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まだ間に合う『守護神 山科アオイ』第1話~36話のあらすじ

 連載中の『守護神 山科アオイ』、次回37話から読み始めてもお楽しみいただけるよう、第1話から第36話までの展開を整理しました。ごひいきの程、何とぞよろしくお願い申し上げます。

#36までの『守護神アオイ』 - コピー

1.前日譚(Prequel)

 初めに、この小説版『守護神山科アオイ』が始まる以前の経緯をお話します。本編の前日譚にあたります。この内容については、連載の中では間接的、断片的に触れていきます。

1-1.  山科アオイ、人間兵器に改造される 

 父親の仕事の関係でアメリカで生活していた15歳の少女、山科アオイは、両親とのドライブ中に交通事故に遭います。両親は即死。奇跡的に軽傷で助かったアオイはCIAの秘密研究所に送られ、衝撃波発生能力を備えた人間兵器に改造されます。
 CIAは、日本をはじめ東アジアで暗躍する反米テロリストを暗殺するため、アジア人で、それもテロリストに警戒されにくい少女を人間兵器に改造する計画に着手しており、アオイはその第一号でした。

 アオイの改造にあたったのは、CIAの特殊兵器開発者、慧子・レノックス博士です。慧子はそれまでCIA工作員の志願者を人間兵器に改造していましたが、米国人以外の、しかも少女を人間兵器にする計画には反対でした。
 しかし、CIAから改造を拒めばアオイを殺すと脅され、やむなくアオイを改造します。ただ、アオイが暗殺任務に使われずに済むよう、殺傷能力を与えませんでした。

 アオイは14歳から15歳までCIAの秘密研究所で暗殺訓練の日々を過ごします。しかし、当然ながら殺傷能力は発揮できません。
 アオイは人間兵器に改造された理不尽に怒りつつも、兵器として不良品呼ばわりされることも、また耐えがたく、何とか殺傷能力を発揮しようと厳しい訓練に挑んでいきます。CIAに知られることを恐れアオイに真実を告げられない慧子は、悪戦苦闘するアオイを前に苦しむのでした。

1-2.   山科アオイ、逃走しCIAの追っ手を撃退する

 CIAは、見切り発車でアオイを日本での反米テロリスト暗殺作戦に投入すします。アオイの衝撃波でテロリストを即死させることは諦め、衝撃波でテロリストを事故に巻き込み暗殺しようとするプランでした。
 ところがアオイに同行していたレノックス博士がCIAを裏切り、アオイを連れて逃走します。実は、博士はアオイが日本に派遣される機会をうかがっていたのです。CIAは人間兵器の存在を日本政府から秘匿しているため、アオイが逃走しても捜索に日本の警察の協力を得られないことを、博士は見越していました。

 CIAに追われる二人の前に幸田 幸太郎と名乗る男性が現れます。幸田は、アメリカのDCIS(Defense Criminal Investigative Service=国防犯罪捜査局)の元捜査官で、捜査官時代に交流があったイアン・ステューディ上院議員からアオイと慧子の保護を依頼されたのです。ステューディ上院議員は、CIAの人間兵器計画を察知し、それを阻もうとしていました。
 CIAの追っ手を撃退したアオイたち3人は、幸田がステューディ上院議員から紹介されていた「シェルター」というグループに接触します。「シェルター」は国家、企業、反社会的勢力などの組織に狙われる個人を匿う有志の市民グループでした。
 アオイと慧子は「シェルター」の保護を受けることとなり、幸田が「シェルター」の一員となりアオイと慧子の「世話役」を務めることとなります。

1-3.   山科アオイ、再びCIAに追われ、撃退する

 アオイたちが「シェルター」に匿われてから1年後、アオイが16歳のとき、アオイと慧子はCIAに隠れ家を突き止められてしまいます。保護下にある他の人々に危険が及ぶのを恐れた「シェルター」は、アオイと慧子を追放、「シェルター」の一員となっていた幸田は、「シェルター」を離れアオイたちに合流します。

 アオイたち3人はCIAの追っ手を撃退した上、彼らの日本国内での非合法活動を白日のもとにさらすことに成功します。CIAは各国の諜報機関の関心を集めてしまい、安易にアオイたちに手を出すことができなくなります。アオイたちとCIAの間でアオイたちが反米的な動きをしない限りはCIAもアオイたちに手出しないという密約が交わされ、アオイたちとCIAは停戦状態に入ります。
 アオイたち3人は「シェルター」に呼び戻されますが、「シェルター」内で保護されるのではなく、「シェルター」専属の用心棒として働くこととなります。

2.疑惑の警護対象、和倉修一

 アオイと慧子が「シェルター」の命で、製薬会社の研究員・和倉修一の警護に赴くところから物語の本編が始まります。 幸田は、和倉の前には姿を現さず、距離を取ってアオイ、慧子、和倉の動静を見守るバックアップに回ります。

 和倉は、勤務先「創生ファーマ」の違法なヒト臓器購入を内部告発したところ「創生ファーマ」から命を狙われることになったと言い「シェルター」に保護を求めてきました。ところが、アオイと慧子が接触すると、彼がもっと複雑な事情を抱えていることが、次々と明るみに出ます。  

 まず、和倉の命を狙っているのは「創生ファーマ」ではなく国際的な臓器密売組織であることが判明します。
 つづいて、NGO「〈顧みられない熱帯病〉と闘う会」に雇われ産業スパイ狩りをしている探偵、宝生世津奈とコータローが和倉と接触しに現れます。世津奈とコータローから追及された和倉は、自らが開発した画期的な抗マラリア新薬の技術情報をアフリカの独裁者エウケ・レ・レに売り渡したことを白状します。  
 和倉は、勤務先の「創生ファーマ」が抗マラリア新薬の商品化を拒んだので、貧しいアフリカの人々を救いたい一心からアフリカ全体に大きな影響力を持つエウケ・レ・レを利用しようとしたと主張するのでした。

 和倉への疑惑を深めるアオイたち。そんな状況の中、謎の集団が「〈顧みられない熱帯病〉と闘う会」の女性職員を誘拐し和倉との交換を求めてきます。アオイたちと世津奈たちに選択の余地はありません。
 アオイ、慧子、世津奈、コータローの4人は和倉を連れ、指定された人質受け渡し場所に向かいます。幸田を危険に巻き込むのを恐れた慧子は、幸田には人質交換のことを告げないのでした。

 人質交換の場で、なんと、和倉はアオイたちを裏切り自ら謎の集団に身を投じます。アオイの活躍で人質は取り返したものの、和倉から筋弛緩剤を注射されたコータローが病院に搬送されることになり、警察の介入をまぬかれない状況となります。
 「シェルター」には警察から身を隠している人間もいるのでアオイと慧子は警察と接触することはできません。やむなく、二人は世津奈、傷ついたコータローから離れ、別行動をとるのでした。

3.危険な活動を命じられるアオイたち

 和倉の背景が真っ黒であることを思い知らされたアオイたちと世津奈。特に、相棒のコータローを傷つけられた世津奈は和倉に怒りを隠せません。
 アオイ、慧子、世津奈は3人とも和倉との縁切りを望むのですが、それぞれの雇い主が、そうはさせてくれません。
 
 幸田と合流したアオイたちは、「シェルター」から和倉が接触してきた目的を探れと命じられます。世津奈の前には彼女の警察官時代の上司、佐伯警視正が現れます。今では警察庁の上級幹部となった佐伯は、世津奈の同僚が銃刀法違反を犯したことに目をつぶる代わりに世津奈が和倉を探し出すよう強要します。 

 世津奈は、恩人で闇社会に通じた九鬼 昇平を「バー・マーロウ」に訪ねようとしますが、佐伯警視正に動きを読まれ同行されてしまいます。 
 ところが、九鬼と佐伯は2人ともハードボイルド・ファンであることが分かり、和倉捜索の件はそっちのけで、2人はハードボイルド小説の話に興じ始めます。 

 一方、アオイたちは、和倉研究員を「シェルター」に紹介した遠山教授に探りを入れます。遠山教授は和倉の恩師であり、「シェルター」内の有力人物とつながりがあったのです。遠山教授のパソコンをハッキングしたアオイたちは、教授が長年にわたって米軍から研究費の助成を受けていたことを知ります。

 CIAとは停戦状態にあるとはいえ、米軍がアオイたちに牙を剝いてくる可能性があります。幸田はこれ以上の真相追究は危険だと「シェルター」に訴えますが、「シェルター」は、調査の続行を命じます。 

 アオイはCIAと米軍から付け狙われ、頼みの綱の「シェルター」からは駒のように扱われる自分の身の上に怒りを炸裂させるのでした。

〈「37. 面会強要」につづく〉