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万年筆

人物
鈴木マキ(60)
鈴木サトシ(35)
鈴木ハジメ(6)

○鈴木マキの父の家、外
田舎の築50年以上の古い家。庭で遊ぶ鈴木ハジメ(6)。

○同・居間
室内にはゴミがゴミ袋に入って数個置いてある。鈴木サトシ(35)は棚の書類やペン、メモ帳などをテーブルに出している。隣の仏間では鈴木マキ(60)がタンスの服をゴミ袋に入れている。
サトシ「遺品整理って大変だな。棚の中身、全部出したから、捨てるかどうか見てくれる?」
マキ「そっち行くわね」
居間へ移動し、テーブルの上に広がった小物を仕分けし始めるマキ。庭にいるハジメが縁側から居間へ入ってくる
ハジメ「おばあちゃん、お腹すいたー。わー、だいぶ広がってるね」
マキ「これの仕分けが終わったら近くのラーメン屋さんにでも行こうか」
ハジメ「わーい。あそこのチャーハン大好き」
サトシ「腹減った。早く行くためにもハジメも手伝え」
ハジメはマキの隣に座り、机の小物を物色し始める。
ハジメ「ひいおじいちゃん、ここに一人で暮らしてたんだよね」
マキ「そうだよ」
サトシ「よく90近くまでこんな車がないと生活できないところに一人で住んでたよな」
マキ「慣れ親しんだ土地だからね、こっちに来ないかって何度も相談したけど、結局最後までここで幸せだったと思うよ」
ハジメが万年筆を試し書きする。
ハジメ「おばあちゃん、これ書けないよ」
マキ「ああ、万年筆ね。インクを足せばかけるわよ」
ハジメ「かっこいいペンだね」
マキ「確かカートリッジだったはず」
マキは万年筆の胴部分を外す。
マキ「あ、思い出した。これ、ひいおじいちゃんが私に就職祝いでくれた物だわ」
ペンの中から紙切れが出てくる。
マキ「あら?」
紙切れを広げるマキ。そのメッセージを見て目頭が熱くなるマキ。
ハジメ「何なに?」
マキ「ひいおじいちゃんからの手紙」
ハジメ「へー、何て」
マキ「ふふふ、亡くなってから気づくなんてね。たくさん使って生きてる間にこの手紙に気づけたらよかったわ」
万年筆を握りしめ目を閉じるマキ。
マキ「宝物が増えちゃった」
ハジメ「ねー、僕も大人になったら万年筆欲しいなあ」
マキ「いいわよ、プレゼントするわね」
ハジメ「わーい」
サトシ「あー、もう限界。ご飯食べに行かない?」
マキ「そうね、まだまだかかるものね」
三人は戸締りをし、家を出る。机には万年筆と紙切れが残っている。紙切れには『いつもそばで応援してるぞ!』という文字。

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