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詩| 青春

早朝の3番線ホームは空に浮かんだ孤島みたいだ。しんとした空気に凍える指で、信号機の赤を長押しする。企みが失敗すれば始発電車がやってくる。世界の一時停止を願う天空の使者、もとい選ばれざる私は、こうして世界に一人だけのとき、昨日までより幸福である。
連日の雨で早くも桜は靴底色に塗れてしまった。寒さに晒された分だけ力一杯咲く花を、理不尽に散らす雨などは、絶対悪だと言ってやる。青空だけがあればいいのに。膿んだ心臓を丸ごと引っこ抜いてくれそうな快晴の空。だから人は空を見上げる。だから私は青空が怖い。 
単純なことを複雑にすれば何でも悲劇にしてしまえる。帰り道からドラマを差し引いたら悲しみだけが残ってしまう。ルール・ブルーの通学路が何よりも好きだった。果てしないほどに悲しい色だね。出会いも別れもモノクロな春。勝手知ったる交差点で、また青が灯る。