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Japan FoodTech Festival 2019~食の世界に挑戦するイノベーターたち~

テック系メディアCNET主催のJapan FoodTech Festival 2019に参加した。

飢餓、人口増加に伴う食料不足、食品安全、食品ロス、農業や小売業の人材不足、個食・孤食など、食を取り巻く問題の解決を図るためFoodTech(食:Food×技術:Tech)の力を活用しようという議論が白熱している。

FoodTech業界の動向紹介では、4,000社にものぼる企業のうち確固たる地位を築いた企業はほんの一握りであり、数年後の業界の趨勢は未知とのこと。またFoodTechが応用される分野は大きくわけて、農業生産管理、代替肉、加工、物流、小売、レシピやメニューの提案、パーソナルデータに基づく食の提供等があり、中でも世界で今最も成長が著しいのが物流という。東京でもUber Eatsのリュックを提げて自転車で颯爽と走る人をよく見かけるようになったが、欧米やアジアでも競合同士がしのぎを削る状況だ。一方、人材不足に対応すべくレストランでのロボットによる調理や食事の提供に向けた実証研究が行われているが、こぼす・汚すなどのロボットのミスをカバーするために人が2名以上配置されるなど、いまだ開発発展途上と言わざるを得ず、中には、テクノロジーを活用したことで却って不便やコスト増につながる製品やサービスも散見されるという。しかし、未だ解決の糸口が見えない食にまつわる課題を解決するためにFoodTechは依然希望の星であり、大手BigTechカンパニーのGoogle, Amazon, Facebook, Appleの食分野への投資は急増している。しかし実は日本のソフトバンクグループがこの分野での投資額世界1位であることはあまり知られていない。

電通グループが産学連携で取り組むOpen Mealsプロジェクトは面白い。「食のデジタル化」を掲げ、食がインターネットに接続することで「食のSingularity」が促進され、爆発的な食の変化が起こるとしている。世界最大のTech分野の祭典である「サウス・バイ・サウスウェスト2019」では、2020年開店を目指している "超未来体験型レストラン”を紹介。個人の健康指標やバイオデーターに基づき、寿司に配合されるべき栄養素を決定、来店後お客さんが寿司をオーダーすると、パーソナルデータからの指示に基づいて機械が栄養素を注入、3Dプリンターが寿司を握り、最後に人間の寿司職人が仕上げをし提供されるというものだ。3Dプリンターの強みを生かし寿司の形も精巧かつユニークなものにカスタマイズ可能な設計である。3Dプリンターによる寿司握りは現在1貫あたり50分かかるがすでに開発済みの技術であり、寿司Singularityレストランが開業する日はそう遠くないのかもしれない。

同じく電通グループが発表した「Future 2100」はさらに興味深い。国や地域ごとの「個別」から世界どこにいても味わえる「再現」へ、「栄養摂取」から「体験」へという「食の価値」の変化がよくわかる内容だ。2020年代には同じメニューでもパーソナルデータや嗜好(ビーガン、ハラル)に沿った材料で作る食事が提供され、2040年には食を中心として運動・生活習慣のアドバイスも含めたウェルネスライフを提供するライフコンシェルジュサービスが各家庭で利用でき、2050年には3Dプリンターにより食事が再現できるため、日本と海外で映像を通じて会話をしながら同じ食事が楽しめるようになり、2060年には途上国でも食料が3Dプリンターにより作られ飢餓が解決する、2090年にはパーソナルデータに基づき栄養素は常にパーフェクトになるため人々は「教育」「ファッション」等食に新たなる価値を求めるであろうという内容だ。あくまえ空想の世界ではあるものの、こんな世界が実現したらどんなに面白いだろうとワクワク感が抑えられないのは私だけだろうか。

大企業や大規模農家が中心となりFoodTechを推進していくであろう一方、小規模の農家にとっての未来とは何か?そんな問いに答えるべく、農家と消費者が直接つながり、売買するECプラットフォームを運営する2社によるパネルディスカッションも盛り上がった。会場から次々に質問が繰り出され、例えば送料を含めると割り高といえる農産物が本当に売れ続けるのか?人手不足が喫緊の課題である運送会社を圧迫することにはならないか?消費者向けの小口販売では農家にとって効率が悪いのではないか?農協との関係は? この分野で名が知られつつある3社は競合か仲間か?についてパネリストが回答し議論を深める内容であった。消費者にとっては「顔が見える」「安全安心」「特別な日や大切な人への贈り物」として利用でき、生産者にとっては消費者からの反応や評価がモチベーション向上や売り上げアップにつながり双方にとって良好な関係が築けているようだ。

FoodTech産業に携わるか否かに関わらず、誰もが関係する「食」の未来に想いを馳せ、将来の食の在り方を楽しみにしつつ、一消費者としてどのような行動をとるべきか考える良い機会となった。この分野はとてもホットで、毎月のように展示会やセミナーが開催されている。時間のある方は足を運んでみてはどうだろうか。



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