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夜の中では何もかもが可能になるように思えた

「もしも今、私たちのやっていることを本物の恋だと誰かが保証してくれたら、私は安堵のあまりその人の足元にひざまずくだろう。そしてもしもそうでなければ、これが過ぎていってしまうことならば私はずっと今のまま眠りたいので、彼のベルをわからなくしてほしい。私を今すぐひとりにしてほしい。」



白河夜船……何もわからないほどぐっすりと眠ること

寺子はどんどん深くなる眠り、埋められない淋しさ、ぬけ出せない息苦しさから、夜に支配されていく。

亡くなった親友のしおりは、添い寝屋をやっていた。
相手の淋しさを吸い取ってしまうといっていた。

寺子には植物状態の妻を持つ男がいて、男からの20万の生活費で暮らしていた。
優しすぎることは、冷たすぎることとなんら意味は変わらないのに。
男にとって寺子は、決まった約束以外では無の存在でいてほしかったのかしらと思う。
夢と現実の間で生きているような寺子。

ある日、公園で眠っているときに、若い女性から「アルバイトをしなさい、私のせいであなたが疲れているような気がして」と言われる。
夢と現実の間で寺子は、植物状態にある妻と会話をしたのだろう。

男と寺子は、花火大会へ出かける。
自分を支配していた夜を抜け出し、新たな一歩を踏み出そうとする寺子。




(白河夜船/吉本ばなな)



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