第二次世界大戦がうんだ私の離婚


中国の日本の国際結婚と聞いて思い出すのは
ラストエンペラーの弟夫妻。
戦争や時代に翻弄されながらも愛し合う2人の歴史は私の中での希望であった。

しかし、私が体験した現実は
そんな希望なんてのは欠片もなかった。

ある中国人の男性と恋をした。
結婚、出産をしたが
コロナも流行り出産時も婚姻届を出す時すらも私は1人だった。

出産して8ヶ月後、やっと男は来日。
その1ヶ月後第2子妊娠、まだ21歳の私は
自分の体力的に歳を離して出産すると体力も追いつかないと思い、計画的に妊娠した。

しかしその3ヶ月半後、私は夫を追い出すことになる。

「日本人、俺の国の人間、沢山殺したヨ!!!」
ある日突然、そんなふうに怒る旦那。
きっかけは
私が靖国神社へ参拝したこと。

私の祖父は戦争時代、医者だったらしく
運ばれてくる人間はどの国の患者でも助けていたらしい。
幼い頃から母に「人は争うものじゃない」「お互いの存在を尊重し合うものよ」と教わっていた私は
日中の戦争の歴史を知った時、名も無き兵士たちの散った命に今を生きる人間として1度手を合わせたいと思っていた。

そんなある日、東京に用ができて、ついでに靖国神社へ出向いた。
そこが中国人にとって、受け入れ難いことだとしても
私の祖父のようにその時代から国籍を超えて助け合う人間がいた事実も存在する。
だからそこに名を刻まれた一般兵に手を合わせるつもりで参拝した。

しかしそれを知った旦那は激昂。

そいつらが中国人を殺したんだ!
戦犯たちの墓に手を合わせるなんてどういうつもりだ!日本人の兵士は皆死んで当然なんだ!
中国人の配下にあるべきじゃないのか!

私が参拝した理由を言っても自体は変わらなかった。

名も無き兵士なら散って当然だろう!自業自得だ!死んでよかったじゃないか!

そんなことをほざいていた。

言い返す私は、頭の中で冷静な想像を広げる。
もし私の子供たちが、今の私のように中国人にとって都合の悪い場所に修学旅行などで行った際はどうなるのだろう?

半分日本人ということを理由に、私の知らない中国語でいつか子供が嫌な目に遭わないだろうか。

そんなことを考えていた。

妊娠しててその時はまだ安定期にも入っていないのに、そのお腹を目掛けてものを投げてくる旦那の姿
激昂した父親を見て、手を伸ばしながら泣く長男、そしてそれを振り払い殴りかかりそうになる父として何一つ正しくない姿。
色んな想像や現実がひとつになった時、私は彼にみせたことの無い力が働いていた。

そっと来日してきた時に持ってきてたキャリーケースを押し入れから出すと
彼を目掛けてぶん投げる。
数十キロあるそれはだいぶ重かったが、そんなことはどうでもよかった。

「今すぐ出ていきなさい!ここにいる資格はあなたにはありません!!」
そういう私の言葉には、彼が暴れてるこの場所がそもそも私の実家であり
彼の言う日本人の家であるからである。

まとめてしまえば
彼は日本人をこき使いたい、そうあるべきだという主張と
靖国神社への批判をした上で私に戦争責任をとってみろという挑発をしているわけで
彼を落ち着かせて仲直りすることなんてしなくていいと思えた。

抵抗する旦那を押しのけ、彼のものをどんどんキャリーケースに移す私。まとまったケースを勝手に玄関へ運び、彼の腕を掴んで外へ出した。

日本が嫌いなら日本に居なければいい。
私は人を殺していないのだから私に怒るのはお門違いだ。
この時点で、私の心には、子供たちの敵、という見方で夫が目に映っていた。

無事追い出したが離婚も簡単ではなかった。
千手を打って私が離婚届を出しても無効になるよう手続きをしつつ、生活費や養育費は払わないで逃亡する旦那。
そしてようやく離婚できたかと思えば
「もう母国に帰ってるもーん」というような挑発文章が中国語で送られてきた。


嵐のような時期だった。
その日々から
まだ1年と少ししか経ってない。

ストレスは身体に出るもので
昔から抱えていたうつ病にわをかけて病状は悪化。脱毛症にもなった。
その最中、コロナもあり1人で出産した第2子が元気な女の子であったことは何よりの幸福だった。

20~23歳にかけてだいぶ波瀾万丈な時期をすごしたと思う。
そしてその時期はまだ続いている。息子の成長がそれを物語っている。

しかし
私にはどうしようもない責任を彼が背負わせようとしていたことで
戦争は本当に何もかもを壊すのだと身をもって実感した。

おじいちゃん、ごめんよ。
あなたが繋ごうとした国の縁は、完全に私が受け継ぐことが出来なかった。

それでも
ふたつの国の
…いや、私自身がアメリカの血が入ってることを考えれば3カ国の血を持つこの二人の子供を
平和で暖かな世の中で育て上げようと思う。

それが、今私のできる精一杯である。

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