FLEX TIMES『和鉄』③
自分たちの"愛してやまない"を深く知る
FLEX TIMES 第1回目はラーメン屋「和鉄」
ーーあと聞きたいのがトッピングについてですが。
うちは『中華』と『つけ』しかなかったから、バリエーションを考えたら、トッピングである程度変わるじゃん。なんでもいいからというわけにはいかないんで、つけそばとラーメンの味を壊さないものをトッピングを選んだね。
あとは季節があるんで、月替わりトッピングと味を壊さないトッピングをやろうと思って始まったね。基本的に無料で始めたのは利益還元っていうのもあるし、多少囲い込みみたいなところもあるよね。
ーー無料にしたのは確か途中からでしたよね。
これはね社員が考えたんですよ。こういうのやりましょうって言われてね。基本的には社員が考えてくれたことはやるスタンス。
自分にあまりそういう発想がないからっていうのもあるんだけど。
お客さんは結構、一種類の味しかないのにトッピングで楽しめるようになっていいんじゃないかなと思うよね。
ーーいまだに刻み玉ねぎは(トッピングとしてではなく)無料でやっていますが、最近は価格もかなり上がっていませんか。
あの頃は確かにね。いまはかなり高くなったね。焦がし玉ねぎはさすがにコストも大変だからやめようってなったよね。まあ結局はお客さんの希望だよね。
ーーミニチャーシュー丼無料もとても嬉しいサービスですよね。
あれもお客さん目線で考えてだね。ラーメンって基本昼に食べるものでディナーには向いていないんだよね。サクッと食べて仕事に戻る。麺だから消化にも良いのでね。夜になると腹にたまらないと食べた気がしない。夜中にまた腹が減るってなるから、ご飯をサービスしようとなった。
白ご飯とかをサービスしているところは結構あるけど、白ご飯じゃあんまり嬉しさがなかったので、チャーシューの捨てていたしっぽの部分を使ってはじめたけど、結構お客さんは待っててくれるし、良かったなって思うよ。
基本的にはお客さんがどう感じるか、何を欲しがっているかを常に考えたほうがいいだろうなって思うよね。
ーー今思うと学生特盛無料も昔はやっていましたし、あれは本当にありがたかったですね。私たちもたくさん食べていましたから。
それも社員が考えてやってたやつだね。
ーー小林さんは社員が考えたことについてコストとかを考えてGOを出すようなイメージですよね。
そうだね。基本僕の仕事は営業マンだからコストを考えたり、業者との交渉だったりだね。つけそばとラーメンの麺は元々別々の業者に頼んでたんだよね。最初はつけそばを細麺でやってたんだよね。そしたら結構有名なラーメンフリークの大崎さんって人が「ちょっと、つけにこの麺じゃ弱いんじゃないの。」って言ってね。じゃあ太麺にしようってことになったんだよね。
小麦の値段が上がったっていうから業者が値上げをしてきたんだよね。
つけそばとラーメン別々の業者から入れていたから、つけそばとラーメンの麺の発注を一つにまとめて安くしようと考えたわけ。
つけそばの麺はどの業者でも比較的同じものを作れるんだけど、
ラーメンの麺は、よそで頼むとちょっと違うなってなったんだよね。
ただラーメンの麺を作っている業者は最初値下げをしてくれなかったわけ、
だからつけそばの業者にも確認をして、
「うちはつけそばの方が多く出るから、つけそばの麺を発注しているところで中華の麺も一緒に頼むと安くしてくれる。」っていうことを、言ったら中華そばの麺を発注していたところも「じゃあ下げます。」って話になったよね。
ーー営業マンですね。
でも、最初はど素人だったから仕入れは築地に行っていたんだよね。
築地の乾物屋を回って揃えてた。
すると売上は上がったんだけど、儲けは全くないんだよ。どうも仕入値がまずくてさ、いろいろ調べたんだよ。肉屋もそうだけど同じ肉なのになんでこんなに値段が違うんだろうとかね。
築地はねやっぱりブランドがあるんだよ。値段が本当に2割違った。
そこから、いろんな業者見つけて、一時40何%原価にかかってたから、そこからいろいろ調べて結構抑えたかな。そういうところも長生きできた理由かなってのもあるよね。
ーー全くつてがないところからのスタートですもんね。
そうそう。普通どっかで修行してノウハウを学んで、仕入れ先を知ってたりね。
うちをやめた社員で、うちが使ってた仕入先を使っている店もあるよね。
やっぱりインフラって大事で、ある程度、情報や交渉で一番ベストなものをどこもやろうと思うからね。一回もそういうところにぶち当たることはなくて、結構有名になったんで、ダイレクトで「安くします。」とか来るんだよね。本当かよって思って電話したりさ。
今の取引先に新規でこういうのがきたんだけど、おたくはこのままでもいいのとかって言うと「うちも下げます。」なんて言ってね。取引先は取られたくないわけだからいかに安いところを見つけるっていうのも大事だよね。
でもあんまり業者をいじめるのは良くないんだけどね。
麺なんかは、本当はつけ麺屋の方に行ったほうが安かったんだけど、中華の麺はうまくいかないからそこは高いほうを選ぶ。簡単に安いからって理由だけで飛びつくこともないけどね。
ーーお店の外観や内観のこだわりについて聞かせてください。
外観はね、ラーメン屋をずっと食べ歩いていたらみんな赤とか黄色を使うからさなんか同じだと嫌だなって。
うちは和風だったんで、魚をイメージして青にしようってなったんだよね。でも青だとさ、飲食じゃないって言われたんだよね。「食欲がそそらない。」とか「寒々とする。」って言われたけどそんなのいいじゃんって思って、青にした。
内装はカウンターを広くしようと思ったよね。うち結構広いでしょ。結構、ラーメン屋に行くと隣同士が狭いんだよね。
設計屋さんになるべく幅を取ってどんぶりを置いてもゆったりできるように前と横を広くしてよって言ったね。
ーーカウンターの後ろもスイスイ通れますもんね。カウンターの幅もすごく広いし。
うん。
ただね、虎鉄はね。設計屋さんもなんか難しいですねって言われちゃってね。でもうちの従業員がここでやりたいっていうからね。
ーー虎鉄の店長はもともと和鉄の社員だったんですね。
そうそう。将来自分が飲食抜けたら、本当は彼に全部任せようと思ってたんだよね。自分たちは飲食の人間じゃないんで。彼は本当に優秀だったんでね。それで内装とかも全部任せたんだよね。
ーー味は和鉄と違ってこってり系で、内装の雰囲気もかなり違いましたもんね。
そうだね。豚骨のちょっと次郎っぽいような。そういうのでやりたいって言うからね。内装も刀を置いていたんだけど、刀の名前が『虎鉄』っていうんだよね。中国の古典で弓矢の名手がいて、イノシシだと思って打った弓矢が岩に刺さったと。『念ずれば石も通す』という意味合いで虎鉄って話で。名刀か妖刀だったかな。ルパン三世の石川五右衛門の斬鉄剣は虎鉄と叢雨をつぶしてつくったっていうのを知ってたんで、じゃあ虎鉄でもいいやって話がまとまったんだよね。それでねネットでね、模造品かなんかを漁ったんだよね。今も居抜きになっているからそのまま刀残ってるのかな…。
ーー定番ですが、やりがいは。
常連さんが赤ん坊のころから、親が来なくなっても子供が来るようになってね。さっき言った会社の人が部下を紹介してくれるとかね。
金融屋さんはあんまり人の顔が見えなくて、マージンのビジネスだからね。それとは違って、顔が見えて「美味しかった。」って言われるのが一番だね。
幼い頃きていた子が大きくなってから常連だった親と来たりして、あの子だったのかと気づくのも楽しいしね。
ーー本日はどうもありがとうございました。
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