと知識のバックボーンが全然違うし、プレイヤーと違って彼らは理解しているからこそ、セリフとして語ってくれないんですよね。

主人公の二人は序盤こそ「ひよっこ至点の戦士」として初々しく世界を旅していきますが、中盤からはどんどん悟りを開いて『超越』してしまい「あーそーゆーことね 完全に理解した」と言うだけで何を理解したのかもほとんどセリフで教えてくれません。あのタイミングでもっといろいろ話してほしかったなぁ…。
セライさんも海賊の女船長、謎の時空アサシン、そして未来から来たサイボーグというてんこ盛りの背景のせいで最終付近まで「敵か味方かカウボーイ」ポジションだったし、レシュアンは元凶の片割れで一番語ってほしい役柄なのに途中でパーティから出ていってしまった。
唯一の一般人枠であるはずのガールくんも驚異の人心掌握術により、細かいところは置いておいて話を丸く進めてしまいます。仮死状態になって、急にパン作りを仕切りだしたとき、ちょっと気持ちがついていけなかったよ…。
パーティ内にいわゆる「狂言回し」的なポジションの人がいてくれると、もっと話に入り込めたのかなぁと思います。

このあたりの登場人物のセリフだけでは背景情報が伝わりきらない件について、チークスの物語(遺物)に語らせるという離れ業も使っていたけれど、話の大筋にしても、枝葉の部分にしても、ちょっと情報が少ないかなぁ。
たとえば苦悶岳の『ゴリラ大母』とかは、かなり唐突だった気がする。週刊誌のマンガを読んでて「あれ!話が飛んでる!先週読み忘れたかな?」みたいなことがちょこちょこあった。

”The Messenger”の記事で、製作者の方が「映像研には手を出すな!の浅草氏みたいな人なのでは」ということを書いたのですが”Sea of Stars”を遊んでよりそう感じるようになりました。"Sea of Stars"クリア後、霊廟地下のスタッフ開発室でのセリフや、青頭巾の「井戸の中の男のその後」の話を聞いて、いろんな人に支えられながら、自分の頭の中の世界をゲームの形になんとかまとめていかれたのではなかろうか(勝手な想像)。

30時間を超すボリュームを持ったRPGである以上、ゲームの後半まで楽しさを持続させるためには、シナリオや演出でプレイヤーを引きつけ続けなければならず…後半はちょっと息切れしちゃったかなぁ。
(セライの世界のマップを見たときに、まだ続きそうだなと、ちょっとウッ…となってしまった)

ラストのシューティングゲーは、、、まぁ他のゲームでも体験してたので個人的には特にコメント無し。

"The messenger"とのつながりについて

”The messenger”とのつながりは結構分かりやすかったですね。
私は"Sea of Stars"を遊ぶ直前に”The messenger”を遊んだこともあり、海底神殿で太陽と月のモチーフを見たときに、ここがきっと絡んでくるんだろうなぁという予想をしていました。ボスもいなくて神様のような2体の守護者との会話でクリア、という異色のダンジョンだったし。

"Sea of Stars"のエンディングにも登場する霊廟

そんなこともあり"Sea of Stars"は”The Messenger”よりもはるか昔、大洪水の前の世界が舞台なんだなぁということは遊ぶ前から予想していました。
けれど作中のメサ島が”The Messenger”の舞台の島だと知った瞬間、つまり”氷河山”に入ってあのBGMを聞いた瞬間は、このゲームのハイライトのひとつ。あの感動はストーリーの力というより、BGMの力という感じがします。

そして物語の中盤、時計仕掛けの摩天楼で「諍いに住まうもの」との闘い後のシーン。あれ…”The Messenger”を未プレイの人は絶対に「4人の使途とブルガバス…どこ行ったん?」ってなりますよねぇ。そのあたりも不当にこのゲームの評価を下げる要因になってしまっている気がして、もったいないなーと思いました。

この時の紫ゲートの先は、セライの時代よりもっと先の未来、
”The Messenger”のストーリーの元凶となった争いが起こっていた時代。
”The Messenger”の悪魔王=「諍いに住まうもの」+「4人の使途
悪魔将軍バラマセーゼル=「ブルガバス」

ブルガバスさん…至点の戦士とは戦いたくない、ノロマな自分とは違う新しい自分になりたい、とは言ってたけど、まさかこんな見た目の悪魔将軍にされるとは思ってなかったんじゃないかな…。言動にブルガバス感は全然なくなってるし、記憶はちゃんと消してもらえた様子。
"Sea of Stars"のトゥルーエンドだと、エルリナさんも同じ世界に飛ばされて再開できたようで。あの描写は良かったですね。

あと星の海からセライの世界に行くシーン。あそこはスーファミ16bitテイストから、プレステ32bitのようなテイストに一瞬表現が変わったけれど、あればThe messangerの8bit→16bitのセルフオマージュなのかな?もしかしたら本当はセライの世界はガラッとポリゴン描写にしたかったんですかね。

世の中には最高に楽しめた人もいたという話

で、クリア後に知りましたが、"The Messenger"がリリースされてから、"Sea of Stars"がリリースされるまでの間、製作者とファンの間では公式Discordサーバーにて、ARG(alternate reality game:代替現実ゲーム)という遊びが行われていたらしいです。詳しくはもとさんの以下のnoteを参照ください。

こういうゲームに参加するのはとても楽しいだろうし、リアルタイムで参加して"Sea of Stars"を心待ちにしていた人にとっては、ゲーム内のセリフをより深く、十分に理解できたと思うし、どっぷりとハマれたんだろうなぁと思う。二人の錬金術師の間の関係とか、何を考えていたのか、とか。
…だけれど”Sea of Stars”というゲームから遊んだプレイヤーに向けても、もう少し綺麗にいろいろと後始末をつけてくれたら、もっと良かったなぁという想いは正直あります。トレイラーが魅力的だった分、そういうプレイヤーは多いと思うんですよね。

UXデザイン的に言うと、遊ぶ前の予期的UXが素晴らしいものであればあるほど、遊んだ時の一時的UXがイマイチになってしまったら、その落差が累積的UXの形成に影響してしまう、ということですね。

とはいえ!前回の記事でたっぷり書いたように、システム部分やグラフィック、BGMについては文句なしで素晴らしいゲームであることは確かです。

開発中とのウワサのDLC、ストーリーが補完されるような内容だと嬉しいな~。
ということで長くなりましたが今回は以上です。
読んでくださってありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?