🧠【お寺で起きた珍事件】占いババアvs俺


20代後半ワイは某宗教法人施設、なんて言ってぼかすと変な憶測をされそうなので正直に言うが都内にあるお寺さんでアルバイトをしていた。

普通に檀家さんがいて普通にお墓を併設し、葬式や法事を行う至極一般的なお寺さんである。
バイトを見つけたのも駅やコンビニなどによく置いてあるバイト情報誌だった。

“面白そうだな“という軽い興味本位で応募してみた所、たまたま運良く受かったというわけだ。
後に住職に聞いて知ったが50人以上希望者が殺到する高倍率の中、見事面接をパスし入職したスタッフがワイを含め5人というのだから相当にツイていたと言える。

そのメンバーのほとんどは20代半ばから後半の同世代だったが1人だけ60オーバーのおばちゃんがいた。

住職曰く「若いスタッフばかりだと寺との関わりなど分からないことが多いだろうからまとめ役になってもらいたくて年配の方をいれた」との事だったが、この年配の方が1番癖が強く且つ1番手に負えないモンスターとなってしまった。

事の発端は彼女と同シフトだった時に起こった。おばちゃんという生き物は支配欲の塊である。仕事内容は主に清掃だったのだが、おばちゃん考案の要領の悪いマイルールをみっちり教えられ、更には本人はお目付け役に徹し実働部隊はワイ1人というアンフェアな仕事配分だったのだからやってられない。

当時はワイも血気盛んな20代、年上だろうと楽してんじゃねえよ!という正論を振りかざしおばちゃんの命令を一切聞かなかった。
その一件があってからどうやらおばちゃんの中でワイは敵と見なされたようだった。

というのも、住職や他のメンバーにワイの悪口を言いふらしていたと彼らから直接聞いたのだから間違いない。悪口が本人の耳に入る、この時点でおばちゃんへの信頼は地の底まで落ち切っている。

悪口と言っても普段は1人シフトなのでワイの働きっぷりを知っている訳では無い。それじゃあ一体どんな悪口を彼女が言っていたのか?気になって聞いてみた所予想だにしなかったとんでもない話を知ることとなる。

そのとんでも話とはおばちゃんが最近ハマっている占いで勝手に占った所、なにやらワイがいるとこの寺は潰れるから解雇した方が良いという内容で、しかもこの占い結果を元に住職に直談判までしに行ったのだというから信じる者というのは誠に狂気じみている。

無論、住職は苦笑いでその場を丸く収め、後日面白おかしくその話をワイにしてくれたというわけだ。

ちなみに余談だがこのおばちゃん、件の占いの先生に誘われて身寄りのないお年寄りの世話をするというボランティアをしていたのだが、ある時桐箪笥に金歯が入っていて“なんの報酬もないのに身の回りの世話をしているのだからこれくらい良いわよね”と家人に了承も得ず勝手にその金歯を盗み質屋に持って行ったという。


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歳を重ねるごとにイジメも人を嫌うことも無くなり穏やかに過ごせるものだと漫然とそう思っていた。しかしどうやらそうは問屋が卸さないらしい。穏やかに過ごすのにも才能と努力が必要なのであると、このおばちゃんと出会ってワイはそう確信した。


めでたしめでたし

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