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~Pirlo新監督のシステムは?~ 2020.09.13 Juventus vs Novara

初めて戦術レビューを書いてみる。

Sarriを解任して大抜擢となったPirlo新監督。これまで監督経験ゼロの彼がどんなサッカーをするのか多くの人が注目していると思う。
まだ補強(特に9番)は終わっていないが、この試合から得られる情報を分析してみた。

分析は攻撃、ネガティブトランジション、守備、ポジティブトランジションの4フェーズに分けて行う。
これまで通りRonaldoは常時起用されると思われるので、彼が出場していた前半をメインに分析する。
分析は『モダンサッカーの教科書』で紹介されているフレームワークを利用した。

【攻撃】

■ビルドアップ

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Ramseyが前線、SandroがWBとなり、残った3バックとDH2人の5枚で3+2のユニットが基本。左右のCBはInterのように大きく広がらず、内側レーン程度までの幅をとっていた。DH2人はディフェンスラインに落ちずほとんど中盤でボールを受けていた。
時折前線の3人(主にRonaldo)がボールを触りに下りてきた。
ハイプレスを受けた際には、GKも使いながらショートパスで組み立てるのが原則のようだ。
ただ、スペースが見えた際は迷わず縦に長いボールを出していたので、遅攻と速攻の使い分けはできていたと思う。
ゴールキックはカメラに映っていない事が多かったが、多分左右のCBに出してから中央に戻すのが原則なのだろう。
もっと厳しいハイプレスを受けるシーンを見たかったのだが、Novaraが引いている時間が長く、ハイプレスを受けても簡単に繋げてしまったので、シーズン開幕後に改めて確認したい。
ただ、単純なパスミスは多かったので、まだビルドアップの完成度は高くなさそうだ。

■ポジショナルな攻撃
- 20'

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先制点のシーン。
前線と両WBが5レーンを満遍なく埋めている。Sarriの時には中央に密集してしまい個人能力で打開するしかなかったが、このシーンを含め5レーンを広く使って攻撃していた。
このシーンでは前のKulusevskiに出したが、前線3人は縦パスを受けるとシンプルにワンタッチで落としさらに展開するプレーが多かった。今までのRonaldoのようにボールを受けたら無理にドリブルでつっかけてロストするシーンはほぼなかった。
なお前線3人の内、RonaldoとRamseyはシャドー的、Kulusevskiは9番的な役割をしていた。

- 41'

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明らかにSarriと変わったのはサイドの使い方。昨季はアーリークロス一辺倒だったのに対し、この試合では両WBが高い位置を取り、深い位置からのクロスやえぐってグラウンダーのクロス、マイナスのクロスも打てるようになり、得点の匂いを感じさせた。

その他Sarriと変わったのはレーン跨ぎのパスが増えた点。昨季は隣のレーンへのパスばかりでサイドチェンジに時間がかかっていたが、この試合ではレーンを1つ2つ飛ばすパスが多かった。
パスレンジが広がった事で、昨季なかなか崩せなかった5バックの相手に対する勝率が上がるかもしれない。

【ネガティブトランジション】

- 17'

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一番の問題点はここだろう。ボールを奪われた後のプレッシャーが弱かったり、プレッシングをはずされた後の戻りが遅かったりして、前進を許すシーンが散見された。Novara相手だから失点せずに済んだものの、トップリーグのカウンターを得意とするチームであれば1、2点は取られていただろう。

- 23'

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また、Novaraは引いて守ってカウンター狙いだったため、ハイラインの裏に出されて追いかけっこになるシーンが目立った。これはBonucciとChielliniにとって相性が悪いだろう。

Dybalaがいれば前線のファーストディフェンスは安定すると思うが、特にRamseyとRabiotの被カウンター対応が甘く感じたので、押し込んでいる状態でも相手ボールになったら即座に刈り取る、もしくはパスコースを消し攻撃を遅らせられるよう、切り替えを早くしたい。

【守備】

■プレッシング
- 10'

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相手のビルドアップに対しては、DFラインへのプレッシングの頻度は高くなく、アンカーの周辺にKulusevski、Ronaldoがいるシーンが多かった。
Ronaldoの貢献度は相変わらず低く、インテンシティが高いとは言えない。

- 02'

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ハイプレスを仕掛けるシーンもあったが、上図のように試合開始早々はずされて速攻でゴール前まで持っていかれており、完成度は高くない。

- 05'

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しかし、相手ゴールキック時には高い位置からボールを奪いに行っていた。
本来Pirloはハイプレスをかけたいのだろう。

■組織的守備

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自陣での組織的守備はオーソドックスな4+4の2ライン。Kulusevskiは相手アンカーにプレッシャーをかけていた。Ronaldoは前に残る。
正直Juveが圧倒的に攻めていて自陣で守る展開が少なかったため評価しづらいが、サイドの1vs1などでプレッシャーが弱いと感じた。

【ポジティブトランジション】

低い位置でボールを奪ったらまずはポゼッションの回復を優先し、その間にシステムを4-4-2から3-4-3に可変させていた。
シーズンが始まってからは、激しいカウンタープレッシングを受けてもポゼッションを回復できるか確認したい。

- 36'

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一方、高い位置でボールを奪えた際には、素早く縦に展開してカウンターを狙っていた。この事から、Pirloが状況に応じてポゼッションとカウンターを使い分ける志向の持ち主だと推察できる。

【途中交代】

選手が変わっても試合を通してシステムは変わらなかった。
攻撃時に時折CostaとPortanovaがポジションチェンジしていたくらい。
Ronaldoが抜けてハイプレスの頻度が目に見えて上がった。

Cuadradoを一列下げて可変システムの構造を左右逆にもできるはずだが、試す事はなかった。新9番、Ronaldo、Dybalaを同時起用するなら、守備の負担が増えてもDybalaを右SHとするしかない気がするのだが。。。
ただ、獲得の噂のあるSuárezやDžekoは守備が得意とは言えず、ネガトラとプレッシングがさらに問題化しそう。

- 46'

[out]
Szczęsny, Bonucci, Chiellini, Rabiot, McKennie, Kulusevski, Ronaldo
[in]
Buffon, Demiral, Pellegrini, Bentancur, Arthur, Costa, Pjaca

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- 63'

[out]
Danilo, Sandro, Cuadrado, Ramsey
[in]
Rugani, De Sciglio, Portanova, Nicolussi Caviglia

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【総括】

この試合(前半メイン)のPirloの戦術は以下のようにまとめられると思う。

・4-4-2 ⇔ 3-4-3 の可変システム
【攻撃】
 ■ビルドアップ

 ・3+2のユニットでショートパス主体
 ■攻撃
 ・ピッチを幅広く使った5レーン攻撃
 ・縦パスを受けた前線3人はワンタッチで落としてさらに展開
【ネガティブトランジション】
 ・インテンシティが低く、カウンターを受ける事がしばしば
【守備】
 ■プレッシング

 ・本来はハイプレスを行いたいが、Ronaldoがいると機能せず構えて
  守る事が多い
 ■組織的守備
 ・4+4の2ラインで守り、Kulusevskiがアンカーを見る
【ポジティブトランジション】
 ・ボールを奪った位置が低ければポゼッション回復、
  高ければカウンターを狙う

こうみると今時の若手監督らしいと感じるが、レベルの高い相手に通用するかは未知数である。まずはネガトラ、プレッシングを改善しないとセリエA10連覇やビッグイヤー獲得は難しいと思う。
ともあれ、まずは週末の開幕戦を楽しみにしておこう。

しかし初めてレビューを書くので図に適当な場面を探すのに手間取り、3日もかかってしまった。。。
次回からはメモを取りながら観戦するなど、工夫が必要だな。

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