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やさしいリアリスト | 片石 貴展
「自分のやりたいことを、大切に取っておく、っていう感じだな」
叶わない夢は、どこかに消えてしまうものだと思っていた。
やりたい。けど、お金も運も、実力もない。
全然かっこよくない。このままじゃ、勝てない。
そうやってポツンとしているうちに、自分の好きなことも憧れも、どんどん遠ざかってしまう。そしていつの間にかつまらない仕事をして、つまらない人生を送っているような気がしてしまう。
それが現実だ、そう思っていた。
けれど、ふらっと訪れたとある部屋から聞こえてきた話によると、どうやらそうでもないらしい。
むしろ現実をしっかりと見定めて、今この瞬間に取れる選択肢をひとつひとつ積み上げた先に、心からやりたいと思えることが待っていることもある。好きなこと、やりたいことは、今すぐには叶わないかもしれない。
100%の形で現実にすることは、難しいかもしれない。
それでも、好きだ。
服が好きだ。音楽が好きだ。写真が好きだ。デザインが好きだ。私には、僕には、好きなことがある。他の誰になんと言われようと、心のどこかからやってきた、この気持ちに蓋をしない。
「好きなことを、好きと言う」
そうやって自分の口で言葉にすることで、「好き」はどこかに刻まれて道標となり、いつかの未来に必ず繋がっていく。
ふわふわと理想を夢見るわけじゃない。叶えたいからこそ、厳しく現実を見つめる。しかし、そうやってシビアでいながらも、現実にすべて飲み込まれてしまわないように、小さな火を絶やさないように「自分のやりたいことを、大切に取っておく」
遠回りでも小さな勝ちを積み上げていくやさしいリアリスト、
株式会社yutoriを立ち上げた 片石 貴展 。
yutoriと、彼の原点、自身がやりたいと思っていた服作りにたどり着くまでの、軌跡。ダサいも好きも、全部未来にちゃんと繋がっている。
この日『Flat Share Magazine』では、そんなことが語られていた。
片石 貴展(かたいし たかのり)
1993年、神奈川県出身。明治大学商学部卒業。株式会社アカツキにて新規事業部の立ち上げに従事。2017年12月に個人的にインスタグラムアカウント『古着女子』を立ち上げ、2018年4月に初期投資0円の”インスタ起業”としてyutoriを創業。『9090』をはじめ複数のD2Cブランドや、バーチャルインフルエンサー事務所『VIM』などを手掛ける。2020年7月、51%の株式譲渡によりZOZOグループへジョイン。Forbes 30 UNDER 30 JAPAN 2020受賞。尊敬するアーティストは Suchmos と The Flipper's Guitar 。
片石 貴展さん、ようこそ。
── 僕は、片石とは社会人同期で、友達で。yutoriの立ち上げの時からことあるごとに一緒にやっているという仲です。
片石はスタートアップの経営者、ブランド作ってる人、服を作ってる人、色々な顔を持ってると思うんだけど、自分自身はどう思ってる?
片石:普通に古着売ってる人みたいに思われてるかも...今は売ってないんだけど。
── そう、意外と伝わってないと思うから、今日はそんな話がしたくて。片石の服作りの原点がどこにあるのかって部分も合わせて深ぼっていけたらと!
普通に進学、普通に新卒就職
レールに乗りながら考えていたこと
── 最初に作ったブランドは『9090(ナインティナインティ)』なのかな?
あとは『古着女子』がメディアとしてあって。その時はどういう始まりだったの?もともと服を作りたいって思ってた?
片石:服に関わる仕事をするだろうなっていうのは、高校の時からもう決めてて。服か音楽かは迷ってたけど。
── どっちの道か?っていうのは迷ってたんだ。
片石:そう、オモテかウラかとかね。音楽だったらさ、自分がステージに立つのか、それとも裏でプロデュースするのか、とか。
── 高校の時から思ってたんだ。
片石:親が起業家だから、なんとなく自分で何かを生み出すっていうのは、自分の中では当たり前にあって、それ以外はないかなって思ってた。
── でも、大学はファッションの専門とか、音大とか美大とか、そういうのではなく普通に進学して、いったん音楽の道にいったんだよね?
片石:そうそう。
── そこで、ある種アイドルになって、ステージに立って。その時は、音楽でいこうって感じ、あったよね?最初に片石と会った時、音楽の道をまだ捨ててなかった感じがあった。グループのメンバーとシェアハウスしてたしね。
片石:社会人になってからやってた音楽グループが、「一軒家で一緒に住もう」みたいなコンセプトで。一軒家って初期費用が高いじゃん?普通に100万くらいかかるから、それをクラウドファンディングで集めようみたいな。
── でも就職はしたわけでしょ?
片石:してたしてた!
── 普通に進学して、普通に就職するっていうところには抵抗なかったんだ?
片石:そう、だからレールからは外れてないんだよね。浪人もしてないし。普通にストレートで大学行って、ストレートで新卒で就職して。
── そうなんだよね。起業がゴールだから就活しない、とかじゃなくて、普通に進学して、普通に就職して...そのかたわら、ある程度の音楽活動で実績があって。けどレールは外れてないわけだ。
片石:自分でその音楽のグループのプロデュースもやって、5,600人集めるところまではいったけど、自信が持ちきれなかったんだよね。そのグループでやりきるっていうのもそうだし、音楽っていうジャンルで自分がどれだけ価値を出せるかっていうのもそうだし、メンバーに対する部分もそうだし、自分自身の能力もそうだし...。
裏方というか、プロデュースとか、ものごとの進め方とか、規模を大きくしていくやり方とかも、結局自分に自信がもてなくて。
当時は今みたいにYoutuberみたいな話もそんなになくて。普通に就職するのが当たり前だったから。自分が受けた企業の中で、一番伸びそうな会社がアカツキ(編集部注:モバイルゲーム事業を主軸とするIT企業)だった。代表の塩田さんの「今後の未来はこうなるよね」っていう世界の解釈と、そこに対するアプローチの仕方が自分と近いなって思ったから。自分の、はるか上位互換の人が実際どうやって事業を作っていくのかをリアルタイムでみれるっていうのは経営者としてはすごいインプットが大きいから、そういう意味も込めて就職したんだよね。“社会人はいったん修行”みたいな?
── 現実的にちゃんと考えてるんだね。
片石:そう、リアリストだから(笑)
── そうだよね、意外とちゃんと冷静にみてる。
片石:うん、めっちゃリアリストだと思うわ。仕事はね。恋愛はロマンチストだと思う(笑)
落ちこぼれの高校時代
── 普通はさ、やっぱり高校時代に音楽とかファッションやりたいって思ったらそういう大学行きたいってなると思うけど...
片石:親に怒られたもん!大学行けって。
── そうなんだ!え、親に言ったの?高校の時に?
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