コロナワクチン供給の不備を若者に擦り付ける社会

東京都が若い世代のコロナワクチン接種を促す事業を予定する一方、若者を対象した渋谷のコロナワクチン接種会場に希望者が殺到

 東京都は、コロナワクチンの接種が進まない理由として「若い世代がコロナワクチン接種に消極的」と認識し、若い世代のコロナワクチン接種を促すための事業を行うために10億円の予算を計上します。

 この東京都が行う事業は、若い世代にコロナワクチン接種を呼びかけるWeb広告や動画の配信、コロナワクチン接種済の若者が各種店舗で割引などのサービスを受けられるようなアプリの開発となってます。

 その後、東京都が若い世代(16~39歳の都内在住者、都内へ通学・通勤者)向けに予約なしでコロナワクチン接種が可能な会場を27日に渋谷に設置します。すると、初日の早朝から多数のコロナワクチン接種を希望する若者が会場に殺到し、長い行列を作ることになります。

 東京都は渋谷のコロナワクチン接種会場で200人程度を見込んでいましたが、予想を上回るコロナワクチン接種希望者が集まったことから、東京都の担当者が先頭に並んでいる順に接種のための整理券を配布し、午前7時の時点で整理券が無くなって「受付終了」となります。そして、28日以降は、会場に集まった希望者の中から抽選でコロナワクチン接種者を選ぶことになります。

 コロナワクチン接種を希望する多数の若者が会場に集まったことから、当初の東京都の認識である「若い世代はコロナワクチン接種に消極的」は、実態とは大きくかけ離れていたことになります。

 しかも、コロナワクチンの不足により、並んでいた希望者全員に整理券を配れない、接種対象者を抽選で選ぶなどから、東京都が責任持ってコロナワクチンを確保できていなかったことも露呈したことになります。

 いくら希望者がコロナワクチンの接種を求めていても、行政や社会が希望者の人数分のコロナワクチンを用意できない、さらには接種券そのものが届かないとなれば ワクチン接種が進むはずが無いだろう。ワクチン供給の不備から目を逸らさせるために、若い世代の意識の問題にすり替えたようにも見えなくもない。

 そして、コロナワクチン接種を希望する若い世代が多数いることが可視化されたことから、若い世代にコロナワクチン接種を促すための事業は不要になったのではなかろうか?この事業のための予算を見直すとともに、コロナワクチン不足の解消などのために回してもらいたいです。

行政や社会が若者に責任を擦り付けるのは、今に始まったことでない。

 今回の東京のコロナワクチン騒動のように、行政や社会の失態から目を逸らさせるなどの目的から、若者に責任を擦り付けることは今に始まったことではない。

 長期間的外れな対応をされて解決困難になってしまった氷河期世代問題についても同様のことが言えます。

 国の経済・労働政策の失態、社会による対応の拙さなどにより正規雇用の枠が大幅に減少しましたが、多くの方がそのことに目を向けて責任追及する動きが起きないように、メディアなどを通じて「若者が正規雇用をさけている」「非正規雇用による自由な働き方」「若者の働く意欲の問題」などの言説が垂れ流され、当時若者だった氷河期世代当事者の意識の問題としてすり替えられたようなところもあります。

 その結果、氷河期世代当事者向けの(マトモな待遇の)雇用の受け皿が用意されない一方で、「当事者が正規雇用に就くように矯正する」みたいな氷河期世代当事者の実態とはかけ離れた支援メニューばかりが溢れることになります。これでは、めぼしい成果が出ないばかりか、ますます状態が悪化して解決が困難になるのも仕方ないだろう。

若者に責任を擦り付ける動きを止めるために、若者の方からも動く必要があります。

 理不尽な若者叩きに対抗するためには、若者の側も何らかの行動を起こす必要があります。黙っていたら、若者叩きを既成事実化しかねない。

 まず、18歳になって選挙権が与えられたら、毎回の選挙に行って投票することは最低限必要になるだろう。

 どこの政党・候補者が当選しようが、投票総数に占める若者票が少なければ、若者に向き合わない政治が行われるようになります。そうなると、何かのトラブルが起きた際に、若者に責任を擦り付けて片づけるようなことも頻繁に行われることになります。逆に若者票が多ければ、若者に向き合った政治をやらざる得なくなり、安易に若者に責任を擦り付けにくくなります。

 さらに余裕があれば、若者の権利団体を作って、何らかの運動をすることも考えてもらいたい。活動内容については、若い世代の声を社会的に可視化することや、理不尽な若者叩きに対して抗議その他の反撃をしていくことなどが挙げられます。

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