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自分のことを、待つ。

「私の知らない甘やかな思いを彼女たちが味わっている。まるで、上等のアイスクリームを絞り出したように心が良い匂いを立てて、食べてくれた言わんばかりに溶けている。」


サエキくんに好きな人ができた。それもうんと年上の女。素顔に赤い口紅だけを引く女。
別れた相手を憎んでののしったりすることは、「そんな男」と付き合っていた自分をも醜くしてしまう。
付き合っていた時のサエキくんにはもう気持ちの整理をつけたけれど、その人と付き合ってからのサエキくんは、前よりずっと素敵に見える。
それはお互いがお互いを子供に戻すような、大人の恋愛。
カズミは赤い口紅が似合うようになるまで自分のことを、待つ。


放課後の音符 Red Zone /山田詠美


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