【モーショングラフィックス】 ~驚きを与える「地と図」の反転~
レベルの高いモーショングラフィック作品には、必ずと言って良いほど「驚き」があるように思えます。
モーショングラフィックスを制作されている方々も、その驚きに魅了されて始めた方も多いのではないでしょうか。
では、この「驚き」はモーショングラフィックスにおいて、どのように作り出されるのでしょうか。
今回は、驚きを生みだす方法の1つ「地と図の反転」について、ご紹介させて頂こうと思います。
地と図とは?
ほとんどのグラフィックは、基本的に「背景」と「オブジェクト」の組み合わせによって、画面が構成されています。
地とは「デザインの背景や基盤となる部分」であり、図は「テキストやアイコン、キャラクターなど、デザインの中心となる要素」を指します。
「図」を配置することで「地」ができ、「地」を作るためには「図」が必要になる、という共存関係にあります。
ルビンの壺
下の絵は、見た事がある方も多いのではないでしょうか。
ルビンの壺(Rubin's vase)とは、1915年頃にデンマークの心理学者エドガー・ルビンによって考案された多義図形です。
※多義図形とは、人間の視覚系によって2通り以上に解釈される図形のこと。
一見、壺が書かれているように見えますが、よくみると2つの顔が描かれていることに気が付きます。(その逆パターンもあります。)
これは、「図」かと思えば「地」のように見え、「地」かと思えば「図」のように見えてくる、というグラフィック特有の面白さだといえます。
"モーション"が加わるともっと面白い!
モーショングラフィックスは静止画とは、違い時間軸の「変化」を見せることができます。先ほどのルビンの壺のように、じっくり見て発見するような驚きとは違い、"変化"することによっていい意味で「騙された...!」というような驚きを与えることができます。
パズルをモチーフに、一つ例を作ってみました。
パズルが1ピース配置されていたかと思えば、逆に背景がパズルでできており、一気に崩れ落ちる…とういうアニメーションです。
地と図を反転させることで、視聴者をちょっぴり騙しています。
この例のように、視聴者が信じていたものが「いい意味で裏切られた」と感じさせることで、まるでマジシャンのように驚きを与えることできます。
これは、静止画にはできないモーショングラフィックス特有の面白さではないでしょうか。
下の例は、同じテクニックを使ったモーショングラフィックスの例です。
最初にライン(図)が伸びて画面を埋め尽くし、
その後に色違いのライン図が現れ…
そのラインも背景になり…
という具合に、視聴者が気づかないうちに、地と図が反転しながら次の画面が切り替わっていきます。
レベルの高いモーショングラフィックス作品では、このような動きが何層にも重なって仕上げられていて、いつの間にか作品の世界に没入させられていた…ということも多々あるのではないでしょうか。
このように、モーショングラフィックスは次々とトランプを消していくマジシャンのように、視聴者に「驚き」を与えられる表現方法なのだと思います。
制作者として「次はどんなふうに驚かせようか…」と考えているときは、本当にワクワクしますよね!
最後に
今回は「地と図の反転」によって、視聴者に与える効果について、ご紹介させていただきました。
テクニックは目的ではありません。
ただ闇雲に動かすだけではなく、動きの意味や印象を考えながら、適切に使い分けることができたら、視聴者にとって本当にいい映像ができるのかもしれませんね。
皆さんの制作のヒントになれれば、嬉しいです!
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