冷めたコーヒー

私の家族には同じ習性がある。

それは『コーヒーメーカー淹れたコーヒーを忘れる』
というものだ。

朝忙しい母親や寝起きの父親が忘れるのはまだ理解できる。しかし、しっかり者の姉までも同じことをするのだ。

さらに言えば、父母ともに朝だけでなく夕方にコーヒーを作っても忘れる。

あのコーヒーメーカーは熱々の美味しいコーヒーを提供出来ずにいるのだ。かわいそうに。

あっ、コーヒー作ってたんだった。

そして初めてしてしまったかのようなリアクション。

幼い頃からホットミルクを飲んできた私は毎日行われる謎のイベントを不思議に眺めていた。

しかし先日、ある共通点を見つけた。

3人ともコーヒーを淹れている最中、その場を離れ、一度こたつやストーブで暖を取るのだ。

そして一言

ああー寒い寒い。

十分に温まった後、トースターでパンを焼いたり、テレビを見たり、会話を始めたりする。

それを見て思った。
この人たちは自分が温まったから出来立ての温かいコーヒーなどもう頭から寒さと一緒に飛んでいってしまっているんだ。と

別に体が温まったら飲むコーヒーは別に温かくなくていいんだな、と自分の中でなんとなく納得した。



高校を卒業してもう4年が経つ。
18歳までの僕と違ってコーヒーも飲むようになった。

朝起きて温かいコーヒーを飲みたくなる親の気持ちも分かるようになってきた。

久しぶりに実家に帰省し、朝コーヒーを淹れて朝ごはんを食べ、出かける準備を始める。

東北の朝は寒い。
コートを着て、手袋をして家を出る準備を終え、
忘れ物がないか家の中を見渡す、

コーヒーメーカーの下には
自分の淹れた冷めたコーヒーがある。

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