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論文を読む 〜 将棋の勉強3

前回に引き続き、基礎鍛錬と基礎リサーチ。

可処分時間リソースと年齢が制約条件である以上、まっとうにやったら、先輩方には絶対においつけない。

あらゆる手段を駆使して、note代表の加藤さんが、アマ三〜四段っぽいので、来年中には無理やりに追いつきたい。「こだわりを捨てて巨人の肩に乗りまくる」を、実践していく方向。

とりあえず、将棋およびチェスの先行研究について、認知まわりを中心にザザっと読む。とりいそぎ、CiNiiで「将棋」で検索した1450ドキュメントのタイトルを全チェックし、認知系にかかわるものを集める。


将棋の認知科学的研究(1)-記憶実験からの考察

チェスの上級者が状況認識するときに用いる、「チャンク」という概念が、将棋にも応用できるかの追実験。トップ棋士と初心者の認知モデルの違いがどのようなものかを比較している。

興味深かったポイントのメモ
・「金&底歩」のようなコマの組合せを「チャンク」と呼ぶ。
・知ってる「チャンク」のレパートリーの多さが、強さに結びついてる
・アイトラッキングでは、初心者は盤面を個々のコマをみるが、上級者は個々のコマに視線を送らない
・初心者は個々のコマで、中級者は複数のチャンク群で、上級者は全体で把握する
・「見たことのあるパーツ」の組合せで記憶を補助してる。
・まったく見たことのないランダムな盤面はプロも記憶しづらい。


将棋の認知科学的研究(2 )-次の一手実験からの考察

上記「チャンク」コンセプトの拡張論文。空間グルーピングの「チャンク」が時間方向にも存在するのではないか、という仮説の提唱。発話法と愛トラッキングのテストを通じて、初心者と上級者の盤面認識などの違いを試している。

論文そのものは、「時間チャンク」を明快に特定・定義できず、ちょっと結論がフニャっとしてる。論文内のデータや実験は、そこそこ面白い。

興味深かったポイントのメモ
・初心者は思考時間の大半を「局面認識」に費やす
・中級者は打ち手のパターン検討の時間が増える
・初心者は個々の手筋、直近手の対応に思考時間を費やす
・中級者は全体感や雰囲気への発言が増える
・上級者は全体幹だけでなく、前後の局面の展開の発言が増える
・初心者は駒単体、棋力が上がるほどグループや塊で認識する
・棋力があがるほど個々の駒を見ずに、局面認識ができる


空間的チャンクから因果的チャンクへ

前述2つの論文を合算したまとめのような論文。新しい知見は追記されてないが、理解の確認に読了。「チャンク」に関する、チェスの研究がそのまま将棋に横展開できる可能性が強く示唆されている。英語のチェス論文を読むべきか。


将棋熟達者の発話にみる思考と認知

発話法からの、熟練者の思考パターン解析。被験者が羽生さん!の研究データなので記帳。インタビューサンプルが羽生さんとアマチュアの、N=2しかないので、あくまで読み物として、インサイトを得たい感じ。

興味深いのは、羽生さんも符号で検討しており、アマチュアB(被験者2人のアマチュアのうち強いほう)も、符号で検討をしていた。

興味深かったポイントのメモ
(意訳などしてるので、個人の発言としては原文を追ってください」

・プロ:「存在する大半の手はマイナス。やらない方がよいぐらい」
・プロ:「マイナスを棄却し、数少ないプラス手を探索する」
・プロ:「これやったら、こう対応される…みたいな対応が決まってる手は、いつでもできるから他の手からやったり検討」
・プロ:「先読み中は盤面で考えてない。符号で進む。最終の形勢判断で盤面が浮かぶ
・プロ:「駒得などボトムアップではなく、流れや方針や欲しい図で考える」
・プロ:「発見がモチベーションになる。他者がいて発想に幅がでる」
・プロ:「新手とかをしっかり理解するには、試して負けたりする経験が必要」
・プロ:「パソコンで調べても、確認はリアルな盤でやるほうがやりやすい」


将棋プレーヤーの棋力の違いによる読みの広さと深さ

習熟度における読みの違いについて。異なった棋力の複数プレイヤーを相手にした、発話プロトコルによる、思考方法の違い抽したもの。全体的には統計ファクトというには、ちょっとフワっとしてるので、あくまでインサイトとして読む。

印象的なのは、最も広く読んでいるのは中級者。プロは限定的な数手を深く読んでいること。プロは本格的に読む前に、おおまかな手のスコアリング、足切りを行っている。アマチュアは個々の先読みをしてから、局面を評価する。

興味深かったポイントのメモ
・棋力の高さと読みの深さは連動する
・中級者が一番広く読む
・プロ者は狭く深く読む。
・左上から右に先読みを行っていく
・初心者は狭く浅く分析する
・中級者は広くある程度は深く読んで、評価を順番にくだす
・プロは限定的な手だけを深く検討する(局面評価能力が高い)


将棋における人間の認知過程

太局感とはなにか? どうすれば獲得できるのかについての論文。発話法 & アイトラッキングで、複数棋士を調査。

将棋における思考プロセスモデル「対局者スクリプト」というものが言及されてる。

興味深かったポイントのメモ
・初心者以降の棋士は、「対局者スクリプト」ベースで考える
・初心者は目の前の打ち手そのものの言及が多い
・上達するほど大局観への言及が増える
・読みの深さはそこまでかわらず、棋力で精度や大局観が上がる
・Chaseという人のチェス論文が役立ちそう


将棋トッププロ棋士の認知過程の比較

同じく、認知モデル「対局者スクリプト」についての言及。ないようは同著者の別論文と重複。


ざっと読んだけど、インターネットで読める論文リソースが少ない。将棋のせいというより、日本の論文が少ない。

頑張って海外のチェス論文を読む。英語だと読むのに時間かかる…


Twitterで「チャンク」というコンセプトを教わったついでに、ガガっと論文を読んでみた。「チャンク」のコンセプトは、自分がためそうとしてOOP / アトミックデザイン的なトレーニングと近い概念だったので、別途調べることにする。


いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。