個人トレーナーの思い出 【天才】から見た普通
僕が宮本慎也選手の個人トレーナーとしてお仕事させて頂いていた時の話です。
慎也さんはいつもマッサージを受けながらテレビでプロ野球のニュースを見ます。所々で慎也さんから聞ける試合の解説はいつも興味深く、とても楽しかったです。
そのニュースの中の試合でショートの選手がエラーをし、送球を諦めたシーンがありました。しかし、打者は凡打を打った途端にのんびり走っていたので、ショートの選手が諦めず急いで投げていればアウトでした。
それを見た慎也さんが
【原沢、見たか今のプレイ。エラーしてもすぐ投げればアウトじゃないか。このショートは走ってる打者も見えないのか】
と言ったのです。
僕も野球をやっていましたが、ゴロを取る時に走っている打者なんて見えた事はありません。
【え?慎也さん、ショートゴロ取る時に打者が走ってるの見えてるんですか?】と聞きました。
すると少し笑いながら【当たり前だろ。俺らはプロだぞ。ゴロ取る時に走ってる打者なんて見えてるよ】と答えたのです。
僕は【いやー、慎也さん。普通見えないと思いますよ。他の選手に聞いてみてくれませんか?】とお願いしました。
一応聞いてみると答えてはくれましたが、答えは分かってると言う様に見えました。
翌日の夜、村中選手の治療が入っていたので、慎也さんとこんなやり取りがあったよ、と話しました。
すると村中君が【そういえば今日、ロッカーで慎也さんが野手を集めて話をしていましたよ。なんか(ウソー!)とか声がしてました】と教えてくれたのです。
後日、慎也さんの治療の時
【原沢!俺はビックリした!みんなゴロ取る時、走ってる打者が見えてないらしいんだ!俺、見えるんだよ!】
と答えが返ってきました。
天才は周りから見て天才であって、自分自身の中では【普通】なのかも知れません。
僕にも一つくらいそんな所があれば良いな。