退職と風
今、人生2回目の、退職に向けた日々を過ごしている。1回目は今から6年ほど前。今は、去る身として着々と工程を踏んでいる。引継ぎやら、身の回りのものを捨てたり、人に託したり。
前回の6年前と共通点があった。それは、風に対して何かしらの感情を抱く瞬間があったということ。退職は無関係で、ただ季節の変わり目だとかそういうことかもしれないが。
1回目の時は、電車を待っている時、そよ風が吹いた。天気の良い日で、冬にはなりきれていない秋で、風も透明で澄んでいた。風を身体が受け止め、なんかいいな、と思ったのを覚えている。確か映画を見に行く時の移動時か、帰り道だった。
そして現在、早朝に顔を見せる、秋の始まりみたいな風に遭遇する日々が増えてきた。その度に、おっ、と思う。季節が変わろうとしている、と。
実際のところはわからないが、退職が決まり、つまり一つの決心がなされ、心のどこかしらにスペースができたのかもしれない。
退職に向けた日々を過ごしていると、あ、これをやるのはこれで最後なのかな、この人と話すのはこれで最後なのかな、こういう感情をここでもつのはこれで最後なのかな、とかやたらと最後をどこかしらで意識している。
退職は実に気持ちがいい。もう、私は去る人であり、ありありとそう認識しているし、周りもそう思っている。紛れなく一致している。もう、私は組織の人ではなく個人なのだ。
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