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火星にだって行ける【パワポケR】

10年間、この時を待ち続けていた。時間はいろいろなことを解決する。10年という時間が、自分にとって意味のある単位になってきている。そんなことを感じる年齢になった。

パワプロクンポケットの新作が出る。ニンテンドーダイレクトでの発表から5日、未だ実感が湧かない。


シリーズが終了した2011年12月、僕は中学2年生だった。当時の僕はまだ状況がよく飲み込めていなかったものの、震災後の世の中は目まぐるしく変化していたように思う。前年に日本シリーズを制した千葉ロッテマリーンズは、3時間半ルールの下開催されたレギュラーシーズンで最下位に沈んだ。福島から僕の中学校に引っ越してきて野球部に加わった小島(下の名前は忘れてしまった)は、僕ら部員の髪が長いことにひどく驚いていた。彼の加入は僕のレギュラーとしての地位を非常に危うくしたが、その東京滞在は僕らが思っていたよりずっと短いものだった。もう少し仲良くなっておけばよかった。

今年も12月になればいつもの通りパワポケの新作で遊ぶ。そのことに変わりはないし、次の年もその次の年も同じだとばかり思っていた。始まりがあれば終わりがあるというのがどういうことなのか、僕にはよくわかっていなかったのだ。

最終回の主人公は小学生だった。従来の「高校編→プロ編→社会人編」のサイクルを崩したこの変更は、ちゃんと意味のある変更だったと思う。残酷な世界の中で、懸命に自分の人生を生きてきたキャラクターたち。彼ら彼女らが14主をはじめとする子供たちに未来を託すその姿は、その後の僕の人生に強い影響を及ぼした。
どうやら、計り知れない絶望の先には希望が残るものらしい。


あれから10年。この冬発売する「R」のサクセスは完全新作ではなく、初代と2のシナリオのリメイクとなる。仮にも一度畳んだ風呂敷だ。今後も、「魔球リーグ編」以降の彼らの物語が描かれることはないのかもしれない。
それでも…今はこの瞬間を喜ばしく思う。2021年になっても、僕たちはパワポケのことが忘れられなかった。僕らの思いは間違っていなかったのだ。
もう一度、あの混沌とした野球バラエティの世界で好き放題遊ぼう。ああ、今になってやっと、僕の中でパワポケの物語がきちんと完結してくれたような気がする。

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