都市部でのドローン普及への障壁
はじめに
昨今、イベントでドローンによる展示飛行が行われたり、ドローンがテレビ撮影で使用されたりとドローンが私たちにとって身近な存在になっている。さらに趣味にドローンの操縦を挙げる人も珍しくなく、家電量販店でも手軽に入手することができるようになってきた。
このように身近な存在となったドローンだが、いまだに実現していない利用方法がある。都市部での物資輸送だ。物資の輸送にドローンを利用できれば、人件費を節約することができ、物流の迅速化に繋がると言われている。離島や山間部での実証実験は行われているものの、都市部での導入には大きな壁がいくつもある。この記事では、それがどのようなものなのか、そしてどう乗り越えていくべきなのかを検証していく。
安全性の問題
まず一番に挙げられるのが安全性の問題である。ここでは事故に関する安全性と、物流における安全性の二つの問題を取り上げたい。
事故に関する安全性は最も多くの人が考える課題である。ドローンが頭上を飛ぶ社会が実現するとどうなるか。風に煽られたドローンや、電源が切れたドローンが上から落ちてくるかもしれない。何らかの弾みでドローンから積荷が落下するかもしれない。さらに、ドローン同士の接触事故やドローンと航空機の接触事故の可能性も排除することができない。そういった事故に対する法整備や規制が行われない限りドローンが人口密集地上空を飛ぶことは難しいだろう。
また、物流の仕組みにおけるドローン活用にも大きな課題がある。従来の宅配は人が行うため、受け取りの際にその人物宛の荷物であることが確認できた。しかし、ドローンを利用すると荷物の誤配送が起きた場合大きな問題となる。特に都市部では住宅が密集しているためかなりの精度で宅配場所を指定する必要が出てくるだろう。誤配送が起きた場合にどのように救済するのか、またその費用面での工夫が必要となってくる。
個人情報保護に関する問題
次に多くの人が懸念する問題として個人情報漏洩が挙げられる。ドローンといえば、テレビの撮影でも使われているように高性能のカメラを搭載できることで知られている。そのため、街中をドローンが飛行するとなるとドローンが個人を撮影しているのではないかという疑念が生じる。さらに宅配のために高層を飛ぶとなると、マンションに住む人のプライバシーにも関わってくる。カメラを搭載することのできないドローンの開発、またそれが外部から容易に見分けられるようにならなければ、ドローン使用に対して多くの人の賛成を得ることはできないだろう。
収益性の問題
最後に、収益性の問題に触れたい。そもそもドローン利用のメリットは、人件費を浮かせられることであるが、都市部での利用ではそのメリットを活かしきれるだろうか。
ドローンが一度に運べる荷物の量には制限がある。ドローンが空を飛ぶという性質上、トラックに比べるとどうしても少量になる。一方、人口密集地における宅配では一度の運搬で可能な限り多くの荷物を配達することが望ましい。そのことを考えると都市部でドローンを活用することは一概に効率的であるとは言えないだろう。むしろ複数回の往復が必要になり、費用と時間がかさむことも考えられる。このように、ドローンの都市部利用は収益性の点でも乗り越えるべき壁がある。
終わりに
今回は、都市部でのドローン利用の可能性について安全性、個人情報の保護、収益性の観点からその問題点を考えてきた。現時点では、ドローンは物流のためのツールではなく、エンターテイメントのためのツールという側面が大きい。ここからドローンの用範囲が広がっていくのか、大きな関心を寄せたい。
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